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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第六章 魔女の末裔
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184話 将来を決める試合

 ヒナの優勝で盛り上がった一般部門の次は、下級剣士部門の試合が行われた。


 そして、いよいよ俺とシアの運命の懸かった中級剣士部門が始まった。




 この部門の最大の難関は、現在6連覇中のロンだ。

 7連覇のかかったこの大会で、ロンの奴も気合が入っている事だろう。

 だが、前回の中級剣士試験の際に俺は一度勝利している。気を抜かなければ倒せない相手じゃない。


 そしてもう一つの難関がキアだ。

 魔法も使った実戦では俺に分があるが、純粋に剣だけの勝負だと油断は出来ない。


 上級剣士試験はこの大会の中級部門で上位2名に入る必要がある。

 つまり、初期の試合で強敵に当たって負けてしまった場合、上級剣士試験を受ける事が出来なくなってしまうのだ。




「がんばってくださいね!ゲンさま!」


 試合会場に向かう俺をヒナが応援してくれた。


「ああ、ヒナもあれだけ頑張ったんだ。俺が情けねえところを見せる訳にはいかねえな」


「僕だって今回は負けないからね」


「キアさまもがんばってください!」


「うん!ヒナちゃんのためだけに頑張るよ!」


 ・・・相変わらず言葉か軽くて、どこまで本気なのかわかりずらいな、キアは。


 だが、ヒナの応援で気合が入ったのは間違いない。




 試合が始まり、俺とキアは順調に勝ちすすんだ。


 そしてついに決勝戦で対決する事となった。



「とうとうこの時を迎えたね」


「ああそうだな、だが本気で行くぜ」


「こっちも手加減はしないからね」


「望むところだ」




 ちなみに7連覇のかかったロンは、準決勝でキアに敗退した。

 キアの実力は、とうにロンを越えていたのだ。




 試合が始まり、俺とキアは、いきなり激しくぶつかり合った。


 亜魔女として覚醒したために俺は『身体強化』が使える様になっていた。


 しかし、『剣聖』の技を習得しつつある俺とキアの戦いにおいて、それはあまり意味をなさない。


 『剣聖』の技の極意は、身体強化を使わずに身体強化を使った相手に勝てるところにあるのだ。

 だから俺は師匠に倣って、よほどの事が無い限り戦いの中で身体強化を使っていない。

 しかし、それは最近のキアも同様だ。


 お互いに相手の行動を予測した打ち合いのために、派手さやスピード感は無いのだが、予定調和の連続したきれいな打ち合いが続く。


 この流れの中で、相手の裏をかく事が出来た方が勝利を掴むのだ。


 ・・・それにしても、キアとの打ち合いが、まるで師匠との打ち合っているのかと思えるほど、キアの腕は上達してきている。

 この試合、簡単には勝負がつかないだろう。


 身体強化を極力使わなくなったキアは魔力切れを起こす事もない。

 キアがロンを倒せた最大の理由はそこでもあったのだ。


 かといって、キアは身体強化を全く使わない訳ではない。

 使わないと見せかけておいて、咄嗟に身体強化を織り交ぜてフェイントをかけて来るのだ。


 そのトリッキーな戦法はキアが独自に編み出したものだ。


 剣聖の技は、身体強化を使わなくても相手を倒す事が出来るが、別に使ってはいけないという決まりもないのだ。



 一方で俺は、身体強化を使わない戦法が、すっかり身に付いてしまっている。


 今さらキアの様に身体強化を織り交ぜた戦法に切り替えたところで、身体強化の制御技術はキアに遠く及ばない。

 それならこれまでの戦法にさらに磨きをかけた方が良い。


 キア独自のトリッキーな戦法も、それを想定して先の手を読めば済む事だ。

 単に相手の戦術の幅が増えただけに過ぎない。

 剣聖の技で対応できない訳ではないのだ。


 しかし、キアの変則的な戦術が加わった事で、それまで単調だった打ち合いに変化が生じた。


 緩急が織り交ざった目まぐるしい打ち合いへと変わっていったのだ。


 そして、お互いに一歩も譲らない攻防が続いていく。



 このまま持久戦になれば先に体力の尽きた方が負ける。



 ・・・しかし、亜魔女になった俺の体には、自動治癒と自動回復機能が備わっていたのだ。


 魔力が切れない限り、傷が出来たら勝手に治り、疲労や状態異常が発生してもある程度は勝手に回復してしまうのだ。


 だから持久戦になった場合は圧倒的に俺が有利になってしまうのだ。


 このままいけば俺の勝利は確実になる。


 だが、それじゃキアに申し訳ねえよな?


 その前に勝負をつけるか?




 俺は体に少し無理をかけて剣速を上げた。

 身体強化ではなく単に筋肉に込める力を増したのだ。


 当然筋肉の疲労は早くなるのだが、その分打ち込みの威力や速度は増す。


 まあ、単に文字通り『力技』を仕掛けたのだ。


 剣聖の技は基本的に省エネだ。

 筋力や体力に劣る師匠が相手を倒すために編み出したものだからだ。


 だが俺には人並み外れた筋力がある。

 単純な筋肉比べならキアより俺に分があるのだ。

 


 俺が力圧しの戦法に切り替えたので、キアは身体強化で対応せざるを得なくなった。


 剣聖の技の『読み』のレベルが上であれば、対応出来たのかもしれないが、そのレベルが拮抗した者同士の場合は、力の強さを上げるしかない。


 戦いはそれまでとうって変わって、力と力のぶつかり合いになった。


 そして激しい剣と剣のぶつかり合いの結果・・・




 俺の剣が力でキアの剣を弾き飛ばしたのだ!




 最後は筋肉で勝利を奪い取って、俺の中級剣士部門の優勝が決まった!


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