166話 最初の夜
「ゲンがわたしに手を出さないのって、わたしの体に負担をかけない様に気遣ってくれているからですよね?」
それだけでもねえが、それが一番大きな理由なのは間違いなかった。
「ゲンは年の割に・・・その・・・とても大きいですし、一方でわたしはどちらかというと小さめですから・・・わたしの体が成長するまで待ってくれているんですよね?」
「・・・シアに、痛い思いをさせる訳にはいかねえからな」
「ふふっ、ありがとうございます。ゲンのやさしさが本当に嬉しいです!」
・・・それに・・・シアの体は全身が芸術品の様に美しいのだ。
・・・当然・・・あの部分も見事に均整のとれた美しい形状をしていた。
もし許されるのなら、いつまでも眺めていたいと思ってしまったほどだ。
・・・もちろん、それにはエロい気持ちも入ってはいるのだが・・・
それでも、決して欲望のままに汚したり壊してしまってはいけないものだと思ってしまったのだ。
「でも・・・その痛みはわたしにとっては喜びの痛みなのですよ?」
シアはそう言って俺の部屋着を脱がし始めた。
「それに・・・もし、体が傷ついてしまったとしても・・・今の私は、元通りに治す事が・・・出来る様になったんです・・・」
シアは・・・そう言いながら俺の下着も全て脱がし切ってしまった!
俺は・・・抵抗する事も出来たのだが・・・シアが何を言おうとしているのか途中で悟ってしまった。
だから、あえて抵抗せずに、なすがままにされていたのだ。
傷が治せるからといって、大切な相手を傷つけるような真似が出来る訳がない。
でも、自分がそうでも言わないと俺が踏み出せないとシアは思っているのだろう。
「だから・・・もう、わたしの事をゲンの好きなようにしてもいいんですよ!」
シアはそう言いながら、自分の下着も脱いでいた。
そして、裸になったシアが俺にしがみ付いてきたのだ!
全身の肌がシアの肌と触れている。
こういう時、シアの肌にほんの一部が触れただけでも電撃が走った様な快感を感じてしまう。
それが今、俺の体の前側の、全ての肌がシアと接触しているのだ!
全身に、これまで経験した事の無いほどの心地よさが溢れている。
シアが俺の背中を抱きしめているので、俺もシアの背中に手を回してだきしめた。
手のひらに感じるシアの滑らかで柔らかい背中の肌の感触に、俺の手のひらにも快感が走る!
そして、俺とシアは自然に、お互いの目の前にある相手の唇に唇を重ねた。
シアの小さくて柔らかい唇の感触が俺の唇に伝わる。
唇にも、これまでの、どのキスよりも更に強烈な快感が走った。
あまりの快感に、俺は一瞬、体をビクッと痙攣させてしまった!
すると、シアも全く同じタイミングで体を痙攣させたのだ。
・・・シアも、俺と全く同時に俺と同じ感覚を経験しているのだ。
いま、この瞬間に、好きな相手と、同時に同じ快感を経験している!
その事がとてつもない幸福に感じた。
そして、二人同時に全身をビクッと痙攣させたために、接触していた全身の肌が、一斉に擦れたのだ!
全身に感じていた快感が・・・全て同時に強まってさらに強烈に襲ってきた!
「ああん!!!」
「おおお!!!」
思わず二人同時に声が出てしまった。
・・・俺は危うく果ててしまいそうだった。
目を開くと、目の前でシアが涙目になってうるうるしていた。
シアも今の強烈な快感に戸惑っているのだ。
まだ、結ばれていないというのに、この強烈な快感と至上の幸福感はいったいどうなっているのだろう?
この後、まだ本番が残っているのだ。
これ以上の快感がこの世に存在するのだろうか?
そして俺はその感覚に耐えきれるのだろうか?
シアの表情を見るに、シアも同じ事を考えている様に見える。
顔を真っ赤にして瞳をうるうるさせながら期待と不安が入り混じった表情で俺を見つめている。
・・・正直、その顔はめっちゃくちゃ可愛いのだが・・・・
世の大人の恋人たちや夫婦がお互いの体を求め合う理由が良くわかった。
今以上の快感と幸福感が得られるのだ。
それは一度経験してしまったらきっとやめられなくなってしまうのだろう。
俺は『巫女』の少女たちの記憶に共感して、少女の体をむさぼる様に求めてきた男たちを大勢見てしまった。
・・・男だけではなく、中には女性もいたのだが・・・
彼らはこの快感の虜になり、少女の体をむさぼる事が止められなくなってしまったのだろう。
しかし、少女の方は違っていたのだ。
少女にとって、望まない相手と体を重ねる事が、どれほど屈辱的で、おぞましく、気持ちの悪いものであるかを俺は間接的に体感してしまったのだ。
少女たちは、一様に、強烈な嫌悪感と憎悪、悲しみ、絶望感、喪失感を感じていた。
今、俺がシアに感じていた感覚とはまるで正反対だったのだ。
同じ行為であっても、相手によってこれほどの違いあるのかという事実に、俺は今、あらためて驚愕していたのだ。
おそらく、少女たちを弄んだ男たちは、それなりに快感を感じて満足していたのだろう。
中には、少女にも快感を与えてやったんだから感謝しろと、本気で思いこんでいた奴もいた。
・・・だが、実際には・・・俺が共感した少女の中に、喜びや快感を感じた者など、ただの一人もいなかったのだ。
この行為は、真剣に愛し合う者同士が、その愛を確かめ合うための行為だ。
その結果として、二人の愛の結晶である子供を授かるのだ。
決して、興味本位や、己の欲望や快楽を満たすためだけに行なってはいけないものだ。
俺はあらためてその事を考え直していた。
シアは今、間違いなく喜びと幸福を感じている。
それは、俺の思い込みじゃなく、真実だと確信している。
俺を見つめるシアの瞳が、それを物語っているからだ。
俺とシアは間違いなく真剣にお互いを愛し合っている・・・それは紛れもない事実なのだが・・・・
「シア、今日はここまでにしておかないか?」
俺はシアに問いかけていた。
「・・・はい・・・実はわたしも迷っていました・・・今でも既に、想像以上の気持ちよさなのに・・・これ以上の快感があるなんて想像も出来ませんし・・・もう、たえられないかもしれません」
「ああ、俺もだ。まさかシアと体を重ねるだけでこんなに気持ちいいなんて想像してなかった。これ以上先は・・・俺達にはまだ早すぎるんじゃねえのかってな」
「ふふっ、ゲンがわたしと同じくらい気持ちよくなっていて、同じ事を考えていたなんて!なんだかすごく嬉しいです!」
「そうだな・・・・・なあ、これから先は、お互いにもう少し大人になるまで取っておかねえか?」
「はい・・・今はもうこれで十分かなって思います。一度に全部終わらせてしまうのはもったいないです。ここから先は・・・大人になった時の楽しみにとっておきたいです」
「シアとはこれからもずっと、こういう時間を大事に共有していきたいと思っている。焦らずに、少しずつ進んで行きたいと思う」
・・・・・良かった・・・かっこよくまとめる事が出来たな・・・
もちろん、今言った事は全て本心なのだが・・・
・・・実は既に限界を突破しそうなギリギリのラインに来ていたのだ。
このまま、事を進めた場合、おそらく俺は最後まで行けずに途中で果ててしまっていたに違いない。
そんな情けない姿をシアに見せたくなかったのだ。
そういう意味でも、俺はもっと大人にならないとシアを抱く訳にはいかないのだ。
「ゲン!」
すると、シアが再び俺を強く抱きしめた!
「ゲンが、わたしとの時間を大切に思ってくれて嬉しいです!わたしたちの最初の夜はここまでって事ですね!」
・・・シアが抱きついたその瞬間・・・俺のそこは、シアの下腹部の柔らかくて気持ちいい部分に、思いっきりこすられてしまったのだ!
「はうっ!」
・・・・・情けない声と共に、俺は・・・限界を超えてしまった・・・
・・・折角、かっこよく決めたと思ったのに・・・・・結局情けないところをシアに見られる羽目になってしまった。
「・・・あれっ?・・・あれっ?・・・・・はわわわわっ!」
「・・・・・すまん、シア・・・・」
ベッドの上が大変な事になってしまって慌てているシアを見ながら・・・俺は次に会う時までに忍耐力を徹底的に鍛えようと心に誓ったのだった。
第5章 完結です。




