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【9章開始】勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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193話 突然の旅立ち

 俺はヒナと共に翌日には旅立つ事にした。


 ユナには申し訳ないが、一晩だけゆっくり休んでもらって、翌日にはとんぼ返りしてもらう事になる。


「あたしは構わないわよ。元からそのつもりだったし、恩人であるシアさんを一日でも早く助けたいもの」


 ユナは、快く承諾してくれた。




「えー!明日出発するの?僕、別の依頼受けちゃったよ!」


 上級冒険者であるキアは、俺が行動を制限されている間、ソロで冒険者の依頼を受けていた。

 そして丁度明日から長期の依頼を受けてしまっていたみたいなのだ。


「ヒナちゃんと一緒に旅がしたかったのに、あの依頼は断れないんだよ」




 ・・・いや、従妹のシアを助けるためじゃねえのかよ?




「キアさん!上級冒険者のお仕事頑張ってください!」


「うん!ヒナちゃんのために頑張るよ!」




 ・・・何がヒナのためなのか意味がわからねえけどな。



「あら?キア君はあたしに気があるのではなかったのかしら?」


 ユナが、笑いながら会話に入っていった。


「こんな美人姉妹を前にしたらどちらも放っておけませんよ」




 キア、相変わらず軽薄だな・・・それじゃどっちでもいいと言ってる様に聞こえるぞ。




 結局今回は、俺とヒナとユナの三人で旅に出る事になった。




 師匠がいれば転移魔法陣を使う事も出来たんだが、転移魔法陣は王族と勇者しか使用を許可されていないのだ。


 個人が私用で使う事は許されない。



 ・・・師匠は結構私用で使っていたような気もするんだが・・・



 だが、そんな事を考えていてもどうにもならねえ。

 とにかく一日でも早くシアのところに行ってシアを助けなければならない。




 その日の夜は、ヒナとユナは一緒に寝る事になった。

 ヒナは久しぶりに姉に思いっきり甘えたいのだろう。

 

 


「昨日はよく眠れたか?」


 翌朝、俺は二人に声をかけた。


「えへへ!お姉ちゃんに話したい事がたくさんあり過ぎて、本当は朝まででも話したかったんですけど、お姉ちゃんがすぐに寝てしまったので、わたしも早めに眠りました」


「ヒナの話は聞きたかったのですが、さすがに疲れがたまっていたので、上質なベッドのおかげですぐに寝付いてしまいました」


「まあ、これからの旅の途中で話をする時間ならいくらでもあるだろう」




 朝食を食べたら早速出発する事になっている。




 屋敷を出たらキアが見送りに来ていた。


「依頼が解決したら僕も応援に行くからね!」


 ・・・今回戦闘の予定は無いから、応援と言ってもやる事は無いけどな。




 キアはヒナとユナに、長々と見送りの挨拶をした後に、俺のところにやって来た。


「シアの事・・・よろしく頼むぞ」


「ああ、もちろんだ・・・ちゃんとシアの事も気にかけてたんだな」


「当たり前だろ、本当の妹みたいなもんだからな。おまえじゃなきゃまかせたりしてねえよ」


 キアは目線を逸らして少し照れながらそういった。


「まかせろ、シアは必ず助け出す」


「それだけじゃねえだろ?」


「ああ、必ずシアを幸せにする」


「そうだな・・・だからヒナちゃんは僕にゆずってくれよ!」



 ・・・結局そこかよ・・・




「ゲン君」



 そこにシアの両親も現れた。



「申し訳ねえ。シアがこんな事になっちまって」


 俺はシアの両親に頭を下げた。


「いや、君のせいではない。シア本人が決めた事だ。それに、シアは大勢の少女達を救ったというじゃないか?あの子は私たちの誇りだよ。そして、あの子が立派に成長したのは、まぎれもなく君のおかげだ。本当に感謝している」


「だが、肝心な時にそばにいて助ける事が出来なかった」


「それは不可抗力だと聞いている。そうでなければ君がシアのそばから離れる事は無かっただろう?」


「それは確かにそのとおりだが」


「今回もシアを助ける事が出来るのは君達だけだと聞いている。我々に何もできないのは非常に心苦しいのだが、君達に全てを託すしかないのだ」


「まかせてくれ、必ずシアを助けて来る」


「わたしも!シアさまに助けて頂かなければ私は今も目を覚まさずにいたかもしれないのです!」


 シアの父親はヒナの方を見た。


「君がヒナさんだね?話は聞いているよ。シアの事をよろしく頼むよ」


「はい!やっと恩返しする機会が出来ました。必ずシアさまを助けます」


「二人とも宜しく頼む。こんな事しかできなくて申しわけないが、これを路銀の足しにしてくれ」


 手渡された袋には、とんでもない金額のお金が入っていた。


「こんなにもらう訳にはいかねえよ」


「いやこれでも少ないくらいだ。必ずシアを助けてくれ」


「わかった。有難くもらっておく」



「シアの事宜しくお願いします」


 シアの母親も俺に頭を下げた。




「ゲン様、ヒナ様、ご武運をお祈りいたします。ララ様もきっと見守っておいでです」


 バトラーとメイドたちも見送ってくれた。


 ・・・でもなんか、師匠が死んだみたいな言い回しだな。





 あまり出発が遅くなってもその分シアを助けるのが遅くなるからな、もう出発しよう。





「さあ、シアの元に出発するぞ」


「はい!がんばります」


「必ずシアさんを助けるわよ」




 俺は、ヒナとユナと共に、シアの待つ氷雪の国へと旅立ったのだ。


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