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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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194話 姉妹との旅路

 俺とヒナとユナの三人旅が始まったが、このメンバー構成の旅は初めてだ。


 三人とも冒険者なのだから、せっかくなら同じ冒険者パーティーにしておいた方が旅をする上で何かと都合がいい。

 そこで俺達は、とりあえず冒険者ギルドに寄ってユナのパーティー登録を行なう事にした。




「本当にあたしがパーティーに入ってもいいの?」


「ああ、ユナは基本的にソロ活動で特定の仲間とパーティーは組んで無かったよな?」


「ええ、そうだけど」


「だったら、俺達のパーティーに入れた方が手続きが簡単だかなら」


 パーティーの兼任は可能だから、ユナをリーダーとして新規にもう一つ別のパーティーを結成する事も可能だったが、ユナが良ければ俺達のパーティーに入ってもらった方が手続きが早い。


「ヒナもゲン君のパーティーに入ってるんだよね?」


「うん!わたしはもう『黒曜石の剣』のメンバーだよ!」


「『下級剣士』で『下級冒険者』になったんだってね?まさかヒナがそっちの道に進むなんて思ってもいなかったから本当に意外だったよ」


「ヒナは結構筋が良いぞ。そのうちユナを追い越すんじゃねえか?」


「さすがにそこまでじゃないよ。でも一度お姉ちゃんと模擬戦はやってみたいな!」


「ええ、あたしもヒナの実力を知っておきたいわね」


「時間があれば、ギルドの練習場で模擬戦をやっても良かったんだが、今は一刻も早くシアの元へ行きたい。すまないが模擬戦はまたの機会にしてくれ」


「ええ、もちろんそのつもりよ。ヒナ、模擬戦はまた今度、時間が出来た時にね」


「はい!楽しみにしてます!」




 ユナのパーティー登録は簡単な手続きであっさり終わったので、俺達はすぐに王都を出発した。



 移動は徒歩だ。


 俺一人なら全速力で走り続ければ、目的の氷雪の国までは一週間程度で到着するはずだ。


 ヒナは素の体力では一日中走り続ける事は出来ないが、附加装備のサポートがあれば連続で走り続ける事も可能だ。

 附加装備の魔力の補充は無駄に余ってる俺の魔力を使えば済む。


 それでも俺の最速について来るのは無理がある。


 ユナのペースも同じくらいだろうから、到着までには2~3週間程度かかる見込みだ。


 一刻も早くシアを助けたいのはやまやまだが、俺一人が先に着いても何もできない。

 今回はヒナの存在が鍵となるのだ。



 氷雪の国へのルートは前回と同じルートを使う予定だ。

 ルートの選択肢はいくつかあるが、他のルートは極端に遠回りになるだけだった。


 いずれにしても隣国から先の、氷雪の国に入るルートは一本に絞られる。

 結局、隣国に入る国境のうち、最も北寄りの国境を通るルートが最短となるのだ。




 しかし、俺がその道を進もうとしたら、ユナがそれを制した。


「北側の国境はその先の街道が通行止めなの、別の道を使わないと先に進めないわ」


「どういう事だ?」


「北側の国境の先の隣国の街道が魔物に襲われていたの。そのせいで道が破壊されて通行止めになっていたわ。復旧には数カ月はかかるって話だったから、南側の国境を通るルートからでないと、隣国に入っても北側の国に抜けられないのよ」


「そうなのか、それじゃ仕方ねえな。遠回りになるが南側の国境を通るしかねえか?」


「ええ、それしかないわ」




 この国の王都は国土の中心にあり、周辺の町へ放射状に街道が伸びている。

 北西側にある隣国に行くための国境は二つあり、南側の国境に行くには、北側の国境に向かう街道の一つ隣の街道を使う事になる。


 俺達は街道の分岐点で、南側の国境に繋がる街道を選んだ。


 前回とは異なるルートだが、この国は街道や宿場町の整備が行き届いている。

 どこの宿場町に行っても、大体同じ様な宿屋が存在するので、それほど困る事はない。




 一日走り続けて、日が暮れる頃に丁度宿場町に着いたので、今夜はここに泊る事にした。



「部屋はたくさん空いているが、ユナとヒナは同じ部屋でいいよな?」


「はい!それでいいです・・・ほんとはゲンさまも一緒の部屋がいいですけど・・・」




 俺とユナが一緒の部屋ってのはさすがにねえだろ。


 ・・・いや、もちろん俺とヒナが一緒の部屋ってのもだめなんだが・・・



 翌朝、宿を出発しようとしたら、宿屋の主人に声をかけられた。



「あんたら、この街道を進んで北西の国にでも行くつもりかい?」


「ああそうだが?」


「そりゃやめた方がいい、国境を渡った先の橋が、先日の大雨で流されちまったそうだ。国境を渡ってもその先には進めないみたいだぞ」


「なんだって!このルートも通れないのか?」


「橋の修復にはひと月くらいかかるみたいだな。それまで待つか、あるいは更に南側を回るルートを通るかだな」


「南側のルートというのは?」


 ユナが宿屋の主人に尋ねた。


「この町を出た先の街道の分岐を左に進むと、もう一つ隣の別の国に入る国境に繋がるんだが、その国を経由してから、北西の国に入るルートなら通れるはずだ」


「・・・そうか、更に遠回りになるが、その道しかねえみたいだな」


 結局、俺達はもう一つ隣の国を目指す事になってしまった。




 ・・・一刻でも早くシアのところに行きたいのに、まるで何かに邪魔をされてるみてえだな。


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