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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第六章 魔女の末裔
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179話 剣術と魔法

 冒険者デビューの日に一人で小鬼を倒したヒナは、小鬼退治がすっかり気に入ってしまったらしい。


 あれから学院が休みの日は、魔物退治の依頼を受ける様になってしまった。


 短剣を使った二刀流の腕も上達し、すでに下級剣士としてもそこそこのレベルになっているのではないだろうか?


 これは、今度の剣術大会に出場すれば、それなりの好成績を修められるかもしれない。




 ・・・一方で、魔法の修行の方はさっぱりだった。


 記憶力の良さで、魔法の知識は基礎から応用まで大体身に付いたし、魔法陣も下級と中級の主だった魔法陣はマスターして、上級魔法の魔法陣もいくつか覚え始めている。

 学科試験の方はおそらく合格圏内だろう。




 ・・・しかし、肝心の魔法の発動が全く出来ないのである。




 魔法士試験は学科試験の他に実技試験もある。


 魔法が発動できなければ、試験に合格する事は不可能なのだ。


 しかも、ただ魔法が発動できれば良いという訳ではない。

 発動した魔法を思い通りに制御できなければならないのだ。


 だから、もし試験直前魔法が使える様になったとしても、魔法の制御の訓練をする時間が無ければ試験に合格する事は難しい。




 それは俺も同様なので、こうして魔法制御の訓練をしているのだ。



「ゲンさま!すごいです!二つのストーンブレードが全く同じ動きをしています!」


 俺の訓練を見学していたヒナが感心していた。


「いや、同じ動きじゃだめなんだ。それぞれ、別の動きが出来る様にならねえとな」


 俺はストーンブレードを二つ出現させて、それぞれを別々にコントロールしようと練習していたのだが、異なる動きをさせようとすると、どうしても動きがちぐはぐになる。


 試しに二本のストーンブレードを等間隔で平行に並べて、全く同じ動きをさせたところ、一本の時と同じ要領で制御する事が出来たのだ。




「それはとても難しい事なのでは?」


「シアにはそれが出来るんだ」


「へえ!すごいんですね!シアさまって!」




「ゲン君のストーンブレードのコントロールも大したものですよ。十分に『上級魔法士』試験には合格できるレベルです」


 ミト先生が、俺の訓練の指導をしてくれていたところだ。


「ゲン君は学科の成績も十分だし、中級魔法をこれだけのレベルでコントロールできれば魔法士としては申し分ないと思います」


「『上級魔法士』の試験って言っても、実技は『中級魔法』の制御技術で判断するんだったよな?」


「はい、上級魔法は戦略級の魔法ですから、使用にあたっては、国王陛下か上級魔術師の許可が必要です。たとえ試験であっても実際に発動する事が出来ませんからね」


「実際に上級魔法を使ったところを確認しないで試験に合格させて大丈夫なのか?」


「上級魔法と中級魔法の違いは、単に魔力量の差であって、同系統の魔法の制御方法は大体同じですからね。中級魔法が十分に制御できていれば上級魔法も制御可能という判断です」


 まあ、中級魔法も満足に制御できねえ奴が上級魔法を使ったら大変な事になるからな。


「後は、人間性も問われますので面接もあります」


「なに?面接もあったのか?」


「あれ?言ってませんでしたっけ?」


「初めて聞いたぞ。それで?誰が面接をやるんだ?」


「当然、この国の魔法士の最高位であるセナ様ですよ」


「ああ・・・あいつか」


「怖い方なんですか?」


 そう言えばヒナはまだ会った事が無かったな。


「いや・・・どちらかというと面白い奴だ」


「えっ?おもしろいというのは?」


「そのまま、面白い人だ。会ってみればわかる。それに女の子にはかなり甘いと思うぞ。かわいい女の子とみると必ず話しかけるからな」


「そうですね。ヒナさんはセナ様の好きなタイプの女の子ですね」


「女好きな方なんですか?」


「まあ、女好きといえば女好きなのか?」


 俺はミト先生に話を振った。




「・・・少なくともわたしは口説かれた事はありませんけど・・・」




 ・・・なんかちょっと微妙な空気になってしまった。



「まあ、面接のときに会えるから、会ってみればわかるだろう」


「でも、魔法が発動できないと面接以前の話ですよね?」




 そうなのだ、試験までにその問題を解決しねえと、次の試験まで、ヒナは行動を束縛されたままになってしまう。


「そう言えば、今度の上級魔法士試験に落ちたら、次はいつになるんだ?」


 俺はミト先生に尋ねた。


「今回の試験の次は一年後ですね」


「そんなに先になるのか!」


「そもそも上級魔法士試験は候補者がいないと実施されないのですよ。今回はお二人がいたので急遽実施が決まりましたが、本来今年は実施する予定は無かったのです」


「それじゃヒナだけの問題じゃねえな、俺も今回の試験に合格できなかったら、後一年自由行動が出来ねえのか」


 それは由々しき事態だ。


「剣術大会も同じ頃にあるってのに、どっちも気が抜けねえじゃねえか!」


 剣術大会の方は今回、上位の成績を修めて上級剣士にならねえと、シアが他の男と婚約させれちまううかもしれねってのに・・・



「ゲンさまでしたら、両方合格できると思います!」


 ヒナが、自信満々でそう言った。


「きっと大丈夫ですよ!わたしが保証します!」


 自信の根拠がわからねえが、ヒナにそう言われると大丈夫な気がしてくるな。



「そうだな、落ちた時の事を考えていても仕方ねえな。出来る事を精一杯やるだけだ」


「そうですよ!悩んでる時間がもったいないです!」



 ・・・そんなヒナは、最近は魔法士の試験よりも剣術大会の方に興味が行っているみたいで、時間さえあれば剣の練習を誘ってくるのだ。


 ・・・魔法士を目指すはずだったのに、どうしてこうなった?




「・・・それに、もし、不合格になったら、あと一年間、ゲンさまと一緒にいられますので、わたしとしてはその方がいいかなぁって・・・・」




 ヒナが、小声で不穏な事をつぶやいていた。


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