165話 最後の夜
その日は久しぶりにみんなで一緒にお風呂に入った。
シアが捕まったり、その後も色々あって、みんな揃って入る機会が無かったのだ。
一緒にいられるのも今日が最後だし、折角だから一緒に入ろう!
・・・という話をしていたら・・・
「なになに!楽しそう!私も一緒に入っていいかな!」
と言って、師匠も乱入してきたのだ!
もちろん隠すべきところはタオルでしっかり隠している。
みんな、初日の事があったので、そういったラッキーなハプニングは起きない様に細心の注意を払っているので、あれ以降そういう事故は起きてはいない。
とは言いつつも、今俺の目の前にはタオル一枚しか身に着けていない師匠が立っているのだ。
・・・ここまで限界ギリギリの師匠を見るのは初めてだ。
胸元のタオルは膨らみの上半分がほとんど露出して谷間がくっきり見てとれる。
太腿もあとほんの少し捲れたら肝心な部分が見えてしまうのではないかというほど、際どい所を攻めているのだ。
「ララ先生、気を付けて下さいね!さっきからゲンがララ先生の体のエッチなところばかり見ていますよ」
「あはは、大丈夫だよ!ジオ様以外の男性には、絶対に見せるつもりはないからね!」
・・・いま、師匠がフラグを立てて行ったぞ。これは・・・期待できるのか?
「ゲンが何を期待しているのか想像がつきますけど、湯船に鼻血をたらさないで下さいね!」
「いや、さすがにそれはねえよ!」
とか言っていたら、俺の隣でキアが既にのぼせて鼻血を流し始めていた・・・
さすがに師匠の今の姿は、キアには刺激が強すぎたらしい。
キアを脱衣所に運んで寝かせてから浴室に戻ると、三人が洗い場で洗いっこをしているところだった。
「あっ!もう戻って来ちゃったんですか!」
三人ともタオルは外しているが、肝心なところは泡で隠れていた。
しかし・・・これは!
・・・はち切れんばかりのココさん・・・
・・・女性の体の美しさの頂点を極めたと言っても過言ではない究極のバランスを備えた師匠・・・
・・・成長過程の初々しさがたまらなく愛おしいシア・・・
・・・この三人を同時に眺めているこの状況って・・・俺は今、男として最高に幸せな瞬間にいるのではないだろうか?
「あはは!ゲンもこっちに来て一緒に流しっこする?」
・・・いいのか!それって!
「なーんてね!冗談だよ!今から泡を流すからゲンは後ろを向いててね!」
「タオルを巻くまで絶対にこっちを見ちゃだめですよ!」
「あはははは!あたいは見られても良いけどね!」
・・・完全にからかわれているだけだった。
結局、そこそこ魅惑的な光景を堪能する事ができたものの、師匠の全てを見る事は出来ず、若干不完全燃焼気味に入浴の時間は終わった。
・・・この場にビビもいればあいつの特殊効果で師匠の全てが見れたかもしれねえな・・・
などと、不純な事を考えてしまった・・・
その日の夜、俺とシアは同じ部屋で寝る事にした。
もちろん、何もしないでただ一緒に寝るだけ・・・のつもりだ。
ベッドに入るとシアが俺にすり寄って来た。
「ゲンはやっぱりララ先生がいるとわたしよりララ先生に興味がいってますよね?」
「そんな事は・・・ねえぞ」
「まあ、いいですよ。ララ先生は同性の私から見ても魅力的ですし、わたしも大好きですから・・・」
「そうだな・・・すまん、前に吹っ切れたと言ったが、完全に未練が無いわけじゃなかった。今回ひさしぶりに合ってそれ再認識しちまった」
「ララ先生の事を完全に忘れて下さい!・・・って言っても無理な事はわかっています。・・・それに、ララ先生を一途に思っているところも含めて、わたしはゲンが好きなんです!だから、ララ先生を好きな気持ちを無理に消し去る必要はないですよ!・・・ただ、それでも私の事を一番に思ってくれたら嬉しいです」
「そういう意味では俺は今、シアの理想の俺かもしれねえな」
俺はそう言ってシアにキスをした。
師匠への想いはまだ残っている。
だが、シアの事が一番大事だ!
これだけは自信を持って言える。
「ココさんに、ビビさん、それにヒナちゃんも加わって、ゲンの狙ってる女の子が増えてしまいました。・・・いつか自分が嫉妬に狂って世界を滅ぼす魔女になってしまうのではないかと不安になってしまう時があります」
・・・そうか、シアはその戒めの意味も含めて、あえて自分の事を『嫉妬の魔女』と呼んだのか・・・
「ははは、それについては俺の気持ちは揺らがねえよ」
「そうですか?特にヒナちゃんはゲンの好みではないですか?かわいいし、ポジティブなところがララ先生そっくりです」
・・・ヒナをあの性格にしちまったのは俺だったな・・・
俺は無意識に師匠みたいになって欲しいと願っていたのかもしれねえな。
そうだ、あの事をシアに聞いてみよう。
「シア、そのヒナの事で気になってたんだが・・・あいつは、その・・・男どもに襲われた記憶が無くなっちまったじゃねえか?・・・だが、実際に過去は変わんねえだろ?・・・その、ヒナが自分の体の違和感に気がついたら、ショックを受けるんじゃねえかと思ってな・・・」
・・・男の俺がこんな事気にしてるって、やっぱ気持ちわりいよな?
変な事聞いちまったか?
「・・・ゲンは優しいですね。ヒナちゃんの事をちゃんと気にかけていて」
「男の俺がこんな事を気にしてるって気持ち悪くねえのか?」
「そんな事無いですよ、それはゲンのやさしさだってわかっています。・・・それに、その事なら大丈夫ですよ!」
「大丈夫って、どういう事だ?」
「ヒナちゃんの体は既に治癒魔法で、悲しい経験をする前のきれいな体に戻してあるんです」
「そんな事が出来るのか?」
「はい!魔女の治癒魔法は、手足が無くなるなどの重度の部位欠損だって治す事ができます!やろうと思えば女の子の純潔を取り戻す事だって出来ちゃいます!」
・・・そういえば・・・前にビビの手下がそんな事を言ってたな。
・・・でも、それを聞いて安心した。
これでヒナが傷つかずにすむ。
「安心しましたか?ゲン」
「ああ、ヒナが傷つかないで済んで良かった」
「他の子たちも本人が望むならそうしてあげるつもりです」
そうだな、記憶が無くならないにしても、少しは少女たちの救いになればそれに越した事は無い。
「ふふっ、ゲンは本当に優しいですね」
・・・やさしさ・・・なんだろうか?
・・・単に後味が悪いのが嫌なだけかもしれねえ。
「わたしに手を出さないのも、ゲンのその優しさなのかもしれませんが・・・」
シアがふとんの中でネグリジェを脱ぎ始めた・・・
そして下着姿になると俺に肌をすり寄せて言った。
「後で元通りに治せますから・・・わたしの体の心配は・・・しなくてもいいんですよ?」




