143話 魔女の覚醒
「他の連中は全て制圧しました。残るは彼女だけです」
ビビは、瀕死の術者と、気を失ったユナさん以外の、他の術者たち全員を倒していた。
それで俺の方へ加勢に来られたのか。
おかげで命拾いした。
しかし・・・ここまでやってもだめだったか・・・
「とんでもない化け物を生み出してしまった様ですね」
「化け物って言うな」
「魔力量はわたくしを少し上回る程度ですが、魔法知識と魔法操作技術が異常です。それに加えて格闘技まで身に付けているなど・・・既に本物の魔女以上の化け物では無いですか?」
「・・・・・本物の魔女の強さは、こんなもんじゃねえだろ・・・」
何しろ『勇者』に匹敵する強さだからな。
「・・・やはり、あなたは本物の魔女に会った事があるのですか?」
「・・・そんなわけねえよ・・・」
「まあ、いいでしょう。それよりこの状況をどうするかです」
現在、シアの連続魔法攻撃に対して、ビビが絶え間なく結界を張り直し続ける事で均衡を保っている。
どちらかの魔力が尽きればそこで勝敗が決まるのだが、さっきの話だとシアの方が魔力量が多いらしい。
確かに俺の感知しているシアの魔力量からしても、まだ相当な魔力が残っているはずだ。
「このままじゃ時間の問題だろ?」
「わたくしに一つ策があります」
「打開策があるのか?」
「彼女に催眠魔法を施した術者は、既に意識がありません。彼女は最後に与えられた命令の範囲内で行動しているにすぎません」
「つまり、どういう事だ?」
「現在与えられている命令では判断の出来ない状況が発生すれば、彼女はフリーズするという事です」
シアが与えられていた命令は俺達二人を倒す事、ビビは生け捕りで、オレは殺しても構わない。
それと『上級魔法』の使用禁止だ。
「だが、シアは命令以外の事には一切無関心だ。俺を見ても表情一つ変えねえし、俺の声にも一切反応が無い」
「催眠魔法は魔法をかけた本人の命令には絶対服従となりますが、それ以外はある程度自分で判断して行動が出来ます。最低限の自己防衛行動などは阻害されません。彼女にとって重度の危機低状況になれば、命令が無くとも自分の判断で行動するという事です」
「しかし、シアに強いダメージを与える攻撃手段が残ってねえ」
「危機的状況とは、何も身体的な危険だけではないのですよ」
「能書きはいいから早く結論を言え!」
「つまり・・・こういう事です!」
ビビはいきなり俺の唇に唇を重ねた。
即ち、キスをしたのだ!
・・・こんな時に何してやがる!
俺はビビを振り払おうとしたが、ビビは俺を強く抱きしめて、更に濃厚に唇を押し付けてきた。
ビビも強力な身体強化を使える。
がっちりホールドされた俺は振りほどく事が出来ない。
体を密着させられて強く抱きしめられたせいで、ビビの胸や体が強く押し付けられ、その感触が伝わってくる。
・・・思わず、先日見たビビの裸体を思い出してしまった!
・・・ってそんな場合じゃねえ!
シアを何とかしなきゃいけない時に何を考えているんだ!
俺はビビと濃厚なキスをした状態のまま、横目でシアの方を確認した。
・・・シアは魔法攻撃を止めて沈黙していた。
・・・そして・・・鬼の形相で俺達を睨んでいた!
次の瞬間・・・シアは俺達の目前に接近し、ビビを思いっきり殴り飛ばした!
ビビは俺から引きはがされ、そのまま壁に激突した。
シアは即座にビビの跳ばされた方へ移動し、ビビに第二撃を入れる。
そのままシアは壁にめり込んだビビに連撃を入れ続ける。
しかしビビも、気を失ってはいない様で、防御の体勢をとって、シアの攻撃に耐えつつ、シアに魔法で反撃を開始した。
シアがビビに魔法攻撃をしないのは、殺すなという命令を遂行しているからなのだろうか?
しかし、強力な身体強化とココさん仕込みの格闘術で、着実にビビにダメージを入れている。
シアの強烈な攻撃を受けて、ビビのローブは次第にズタズタになって行く。
一方でビビもシアの攻撃を防御しつつ、『ウィンドスラッシュ』の猛攻でシアに攻撃を入れている。
シアの方は大したダメージにならないと判断したのか『ウィンドスラッシュ』の猛攻は甘んじて受けながらビビへの攻撃に意識を集中している様だ。
表情は相変わらず、シアらしからぬ鬼の形相だ!
シアの方も『ウィンドスラッシュ』の猛攻を受けて白い貫頭衣はズタボロになり、あちこち素肌が見えている。
しかしそんな事はお構いなしにビビへの攻撃を続けていた。
・・・女同士の争いって・・・怖え!
ついそんな事を考えてしまった。
「ちょっと、あなた!ボケっと見てないで早く彼女を何とかしなさい!」
「何とかってどうすればいいんだ!」
「今みたいに、彼女の精神に強い衝撃を与えればいいんです!」
シアの精神に強い衝撃って・・・どうすればいいんだ?
シアがパニックになるほどの衝撃といえば・・・
ええい!迷ってる暇はねえ!
俺はシアに向かって駆け出した!
シアは術者からの命令がと強烈な嫉妬心とが相まって、ビビへの攻撃に集中している。
接近する俺にはまだ気づいていない。
そして俺は、走りながら装備を脱ぎ捨て上半身裸になった。
シアの背後から一気に距離を詰める!
「シア!すまん!」
俺はズタボロになったシアの貫頭衣に手をかけ一気に引きちぎった!
貫頭衣一枚しか身に付けていなかったシアは全裸になった。
自分が全裸になった事に気が付いたシアは、一瞬動きが止まった!
その隙をついて、俺はシアの正面に回り込み、シアを抱きしめてキスをしたのだ!




