表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第六章 魔女の末裔
174/320

173話 魔力の秘密

 二回目の魔法士の講座では、ヒナはまず下級魔法を使えるか試してみる事になった。




「ではヒナさん、一番初歩的な発火魔法の魔法陣です。これを描いてみて下さい」


 幼年学校で一番最初に教わる、単に種火を着けるだけの魔法だ。




「この魔法陣なら簡単です!何とかなりそうですね」


 ヒナは自信満々で魔法陣を描き始めた。


 簡単な魔法陣なのですぐに描き終わった。

 形も悪くなさそうだな。


「では、魔力を注入して下さい」


「はい!注入します!」


 ヒナは杖を魔法陣に向けて力をこめる。


 ・・・まあ、別に筋肉に力を入れる必要はないんだが・・・




 ・・・しかし、ヒナから魔力の放出を感じないな。





 俺は元々魔力を感じ取る能力が高かったが、亜魔女になってからさらに感度が上がってるみたいなのだ。


 ヒナの体内に莫大な魔力がある事はなんとなく感じている。


 それはアン殿下も同意見だ。


 しかし、ヒナは体の外に全く魔力が流出してこないのだ。



 『柩』の中にいた時は、『柩』を通して地下迷宮に莫大な魔力を供給し続けていたのだから、魔力を体外に出せないわけでは無いはずなのだが・・・『柩』から出て、例の治療を施して以降、一度も魔力を体外に放出していないのだ。




「ミト先生、だめです。魔法陣が全く反応しません・・・やっぱり魔法陣が下手だからでしょうか?」


 ずっと体に力を込めていたヒナは、さすがに筋肉の限界が来たようだ。

 大きく肩で息をしている。


 ・・・だから筋肉に力を入れてもどうにもならないのだが・・・


「いえ、魔法陣はこれだけしっかり描けていれば問題なく作動するはずです。どちらかというと、ヒナさんから魔法陣に全く魔力が流れていないのが問題ですね」


「やっぱり、わたし・・・魔法使いにはなれないのかも知れません・・・」



 上級レベルの魔力を持っている者は『上級魔法士』の資格を取らなければならない事になっているのだが、『上級魔法士』の試験に合格するためには魔法が使えなければならない。


 上級の魔力を持っているが魔法が使えないという場合は、どういう扱いになるのだろう?



「ヒナさんの体は魔力伝導率が極めて低い状態なのです」


「ミト先生、それはどういう事ですか?」


「『魔女』はどうして上級魔法士を凌駕する膨大な魔力を体内に蓄えられるのかというと、体の魔力伝導率が低いため、魔力が体外に流出しないからなのだそうです。ヒナさんはどうやら本物の魔女に近い、魔力を通さない体みたいですね」


「じゃあ、魔女はどうやって魔法を使っているんだ?」


「・・・それはゲンさん自身がご存じなのではないですか?」


「俺が?」


「はい、亜魔女になったゲンさんはヒナさんと同じで、魔女に近い体質のはずですから」


「どうですか?ゲンさま」



 魔力の使い方に関しては以前とあまり変わった感じがしねえんだが?



 俺はヒナが描いた下級魔法の発火魔法の魔法陣を描いた。


 そしてそれに魔力を注ぎ込む。



 魔力を杖の先から放出しようと思うと、自然と流れ出すし、止めようと思えば止まる。


 更に流し込もうと思えば、いくらでも流れていく。


 速く流そうがゆっくり流そうが自由自在だ。



「うーん、ただ思った通りに魔力が放出できるんだが・・・感覚的には手を動かすのと何ら変わらねえ」


 俺はとりあえず呪文を詠唱した。


「『スモールファイヤー』」



 ぼんっ!



 魔法陣から直径1mぐらいの火の玉が発生して消えた。



「ゲンさん!魔力の入れ過ぎです」


「すまん!魔力の流れ方を試してたら入れ過ぎてた」



 危うくみんな火傷をするところだった。





「今のゲンさんを見ていて気が付いたのですが・・・」


 アン殿下が口を開いた。


「ゲンさんも普段は魔女と同じ魔力伝導率の低い体質のようなのですが、魔法を使う時だけ、局部的に魔力伝導率が高くなっているみたいなんです。おそらく無意識なのでしょうが、自分の意志で体の魔力伝導率を変化させているのです」


「俺は特に意識していねえが?」


「無意識に使いこなせているという事です」


「ちなみにゲンさんは亜魔女になってから身体強化は使えるようになったんですか?」


「いや、身体強化は相変わらず使えねえな」


「やはりそうですか・・・どうやらゲンさんは指先からのみ自在に魔力を放出する事が出来ているみたいですね」


「指先から?」


 俺は自分の指をじっと見つめた。


「そういえばいつも魔法を使う時は、魔力が指から杖に流れていく感じがしたな」


「ちなみに魔法陣を使わずに魔法を使う時はどうでしたか?」



「ちょっとやってみていいか?」


 俺は意識の中でさっきの発火呪文の魔法陣を思い浮かべて、魔力を少しだけ注入するイメージをして、声に出さずに呪文を詠唱した。



 すると、目の前に小さな炎がぽんっと現れたのだ。



「今のは別に指から出た訳じゃねえな・・・意識の中にあった魔法が突然目の前に転移したって感じだったな」


「それが本来の魔女の魔法のあり方なのだと思います」


「どういう事なんだ」


「魔力というのはそのまま体の中に蓄えられているというわけではなく、別の世界の様な所にあって、それをこの世界に導いて使用しているのではないかと思うのです」


「別の世界ってなんだ?」


「それは物の例えですが、そこから魔力を引き出す方法として、普通の魔法使いは肉体を通じて行うのですが、魔女はもっと直接的な、別の方法を使えるという事です」


「肉体を通さずに魔力をこの世界に持って来れるって事か?」


「はい、魔女の体は普通の人間よりも魔力伝導率が低い傾向にあるにも関わらず。より強大な魔法が使えるという事はそういう事なのではないかと考えられるのです」


「俺の体はたまたま指先にだけ穴が空いてたみたいなもんか?」




「つまり、わたしには・・・その穴が無いという事でしょうか?」




 ・・・ヒナが全く魔法が使えないというのは・・・そういう事なのか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ