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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第六章 魔女の末裔
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188話 上級魔法士試験

 魔法士試験は魔法庁で行なわれる。


 上級・中級・下級の魔法士試験は同じ日に行なわれるが、人数的には中級魔法士試験の受験者が大半を占める。


 今年の上級魔法士試験の受験者は俺とヒナの二人だけだ。


 下級魔法士という資格もあるのだが、下級魔法の使い手は魔法士の資格取得が必須ではないため、資格試験を受験する者はほとんどいない。


 一方で中級の魔力量を持っている者は、一定の年齢になると全員が学院に入学する事を義務付けられ、魔法士試験に合格するまで、単独行動が認められない。


 だから、ここにいる中級魔法士試験の受験者はほとんどが学院の魔法士講座の受講生だったりする。

 若干、年配者が混ざっているのは、これまで試験に落ち続けている人だったり、国外からの移住者の場合もある。



 俺とシアも一年前、ここで中級魔法士試験を受けたのだった。


 今回の俺の様に、違う級で二度目の試験を受ける事は本来ありえない。

 亜魔女として魔力量が増大したために発生した特殊な事態だ。



 ちなみにシアの方は特例措置で、レンとルナが現地で判定し、すでに合格して『上級魔法士』となっているのだった。

 シアはむしろ、その次に控えている『魔導師』試験の方が本命だ。


 シアも元々の魔力量は中級レベルだったが、亜魔女となった今は上級以上の魔力量を持っている。

 だからシアが受験するのは『上級魔導師』試験となるのだ。


 もし合格すれば、国内三人目の『上級魔導師』となり、それは、『上級魔法』の発動権限を有する事を意味するのだ。


 考えてみたら、とんでもないところまで登りつめてしまったなシアは。


 いや、魔法量だけで言えば、俺やヒナも同等の魔力量を持っているはずなのだ。

 しかし、『魔導師』のレベルまで到達できるかというと、俺やヒナには無理な気がする。


 せいぜい魔力量に依存したパワープレイが関の山だろう。



 とにかく、今日の試験に合格しないとシアに会いに行く事が出来ないのだ。


 気合を入れて、試験に挑もう。


 ・・・しかし、ヒナは、結局魔法の発動が出来ないまま、試験当日を迎えてしまった。


 アン殿下の強力もあって、イメージトレーニングだけは十分に出来ているので、いざ本番で、運良く魔法が発動できれば合格の可能性もゼロではないのだが・・・


 ヒナ自身はかなり自信を失っていた。


「とにかくまずは学科試験だ。出来るだけ高得点を目指すぞ!」


「・・・はい、やれるだけの事はがんばります!」


 自信は無いなりに、やる気だけは見せるところがヒナのいいところだ。



 学科試験の会場には机が二つだけ、少し離れた場所に置かれていた。

 


 受験者が二人しかいないんだから当然だった。


 中級魔法士試験の会場の方はもう少しにぎわっているんだろうな?



 受験者二人に対して試験官が試験の注意点を説明し、試験が開始された。


 内容は去年の中級試験と同じ内容が半分以上を占めているが、より高度な内容の問題もそれなりに用意されていた。


 だが、ミト先生やアン殿下のおかげで試験の内容はほぼ理解できていたので、おそらく合格レベルには達しているという手ごたえはあった。




 試験が終わるとヒナは上機嫌だった。


「どうだったんだ?ヒナ」


「聞きたいですか?ゲンさま!」




 ・・・師匠みたいなニヤニヤ笑い・・・やめてくれ。




「なんと!わたし、満点かもしれませよ!」


「なに!全部できたのか?」


「はい!おそらく一問も間違えていないと思いますよ!」


 記憶力がいいのは知っていたが、まさかこれほどとは・・・


「すごいな、ヒナは。問題の中には明らかに引っかけ問題や、満点を取らせないための問題もあったと思うのだが?」


「えへへ、ミト先生とアン殿下から教えてもらった引っかけ問題は全部暗記していたので、助かりました!」


 それは俺も聞いていたのだが、さすがに全部は覚えきれなかった。



「この調子で次も!・・・と言いたいところだが・・・・」




「・・・次は実技ですよね?」



 ・・・そう、こいつが問題だった。




「やあ!ゲン君!ヒナちゃん!調子はばっちりかい!」




 実技試験の会場で待ち構えていたのは・・・妙なテンションの『上級魔導師』だった。


「・・・セナ・・・あんたが試験官か?」


「そうだよ!厳しく判定するから覚悟していてね」


 セナはにこにこしながら怖い事を言った。


「ゲンさまぁ・・・どうしましょう?」


 ヒナは少し怖気づいていた。


「女の子には甘くしとくから安心して!」




 ・・・だめだろう・・・それは。




「じゃあ、まずはゲン君からにしようか?」


「ああ、何をすればいい?」


「まずは一番得意な中級魔法を見せてよ」


「ああ、わかった」


「無手順でも構わないよ」




 そういえば、セナは全部知ってるんだよな?




 俺はいきなり『ストーンブレード』を出現させた。


 無手順で発動させる訓練をしていたので、今では何もせずに一瞬で発動できる様になっている。



「おお!やっぱり無手順は便利だねえ」


 発動の速さにさすがのセナも驚いている。


 俺は二つ目の『ストーンブレード』も出現させた。



 そして二つの『ストーンブレード』を同時に操り始めた。


 最初は並列動作で同じ動きで乱舞をさせた。



 次にミラー動作で左右対称の動きをさせた。



 ・・・今の俺に出来るのはここまでだ。


 シアやルナみたいに複数の魔法を全く別々の動きで操る事はまだできない。



「こんなとこかな」


「うん!すごいすごい!それだけできれば十分だよ」


 まあ、俺は魔術師を目指している訳じゃねえからな。



「じゃあ次は『上級魔法』の魔法陣を何か描いてみて」


「ああ、わかった」


 俺は『ヘルフレイム』の魔法陣を空中に描いた。


「うん、さすが、ララちゃんの弟子だけあって、魔法陣を描くの速いよね!じゃあ、魔力を注入してみようか?間違っても発動しちゃだめだよ」


「わかってる。じゃあ行くぞ」


 俺は魔法陣に思いっきり魔力を注ぎ込んだ。


 上級魔法の魔法陣は遠慮なく膨大な魔力を飲み込んで行く。


 だが、亜魔女となった俺の魔力は尽きる気配がない。



 ・・・これって、実戦なら連続で何発も上級魔法を撃てるって事だろうか?



「うん、そこまででいいよ。それ以上魔力を注ぎ込んだら暴発しちゃうからね!」


 俺の魔力を思いっきり吸い込んだ魔法陣は、力に満ち溢れ今にも破裂しそうだった。


「よし!ゲン君はもういいかな?」


 セナが何か見た事もない魔法を使うと、ヘルフレイムの魔法陣はふっと消失したのだった。


「じゃあ次はヒナちゃんだね」




 ついにヒナの実技試験が始まってしまった。


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