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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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139話 裏口の門番

「この扉の向こうにシアがいるんだな?」


「いえ、まだです。この扉の中は強力な魔物で守られています。入ったらまず魔物を倒さなけれななりません。第八階層の聖域はその先です」


「なんだって!それを先に言え!」


 裏口なんて話がうますぎると思ったが、そういう事か。


「第八階層は聖域のみの階層で、他の階層の様に広くは有りません。しかし、聖域の奥に隠し部屋があり、上級の魔物が守護しているのです」


「上級の魔物か?何とか回避してすり抜ける方歩は無いのか?」


「隠し部屋は中に入ると扉が閉まり、上級の魔物を倒さないと再び扉が開かない様になっています。通り抜けるには上級の魔物を倒すしかありません」



 ・・・つまり上級の魔物が『扉の鍵』って事だ。


「しかし、まだ第八階層の『棺』は空のはずです。棺に『巫女』が納められていなければ魔物はある程度弱体化しているはずです」


「なら迷ってるひまはねえ、さっさと上級の魔物を倒して先に行くぞ!」



「おう!あたいに任せとけ」


「ようやくこの僕の実力を発揮する時が来たようだね」


「あたしも今度こそシアさんを取り戻さないと」


「魔物が弱体化してるならさっさとやっつけちゃおうよ!」


 みんなやる気みだいだな。



「では扉を開きます」


 ビビが手をかざすと金属の扉に魔法陣が浮かび上がり、重そうな扉は自ら開いていった。


「扉は二重になっています。中に入ってください」


 全員が中に入るとビビは今の扉を閉めた。


「次が最後の扉です。中には門番の魔物が待っています」


 ビビが次の扉に手をかざし、同じ様に魔法陣を浮き上がらせると扉が開いた。


「中に入ってこの扉が閉まると魔物が襲い掛かってきます」



 扉の中に入ると、巨大な魔物が眠っているかの様に寝そべっていた。


 後ろ向きの様だが、俺達が入って来たのが裏側からだからだろうな?



「では扉を閉めます。締まりきると魔物が目を覚まします。わたしが魔法で動きを拘束しますのでその隙に攻撃して下さい」


「おう!わかったぞ!任せとけ!」


「僕の腕の見せ所だね!」


 ココさんとギルはやる気満々だな。




 そして、ビビが扉を閉めると・・・魔物が目を覚ました。




 魔物は体に沿わせていた長い首を持ち上げ、こちらを振り向いたのだ。


 それからゆっくりと体をこちらに向けている。


 蜥蜴の様な全身に、蝙蝠の様な羽根、全身は鱗に覆われ大きな爪と鋭い牙を持つその姿は、おとぎ話に出て来る『竜』そのものだった。


「何だこれ!『竜』じゃないの?」


「今までに竜っぽい魔物は見た事があるが、ここまで完璧な『竜』は初めてだな」


「魔物を結界に閉じ込めました!今のうちに攻撃を!」


 ビビが叫んだ!


 全員が同時に動いた!


 そして『竜』も同時に動いていた。

 その巨体からは想像もつかない速さだった。


 瞬時にビビの結界を破壊し、ココさんの方へ急接近していた。



 ココさんは咄嗟に『竜』の鼻っ柱を殴りあげていた。


 『竜』は頭部を斜め上に捻じ曲げられたが、即座に体勢を整え、再びココさんに迫る。


 しかし、ビビが張り直した結界に阻まれる。


 ココさんはその隙に素早く移動して、既に『竜』の視界にはいなかった。


「今度は結界を三重に張っています!」


 ビビはさっきより結界を強化した様だ。


 だがそれも数秒しか持たなかった。


 三重結界を破壊した『竜』は、今度は俺の方に迫って来た。


 俺は剣で竜の右手の爪を切り落とし、口の攻撃を躱して左腕に切りつけて『竜』の視界から外れた。


 その時には、ビビが再度結界を張っている。


「今度は五重に結界を張っています。これは・・・おかしいですね。この『竜』はこれほど活発ではなかったはずですが・・・」


 その五重結界もすでに破壊されそうだ。


 今度はギルを見つけてそちらに向かっている。


 ギルは『竜』の頭に飛び乗り、後頭部から首に向かって『竜』の上を走りながら首周りに切り傷を増やしていく。


 俺も同じ様に、『竜』に飛び乗って首に傷を付けていった。


 鱗はとんでもなく硬いが、俺の剣なら傷を付ける事が出来た。

 おそらく普通の剣では傷を付ける事は出来なかっただろう。


 ギルの剣も、何か特殊な剣なのだろう。




 別の場所では、キアとユナさんも攻撃を仕掛けていた。


 それぞれ、多少なりとも『竜』にダメージは与えているが巨体に対して小さな傷しか付けられない。


 そして『竜』も黙っているわけでは無い。

 前足や尾を振り回して俺達に反撃してくる。


 反撃が来ると俺達は一旦『竜』から離れ、ビビが結界で時間稼ぎしている間に体勢を立て直す。



 その繰り返しになっている。



「少しづつダメージを与えてるけど、これじゃいつまでかかるか分からないぞ」


 ココさんの言うとおり、倒すのにかなり時間がかかりそうだ。



「なあ、ビビ、こいつを一撃で倒せる魔法とかないのか?」


 師匠の『グラビティキャノン』なら一撃なんだが・・・


 ・・・この第八階層ごと消滅するよな?


「無い事は無いですが、発動に時間がかかります」


「なら、オレの魔法で、こいつを一旦足止めして時間を稼ぐ。その間に魔法の準備をしてくれ」


「わかりました。そうしましょう」


「よし!みんな!俺とビビが魔法を発動する時間を稼いでくれ」


「おう!わかったぞ」


「僕に任せてくれたまえ!」



 ココさんたちに時間を稼いでもらっている間に、オレは『ストーンランサー』の魔法陣を描き始めた。


 ビビも同時に準備を始めた様だ。

 ビビの体がうっすらと光っているが、何をしているのかはわからない。


 俺は『ストーンランサー』の魔法陣に出来るだけ魔力を注ぎ込む。


 ココさんたちが『竜』に絶え間なく攻撃を続けて気を引いてくれている。


 しかし、『竜』は俺の魔法陣に気が付いたようだ。

 俺の方に向かってきた。


 よし!今だ!


「『ストーンランサー』」


 俺は魔法を発動し、『ストーンランサー』を『竜』に向けて放った!


 通常の『ストーンランサー』ではない。対『上級の魔物』用の特別仕様だ。


 巨大な石の槍は高速で回転しながら『竜』の胴体に突き刺さった!


 やはり『竜』の体は硬く、石の槍は途中までしか刺さっていない。



 だが・・・それが狙いなのだ。


 今回の『ストーンランサー』は貫通力よりも推進力を強化してある。


 『ストーンランサー』はそのまま『竜』を押し戻し、部屋の壁に押さえつけたのだ。


 『竜』は必死にもがいているが、『ストーンランサー』の推進力はまだ残っている。


 俺は『竜』に押し戻されない様に、必死に『ストーンランサー』を制御する。



「まだか!ビビ」


「あと少しです」


「こっちはそろそろ限界だ」


「できました。発動します」



 ビビは無言で『竜』に手をかざした。




 そしてビビからとてつもない魔力が放出されるのを感じた。




 次の瞬間、『竜』は巨大な氷の彫像と化していたのだ。


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