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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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163話 魔女になった俺

 ・・・俺が『魔女』になったって?




 師匠は何を言ってるんだ?




「話が見えねえんだが?つまり俺もシアやビビと同じになったって事か?」


「うん、一言で言うとそういう事だね」


「俺は男だぞ、何で魔女になれるんだ?」


「厳密には『亜魔女』だけどね。魔女の子孫で適性が高ければ、あの『柩』は性別に関係なく魔女の能力を引き出してしまうみたいなんだよ」


「だが俺は背中に魔法陣を描いたりしてねえぞ」


 シアやビビ、それに巫女たちは背中に『柩』を使うための魔法陣が必要だったよな?


「あの魔法陣は『柩』と繋がりやすくするための触媒だったんだよ。ゲンの場合は魔女の適性が極めて高かったために、シアちゃんと『巫女』の女の子を経由して『柩』と繋がっちゃって覚醒しちゃったんだね」


 そんなんで発動しちまうのか?

 うっかり『柩』の中に入るのは危なかったんだな。


「もしかして、俺も記憶を失うところだったのか?」


「ゲンの場合は魔法陣を使って強制的に『柩』を発動させたわけじゃないから大丈夫だったみたいだね。なるべくしてなったってところかな?」




 ・・・結果的に問題無かったが、結構危ない事してたんだな。



「とにかく、ゲンとヒナちゃんは表向きは『上級魔法士』って扱いになるから『上級』の魔力をコントロールできるようになって『上級魔法士』の試験に合格するまで学院に通わないといけないんだよ」



 ・・・またそうなるのか?


 せっかく頑張って『中級魔法士』試験に合格したってのに、もう一度やり直しって事か。




「あれ、そうなるとシアも一緒だよな?」


「シアちゃんの場合はちょっと特殊なんだよね。シアちゃんは、既に『魔導師』になるための修行をかなり高いレベルまで進めていたから、魔力量が『上級』になった時点で、申請だけすれば無試験で『上級魔法士』の資格が貰えるんだよ」


「そうなのか?シア」


「はい、今までは魔力量が足りないから発動はできませんでしたが、上級魔法の制御に必要な知識と制御技術は既に習得済みなんです」


 そうだよな、上級魔法の魔法陣は殆んど覚えているわけだから。


「一応、上級魔法の発動を然るべき役職の者が確認しないといけないんだけど、魔法庁の職員で『中級魔導師』のレンとルナがここに来てるから、彼らがここで確認すればそれで済んじゃうんだよ」


 そうか、シアは試験勉強しなくてもいいのか。


「でもシアも一緒に学院に戻るんだろ?」


 俺はシアに尋ねた。




「いいえ・・・わたしは、しばらくこの国に残ります」




「・・・そうか・・・『巫女』達のケアがしたいんだな?」


「そうです。これから巫女だった少女たちが次々と目覚めるはずです。ここにはわたしにしか出来ない仕事がたくさんあるんです」



 やっぱりな・・・シアはそうする気がしてた。


「じゃあ、俺も残る」


「ゲン、それは出来ないよ」


「なんでだよ師匠」


「ゲンは『上級魔法士』の資格を取るまで国外に出られないんだよ。だから今すぐ帰らないといけないんだ。ヒナちゃんと一緒にね」


「それってつまり、しばらくシアと会えないって事か?」


「・・・そうなってしまいます」


 ・・・なんて事だ!こんなところでシアと離れ離れになっちまうとは!



「でも、少女達のケアが終わったらすぐに学院に戻ります!」


「そうだな、ずっと会えないってわけじゃねえもんな」


「はい、わたしだってゲンと離れていたくないです。一日でも早く戻ります!。本当は一緒に帰りたいんです・・・でも・・・」


 シアの性格からして、困っている人がいて、自分が助ける事が出来るなら放っておけるわけねえよな。


「俺だってシアと一日でも離れていたくねえ。最速で試験に合格して戻って来るからそれまでの辛抱だ」


「ゲン・・・上級魔法士試験は一番早くても三カ月後だよ、それにその頃には剣術大会も控えてる」


 ・・・そうだった。本来の目標はそっちだった。


 次の剣術大会で上位の成績を残して『上級剣士』の試験に合格しねえとシアは他の誰かと結婚する事になっちまうんだった。


「とにかく、わたしは一日でも早く少女たちの治療を終わらせて学院に帰ります!」


「ああ、そっちの方が早そうだな」




 シアとしばらく会えないのは辛いが、これもシアと共に生きる未来をつかみ取るためだ。




 その後、俺達は、事の顛末をココさんやキア、それにギルに説明した。


 『魔女』に関する事は関係者以外には詳しい事は話せないので、当たり障りないところまで説明して納得してもらった。


「そうか、少女たちが助かったのは本当に良かったな!でもシアはこの後が大変だな」


「はい、ココさん。でもわたしに出来る事があるなら出来る限り助けてあげたいんです」


「あたいも出来る事があれば手を貸してやりたいんだが、この後別の依頼が入ってるんだ」


 そうか・・・ココさんともこれでお別れか。

 すっかりパーティーメンバーとして馴染んでいたからなんか残念だな。




「僕も残って女の子たちのために何でもしてあげたいんだけど、ゲンと一緒に学院に戻って『上級剣士』試験の準備をしないといけないからね。本当に残念だよ」


 ・・・キアはこう言っているが、実はキアはあの後ヒナのお見舞いに行って、どうやらヒナかわいらしい笑顔にやられて一目ぼれしてしまったらしい。


 ヒナが学院に入ると聞いて自分も学院に戻る事にしたのだろう。


 ・・・って言うかキア、美少女に会うと100パーセント一目ぼれしてるよな?




「僕も目覚めた少女達の愛を受け入れるためにここに残りたかったのだが、残念ながら別の依頼が入っているのだよ。シアさんの手助けがしたかったのだが本当に残念だ」


 ・・・・いや、ギルが残っていたらせっかく助けた少女たちが再びギルの餌食になってしまいかねない。


 それに俺の居ないところでシアに何をするかわからねえからな。


 ギルに予定が入っていて本当に良かったよ。




 ・・・しかし、一緒に戦ってきた仲間と離れるのは、やっぱりなんか寂しいもんだな。


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