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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第六章 魔女の末裔
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169話 上級魔法士講座

「本年度特別に開講した『上級魔法士講座』は、ここにいる三人が受講生となります」


 三人ってのは、俺とヒナとアン殿下って事だよな?


「休学中のシアさんも、復学した際はこの講座の受講生となります」


 つまり、『上級』の魔法使いは全員強制参加って事だ。


「現在学院にはわたくし以外に『上級魔法使い』がいなかったので、この講座は開講しない予定だったのですが、お二人が入ってくれて本当に嬉しいです」


 アン殿下が嬉しそうに微笑んだ。


 でも、『上級魔術師』のアン殿下は既に先生よりも格上で、とっくに学院を卒業しても構わない訳なんだが・・・シアと一緒で、勉強を続ける事が好きなんだろうな。




「早速ですがヒナさん、『魔女』になったなんて羨ましい!・・・いえ、おめでとうございます!」


「あ、ありがとう・・・ございます?」


 ヒナはちょっと困惑気味だ。


 ちなみに、ここにいる、アン殿下とミト先生は、師匠が『魔女』だという事を知っている。


「シアさんも『魔女』になったのですよね、帰国したら話をいっぱい聞こうと思って楽しみにしてたんですよ」


「シアは、氷雪の国でまだやる事が残ってるんでな」


「今回の話を聞いてわたしにも『魔女』の素質が無いか調べてみたんですが・・・全くダメでした」


 ミト先生はしょんぼりしている。


「わたくしやミト先生の様な、生まれながらの上級魔法使いは『魔女』とはまた別の要因を持っているのです。ですから、シアさんやヒナさんと同じ方法で『魔女』になる事は出来ないみたいなのです」


 アン殿下は人の運命を見る力を持っている。


 その力で何かを読み取っているみたいだな。




「ところで!男の子であるゲン君も『魔女』になったんですよね!」


 ミト先生が俺の方に話を振って来た。


「『魔女』って言うか『亜魔女』って師匠が名付けたんだが、実力的には『上級魔法士』と同レベルの魔法使いって話だ」


「でも魔法陣を使わなくても魔法が発動できるんですよね?そんな事が出来るのは『勇者』と『魔女』しかいませんから!」


 確かに・・・実戦において魔法陣を描かずに魔法を発動できるってのはかなり有利な条件になる。


「その力を手に入れてから、まともに魔法を使った事がねえんだ。まだ実感が湧かねえな」


「わたしもっ!まだ一度も魔法を使った事が無いんです。『魔女』になったって言われてもなんだか他人事みたいです」


 そうなのだ。


 ヒナには使い方を教わるまで魔法は使わないように言ってある。

 ヒナは真面目にそれを守っているのだ。


「『上級魔法』を魔法陣や呪文の詠唱無しで発動できるというのは、とても危険な事ですからね。ですから二人には魔法を正しく制御できるようになるまで、この講座で勉強して頂く事になります」


「それって、『上級魔法士』の試験に受かるまででいいんだよな?」


「『上級魔法士』試験というのは、難易度的には『中級魔法士』とほとんど一緒なのです。最低限の日常生活に支障の無いレベルになれば『魔法士』の試験には合格できます」


「なんだ、意外と簡単そうだな」


「でも、あなた方は『上級魔法士』よりも、もっと高レベルの力を持ってしまいました。ですから実際には『魔術師』レベルの魔法制御技術を身に着けて頂かなければなりません」


「それって、『上級魔法士試験』合格後も学院に通わないといけないって事か?」


「そうです、最短でも一年は講義を受けてもらう事になると思って覚悟しておいて下さい」


「そんなにかかるのか?」


「一年なんて短い方ですよ!わたしなんて十年以上試験を受け続けているのに、いまだに『魔術師』試験に合格できないんですから!」


 そういえばミト先生は『上級魔法士』だったな。


「『魔術師』の試験は、知識だけでなく実技試験において非常に高度な魔法制御技術が要求されるのですよ」


 確かに、レンやルナの魔法のコントロールは神業だったからな。

 アン殿下も見た事はねえけど相当な実力なんだろう。


 そして・・・シアもそのレベルに近づきつつあったのだ。


「わたしは致命的に不器用なので、『魔術師』に合格できるレベルの魔法制御がどうしてもできないのです」


「・・・それって、俺も合格するの無理じゃねえのか?」


「わたしも自信ないです」


「ゲンさんとヒナさんは、『魔術師』レベルの技術を勉強して頂く必要がありますが、必ずしも試験に合格する必要はありません」


「そうか、助かった」


「まずは、次の『魔法士』試験の合格目指して頑張りましょう!」


 ・・・そうだな、それに合格しねえといつまでたっても単独で外出が出来ないからな。


「とりあえず、お二人の実力が知りたいので実技場へ行きましょうか」




 俺達四人は魔法の実技試験などに使われる実技場へやって来た。




「本当は『上級魔法』を見せて頂きたいところですが、この実技場では耐え切れないかもしれませんので、今日は『中級魔法』を見せて頂きます」



「中級魔法って事は、いつもの『ストーンブレード』でいいか?」


「今回は、あえて使い慣れていない魔法の方がいいですね。ゲンさんが一番苦手なのは何系の魔法ですか?」


「俺が苦手なのは風系だな」


「では『ウィンドアロー』を放って下さい。最初はヒナさんへの見本として魔法陣を描いて詠唱で発動してみて下さい」


「わかった」


 俺は杖を使って『ウインドアロー』の魔法陣を描いた。


 そして魔法陣に魔力を注入し、呪文を詠唱する。


「『ウィンドアロー』」


 魔法陣の周りの空気が集まって風の矢となり放たれた。


 風の矢は、目標の大岩に命中し、岩の表面を少しだけ削って霧散した。



 まあ、こんなもんだよな。



「では次は魔法陣を描かずに頭の中でイメージして発動してみて下さい」


「ああ、やってみる」


 前に『ストーンブレード』を発動した事がある。

 やり方はなんとなくわかっている。


「魔力量は可能な限り投入してみて下さい」


 俺はミト先生に言われた通り、ぶち込めるだけの魔力を頭でイメージした魔法陣にぶち込んだ。


 イメージの中の『ウインドアロー』の魔法陣は強烈な光を放ち、ものすごい高速で回転をしている。


 実際の魔法陣にはここまでの魔力は込められねえだろうな?

 おそらく途中で暴発しちまう。


「限界だと思ったら魔法を発動して下さい」


 どこが限界なのかよく判らねえが、さすがにこれ以上魔力を投入したらやばいって気がする。


 俺は頭の中で魔法の発動をイメージした。




 俺の周りの空気が一気に収束した。


 一瞬、自分の周りが真空になったような感じだ。



 そして膨大な空気が集まって作られた一本の矢が解き放たれた。





 放たれた『風の矢』は、高速で目標の大岩に命中し、大岩を粉砕して貫通していった。





 ・・・それは『アロー』系魔法ではありえない、とんでもない威力だったのだ。


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