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【9章開始】勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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140話 第八階層

 ビビの魔法で氷の彫像と化した『竜』は、俺の『ストーンランサー』の最後の一押しで粉々に砕け散った。


 砕けた氷の中から大きな魔結晶が転がり出し、氷の破片は蒸発を始めた。


「やったよ!『竜』を倒したよ!これで終わりだよね?」


 キアが不穏な発言をした。




 すると案の定、部屋の周囲から『下級の魔物』が次々と現れた。

 中には『中級の魔物』も混ざっている。


「『上級の魔物』を倒したら終わりじゃないのか?」


 俺はビビに詰め寄った。


「『上級の魔物』を倒したら扉が開けられるというだけです。その後魔物は無数に出てきます」


「だからそういう事は先に言え!」


「とにかく扉に急ぎましょう!」


 俺とビビは、第八階層の聖域に繋がる扉に駆け出した。


「魔物はあたいらで食い止める!ゲンは先にけ!」


「すまない、ココさん!」


 ココさんの好意に甘えて、俺とビビは魔物を避けながら扉に向かう。

 俺達の方に魔物が来ない様にココさんたちが食い止めてくれていた。



「では、扉を開きます」


 ビビが扉に魔法陣を描き、解錠の呪文を唱えると扉が開いた。

 扉の先には通路が続いていた。


「さあ、この先が聖域です」


「ゲン!頼んだぞ!」


 俺とビビは扉の先の通路へ駆け込んだ。


 通路をしばらく走ると更に扉があった。


 ビビが解錠の魔法で扉を開けると、そこは真っ白な空間だった。


「ここが・・・聖域・・・なのか?」


「はい、正確には第八階層の聖域の地面の下、『棺の間』と呼ばれる場所です」


 なるほど、何も無い部屋の中央に棺の様な石の箱が置かれている。

 箱には何が複雑な紋様が描かれているが、魔法陣のようなものだろうか?


「まだ奴らは来ていないようですね。ここで待っていればいずれ奴らがシアという少女を連れて来るでしょう」




「へえ!こんなところに隠し扉があったなんてね」



 背後で声がした!


 振り返るとユナさんが立っていた。


「ユナさんも来たのか?他のみんなは?」


 するとユナさんが扉を閉めてしまった。


 扉はぴったりと閉まると、白い壁と一体となって、どこに扉があったのか分からなくなってしまった。


「なるほどね、これじゃわからなかったはずだわ」


「ユナさん?何をしている?」


「ふふふ、ありがとう。ゲン、脱走した『巫女』を連れ戻してくれて」


「何を言ってるんだ?ユナさん」



「あなた・・・やっぱり奴らの仲間でしたね?」


 ビビがユナさんを睨みつける。


 ・・・どういう事だ?ユナさんが、あいつらの仲間?




 そして・・・ビビはここから脱走した『巫女』って事か?




「どういう事だ!ユナさん!」


「そこの偽物の魔女の言う通りよ。各国を回って『巫女』の候補となる少女の情報を集めるのがあたしの役目」


「冒険者じゃなかったのか?」


「冒険者ってのも本当よ。この仕事を遂行するのに冒険者って立場が一番都合がいいのよ」


「ゲン、あなたには感謝してるわ!『巫女』の素体集めに協力してくれて。この前もあなた達がいなければ『巫女』の候補をその女に奪われてしまう所だったわ」


 やっぱり俺はこいつらに手を貸しちまってたのか!


「それに最高の素体を連れて来てくれたわ」


「シアの事か!シアはどこにいる?」


「彼女は初めて会った時から目を付けていたのよ。『巫女』としての素養も抜群に高い上に、魔法の技能をあそこまで身に付けた少女なんて滅多にいないからね」


「俺達に近づいた目的はシアだったのか?」


「ええそうよ。ココにも目を付けてたんだけど、実年齢が結構高いとはね。年齢が高くなると『巫女』として覚醒出来無くなるのよ」



「彼女の話に乗ってはだめです!」


 ビビが話を遮った。


「これはおそらく時間稼ぎです」


「時間稼ぎだって」




「ご名答!久しぶりですね。逃亡した『巫女』」


 いつの間にか『棺』のそばには例の術者たちが立っていた。


「貴様ら!シアをどこへやった!」


「どこも何も・・・彼女でしたら先ほどからあなたの目の前にいましたよ」


 術者は棺を指さした。


「何だって!」


「やはりすでに『棺』に納められていましたか」



「ユナ、時間稼ぎご苦労様です。おかげで施術を完了させる事が出来ました」


 術者はユナさんに声をかけた。



「どういう事だ!」


「我々の行動は筒抜けだったんです。先回りしたつもりが、その前にシアという娘はこの棺に納められていたのです」




「それじゃ手遅れって事か?」


「はい、既にあの少女は『巫女』として覚醒してしまった様です」




「そんな・・・シアが・・・あの少女たちの様に・・・自我を失ってしまったって事か?」




「喜びなさい。あなたの仲間の少女は、他の失敗例とは違います。そこの脱走者に続き二人目の成功例・・・いえ、それ以上の成功例となりました」



「なん・・・だと」



 すると・・・棺の中から、シアが姿を現わした。



 シアはゆっくりと起き上がり、棺の中で立ち上がった。


 シアは他の『巫女』が着ていたような白い貫頭衣を着ている。




「シア!無事か!」




 俺はシアの方に駆け出した。




 しかし、途中で強烈な風圧で弾き飛ばされたのだ。



 体勢を立て直してシアの方を見ると、シアは冷めた目で俺を見つめていた。


「どうしたんだ!シア!」


 再びシアの方に駆け寄ったが、やはり風圧で弾き飛ばされた。




「ただし、我々の操り人形として・・・ですけどね」



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