186話 下級剣士の少女
剣術大会は無事に終了し、俺とキアは上級剣士試験の受験資格を得た。
そしてヒナも下級剣士試験の受験資格を得た。
上級剣士試験の試験相手のコーディネートはスケジュールの調整がかなり難しく、試験がいつ実施できるのか、まだ予定が立っていない。
何しろ人数も少なく多忙な上級剣士二人に時間を割いてもらわないと試験が出来ないのだ。
一方で下級剣士試験は、早速剣術大会の翌日に学院で行なわれた。
ヒナの他にも、昨日の大会で上位の成績を修めた数人が、下級剣士試験に挑戦する。
現役下級剣士の講師や先輩と対戦し、二名に勝利すれば下級剣士になれるのだ。
俺の時と同じで、大会の成績上位者から順に試験に挑戦するので最初はヒナからだ。
「宜しくお願いします!」
ヒナの最初の相手は二年先輩の下級剣士だ。
「『剣精』の再来と言われた腕前、見せてもらおうか」
試験官の先輩は、最初から全力でヒナに切りかかった。
ヒナはこれを左手のショートソードで逸らし、右手のショートソードで反撃に出る。
ヒナの素早い反撃に試験官の先輩は一瞬怯んだが、ぎりぎりでこれを躱した。
「なるほど、これは油断できないね」
「今度はこちらから行きますよ!」
ヒナは笑顔で先輩に切りかかる。
・・・昨日の師匠との模擬戦で、師匠はいつも通り始終笑顔を絶やさずに戦っていたのだが、ヒナもつられてずっと笑顔で戦っていたのだ。
どうやらそれが、完全に定着してしまったらしい。
・・・っていうか、ヒナ程の美少女が常に極上の笑顔を絶やさずに、切れのいい高速の連撃を仕掛けて来るって、受けてる方からすると・・・結構怖いかもしれないよな。
・・・実際、試験官の先輩はビビってしまってヒナの攻撃に押され始めている。
師匠もそうだが、戦闘中に常に極上の笑顔のままでいられると、表情から思考を読めなくなってしまうので、ある意味究極のフェイントになっているのだ。
しかも相手が男性の場合、美少女の笑顔にドキドキしてしまって戦いに集中できなくなってしまうのだ。
そうしているうちに、案の定、先輩はヒナの攻撃を読み違えて、一撃を喰らってしまった。
試験の一試合目はヒナが勝利を収めた。
続く二試合目大体同じ展開で、ヒナは連続二勝し、めでたく『下級剣士』になる事が出来たのだ。
「やったな、ヒナ」
「はい!これもゲンさまの指導のおかげです!」
「今日のヒナを見てると師匠のおかげって気もするけどな」
「はい!わたしを支えてくれた皆さんのおかげです!」
試験に合格したヒナは本当に嬉しそうだった。
その日の夜は久しぶりに師匠主催の祝賀会だった。
「それでは!ヒナちゃん!下級剣士試験合格おめでとう!」
師匠はいつものミニスカートのメイド服姿だった。
・・・それはいいとして・・・
「なんで主賓のヒナまでメイド服姿なんだ?」
「これはね、ヒナちゃんに今日はどうしたいか聞いたらメイド服が着たいって言ったからだよ!」
ヒナも師匠と御揃いのスカート丈の短いメイド服姿だったのだ。
「それにしても・・・スカートが短すぎないか?」
ヒナのメイド服はスカート丈は、師匠のメイド服よりも更に短かった。
ヒナの細くてきれいな生足がもう少しで下着が見えそうなギリギリのところまで見えてしまっている。
「これは、その・・・ゲンさまはエッチなのがお好きだとララさまから聞きましたので・・・」
「師匠!なにヒナに適当な事吹き込んでんだ!」
「えっ?だって本当の事でしょ?」
「そりゃ・・・確かにスケベな物から目を逸らせなくなる事もあるが・・・」
「今だって、ヒナちゃんの生足ずっと見てるよ?それにほら!」
師匠が俺の目の前でくるっと一回転した。
すると短いスカートがふわっと翻って・・・
師匠の生足が、下着の見えるぎりぎりのところまで見えてしまったのだ!
「ねっ!やっぱりエッチなもの見たいと思ってるでしょ?」
師匠!何試してんだよ!
・・・そんなもん!・・・見ちまうに決まってるじゃねえか!
「それ!わたしもやります!」
ヒナも師匠の真似をしてくるっと一回転回って見せたのだ。
「ばか!ヒナ!」
俺は慌てて止めようとしたが間に合わなかった!
ヒナのスカートは師匠より短いのだ。
そんなのが翻ったりしたら・・・
・・・生足どころか、かわいらしい下着までしっかりと見えてしまったのだ!
「ヒナちゃん!さすがにサービスしすぎだよ!」
「えっ!・・・やん!」
ヒナは慌ててスカートを手で押さえた。
・・・そして不覚にも・・・俺の下半身はそれを見て少しだけ反応してしまったのだ。
「でもしっかりゲンには効いたみたいだね!」
・・・師匠にはしっかりばれていた。
そして・・・俺の隣にいたキアはまたしても鼻血を流して倒れていた。
「ヒナちゃんの・・・ヒナちゃんの・・・下着を見てしまったぁ!・・・こっこれはもう責任をとって結婚しないと!」
倒れながらわけのわからない事を言っている。
「それでしたらゲンさまにも責任をとって頂かないと!」
ヒナはスカートを押えながら、上目づかいで俺を見上げて言った。
「ばかっ!下着くらいで何を言ってる」
「そうですよね?裸も見られてますもんね?」
「全部見たわけじゃないぞ!」
「ふふっ、冗談ですよ!」
・・・最近ヒナが小悪魔的になって来てるんだが・・・
「ほんと、二人いい雰囲気だよね!これはシアちゃんも、うかうかしていられないね!」
「だからそんなんじゃねえって!」
いつものニヤニヤ笑いの師匠に俺は反論した。
だが、これで、俺もシアとの婚約に一歩近づけたのは事実だ。
上級剣士試験は、とりあえず日程が決まるのを待つ事しかできねえが、三週間後の上級魔法士試験に合格出来たらやっとシアに会いに行ける。
ここ最近シアからの連絡が来てねえが、前回の連絡では、巫女だった少女たちのケアに思いのほか手間取っているって話だったし、俺にも手伝える事があれば手伝いに行かねえとな。
「ヒナ、次は魔法士試験だ。本番まで時間がねえが、気合入れて頑張るぞ」
「はい!やれるだけやってみます!下級剣士に合格出来たら、なんでも出来そうな気がしてきました!」
・・・問題はヒナがいまだに全く魔法を使えねえって事だが・・・
ヒナも本気になったみてえだし、やれるだけの事をやるしかねえよな。




