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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第六章 魔女の末裔
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175話 少女と冒険者

 ヒナの剣術の訓練は、予想以上に順調に進んで、すでに次の剣術大会の結果次第では下級剣士の試験に挑戦できるのではないかというレベルになってしまった。


 下級の魔物の討伐なら参加してもおかしくないレベルだ。


 とりわけ身体能力が極端に高いというわけでもないのだが、とにかく物覚えがいいのだ。

 俺の動きを正確に覚えて、それを再現しようと練習するのだが、動きを正確に覚えているので、上達が早いみたいなのだ。




「そろそろ冒険者デビューしても大丈夫でしょうか?」


「そうだな、今のヒナぐらいの腕前で冒険者をやってるやつは結構いるからな。とりあえず登録だけなら大丈夫か?」


「そうですよね!じゃあ、早速冒険者ギルドに行きましょう!」


「それなんだが・・・一つ大きな問題がある」


「なんですか?」


「俺とヒナだけでは、外出が出来ないんだ」




 そう、俺とヒナは上級魔力を持った魔法使いとして認定されている。

 この国では中級以上の魔力を持った者は、『魔法士』の資格を取得するまで単独行動する事が許可されていないのだ。

 それが、俺とヒナが現在学院に在籍している理由でもある。


「ええと・・・どうすればいいんですか?」


「基本的には外出する時は監督者と一緒に行動しないといけない。今、俺達の監督者は師匠って事になっている」


「ララさまは長期の国外遠征に行かれてますよね?」


「そうだな、今回は海を渡った別の大陸に行くって言う話だったから、しばらくは帰って来ねえだろうな」


「監督者がいない場合はどうなるんですか?」


「その時はそれなりの資格と社会的地位を持った奴が代行できるらしい」


「どのような方になるのでしょうか?」


「資格で言えば『上級魔法士』か『上級剣士』それか『魔術師』だな。具体的には、レンやルナ、それにゼトやレィアさん、ミト先生にアン殿下、後は魔法庁長官のセナとかだな」


「・・・それって、この国の中枢の人たちばかりですよね?」


「そうだよな・・・頼めるとしたらミト先生ぐらいか?」


「でもミト先生も魔法庁と学院の講師の掛け持ちで、結構忙しいって言ってました」




 普通に町の中を移動するだけも問題だった。




「お困りの様でしたら、わたくしめがご同行いたしましょうか?」




 ヒナと二人で悩んでいたらバトラーが声をかけてきた。


「大丈夫なのか?バトラー」


「はい、こう見えて『上級剣士』の資格は持っております。わたくしが同行すればとりあえず問題ないかと?」


「しかし、屋敷を空けてもいいのか?」


「現在このお屋敷の主であるララ様が不在ですし、お二人のお世話をする以外に大した仕事は御座いませんゆえ」


・・・確かにそうだよな、主人が不在で、屋敷の維持のためだけに執事や大勢のメイドたちがこの屋敷で働いているのだ。




「じゃあ、わりいけどお願いできるか?」


「かしこまりました」


 バトラーは深々と頭を下げた。


 俺みたいな若輩者にも礼を尽くす、徹底した執事ぶりだな。



「そうと決まりましたら、ヒナ様の冒険者装備が用意してございます。お持ちいたしますので、少々お待ちください」


 バトラーはそう言って師匠の工房の方に向かった。




 ・・・って言うか、何でヒナの冒険者装備が用意されているんだ?




 しばらくすると、バトラーは装備一式を抱えて戻って来た。


「こちらでございます」


 バトラーは装備一式をダイニングテーブルの上に並べていった」




「わあ!かわいい装備です!」



 バトラーの並べた装備は若草色を基調とし、女の子らしいかわいらしい装飾の施された装備だった。



「まずは試着されてみてはいかがでしょうか?メイドたちがお手伝いいたします」


「はい!着てみます!」


 ヒナはメイドたちと一緒に別室へと移動した。



「・・・さっきの装備は何なんだ?あれは『附加装備』じゃないのか?」


「はい、ゲンさまの装備と同等の性能だと伺っております」


「なんでそんなものが用意してあったんだ?」


「こうなる事を予想して、ララ様が出発前に制作されておりました。デザインはシィラも協力してヒナ様に合わせて仕上げたと伺っております」




 ・・・師匠・・・多忙なくせに何やってんだよ?・・・


 って言うか、何でヒナが冒険者になりたいって言い出すのがわかってたんだ?




「どうですか!ゲンさま!」



 そこに着替えの終わったヒナが戻って来た。



 基本的な意匠は師匠の装備に似ているが、色は若草色と白をベースにところどころ金の装飾が施されている・・・って見た目高級過ぎねえか?


 ヒナの緑がかったヘーゼルの髪と緑の目、それに華奢なプロポーションのおかげで、まるで森の妖精・・・エルフの様だった。


「ああ、すげえ似合ってる」


「えへへ!かわいいですよね?これ」


「ああ、そうだな、ヒナのかわいさを引き立ててるな」


「嬉しいです!ありがとうございます」



 つい、無意識にかわいいって言っちまった。


 ヒナはえらいご機嫌になってしまった。



「サイズはいかがですかな?」


「ぴったりです!全然問題ありません!」


 ヒナはぴょんぴょんと飛び跳ねて見せた。


「何だか体が軽くなった気がします」


「その装備は身体強化と同じ様な効果があるんだ。体の機能をサポートしてくれる」


「そうなんですね!かわいいだけじゃなくて、そんなすごい装備だったんですか」


「武器も有ったんだな」


 ヒナは腰に二本の短剣を下げている。


「はい!短剣が二本あったのでそれにしました」


 ヒナは短剣を抜いて構えて見せた。


「なんで都合よく短剣が二本用意してあるんだ?」


「これはララ様が一通り色々な種類の剣をあらかじめ用意してありましたので、その中から選んで頂きました」


 ヒナが短剣の二刀流を選ぶのも師匠の想定内だったって事か・・・相変わらず底が知れねえな師匠は。




「では準備がよろしければ冒険者ギルドに行きましょうか?」


「ああ、俺は大丈夫だ」


「わたしも準備オッケーです!」




 俺とヒナは、バトラーに付き添ってもらって冒険者ギルドへと向かったのだった。


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