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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第六章 魔女の末裔
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180話 師匠の帰国

 剣術大会と上級魔法士試験が迫ってきたが、国外遠征に出ていた師匠は、いまだ帰ってきていない。


 今回の遠征は、別の大陸の国々を回っているという事だが、今までよりもかなり長期の遠征だ。


 これまでも、長期遠征はあったが、転移魔法が使えるので、途中で時々帰って来てはいたのだ。


 しかし今回はなぜか一度も帰国せずに、続けて数か国を回ってるのだ。


 転移魔法陣は繋がっていたので、レンとルナはそれを使って、何度か現地に行って師匠と仕事の話をしていたのだが、直接仕事に関係のない俺は連れて行ってもらう訳にはいかなかった。


 そもそも、『上級魔法士』の試験に合格しないと国外に出る事は許されないのだ。


 レンとルナに、現地での師匠の様子を尋ねたのだが、なぜかその話になると、二人とも吹き出してしまって、師匠の詳しい話をしてくれないのだ。


 笑い出すくらいだから、最悪の状況にはなっていないとは思うのだが、師匠に何があったのか気になってしょうがない。




「ゲンさま、ララさまは別の大陸に行ってらっしゃるのですよね?」


 剣の練習の休憩時間に、紅茶を飲みながらヒナが話しかけてきた。


「ああ、それが勇者の本業だからな。今の時期はその大陸に魔物の大量発生が起きる可能性が高いらしい」


「魔物の発生場所が予測できる様になったのはいい事なのでしょうけど、勇者さまはますます忙しくなってしまいましたね」


「だが、発生地点の近くにいた方が、一人でも多くの人を助けられるからな。仕方ないだろう」


「ゲンさまも一緒に遠征に行きたかったのではありませんか?」


「そうだな、魔法士試験と剣術大会を無事に乗り切ったら、シアと一緒に師匠の手伝いが出来る様になるからな。遠征について行くのも良いかもしれないな」




 当面の目標として『上級剣士』になってシアと正式婚約する事しか考えていなかったが、その先の事も考えねえといけねえよな。


 やっぱり、シアと一緒に師匠の手伝いってのが一番現実的だよな?


 そうすれば、師匠ともシアとも、ずっと一緒にいられるからな。




「それなら!連れて行ってもらえる様に、わたしも、もっともっと強くなっておかないといけませんね!」



 ・・・んっ?いつの間にかヒナの目標が、『冒険者』から『勇者パーティー』に格上げされていないか?




「たっだいまー!」




 そんな話をしているところに、師匠が元気よく帰って来た。




「師匠!いきなりだな!・・・いや、長期任務、お疲れさまでした」



「あはは!堅苦しい挨拶はいいよ!こっちも今回の旅行は目一杯楽しめたし!お土産に現地の珍しい食材をいっぱいもらってきたから、後で料理するね!」



 ・・・・いま、思いっきり『旅行』って言ったよな?・・・任務だろ?任務。



「土産話もたくさんあるから後でゆっくり話してあげるよ!」



 ・・・本当に仕事に行ってたのか?バカンスじゃねえのか?



「それにしても・・・ヒナちゃんといい雰囲気だねぇ?・・・シアちゃんが嫉妬しちゃうぞ!」


「ちがうっ!これは訓練の合間に休憩していただけだ。すぐに訓練に戻る」


「そうですよ、シアさまからゲンさまを奪い取ろうだなんて!・・・そんな大それた事・・・するつもりは・・・ありません!」


「あはははは!わかってるって!冗談だよ、冗談」




 師匠、以前にもましてテンションが高いな。




「あっ!そうだ!これだけは先に報告しておかないと!」


「なんだ?なにかあったのか?」




「私ね、砂漠の帝国の皇帝陛下の妃になったんだよ!」






「・・・・・・・・・はっ! 何言ってんだ?師匠?」


 一瞬、言葉の意味が理解できなかったぞ?聞き違いか?




「いや、だからね、海を渡った先にある大陸の国々をまとめた帝国の、初代皇帝と結婚したんだよ!」




「わあ!そうなんですね!ご結婚おめでとうございます!」


 ヒナは一瞬驚いていたが、素直に師匠の結婚を祝福している様だ。


「ヒナ!そういう問題じゃない!師匠!どういう事だよ!何でこんな短期間でそんな事になった?ジオの事はどうすんだよ?」


 俺は師匠の肩にしがみ付いているジオを見た。

 ジオは俺と目が合うと静かに頷いた。


 ちなみに師匠はルルを胸に抱っこして肩にジオを乗せている。


「もちろんジオ様と別れるつもりは無いよ!詳しい話は長くなるから夕食の時に話すよ」


 そう言って慌ただしく去って行ってしまった。




 ・・・・・どういう事だ?



 師匠が・・・他の男のものになっちまったって事か?



 いや・・・元々俺のものでもなかったんだが・・・



 だめだ、頭の整理がつかねえ。



「ゲンさま?どうなさいました?お顔が真っ青ですよ?」


 ヒナが心配して声をかけてきた。


「いや、今の話に理解が追いつかなくてな」


「ララ様はご主人を亡くされているのですから、再婚されても問題ないのでは?」


「いや、それは・・・・いや、何でも無い。とにかく詳しい話を聞いてからだ」


 ヒナにはまだジオの事は話してなかったな。




 しかし、皇帝ってのはどんな奴なんだ?


 皇帝っていうくらいだから高齢の老人じゃねえのか?


 結婚したって事は・・・師匠はそいつと・・・




 ・・・・・あやうく師匠とじじいのいけないシーンを想像しそうになってしまった。


 だめだ!・・・頭が混乱して考えがまとまらねえ!




 結局、その日の剣の訓練は、全然身が入らなかったのだった。


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