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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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138話 迷宮の裏口

「どういう意味だ?」




「いえ、何でもありません。無駄話はこれくらいにして先を急ぎますよ」




 ・・・なんかはぐらかされたな。


 まるで助けに行かなかったらシアが魔女になってしまう様な言い方だったが・・・




 ・・・まさかな?




 俺達は一日歩き続けて山の峠までたどり着いた。


「今日はここで休みましょう」


 ビビは魔法で雪に穴をあけ、雪洞を作った。


 やはり、魔法陣や呪文の詠唱を使わずに魔法を発動させている。




「ここから山を下ったところにある洞窟の奥が第八階層への抜け道になっています。今夜はここで体力を回復しましょう。明日は奴らとの決戦になります」


 


 俺達はビビの作った雪洞で睡眠をとった。


 雪洞の中は思った以上に温かく、雪山の上だという事を忘れてしまいそうだった。

 これも魔法で温かくしていたのだろうか?




 翌朝は簡単な保存食を食べて、出発した。



「これじゃ食い物が足りなくて十分に力が出せないぞ!」


 ココさん用にかなり多めに持って来ていたが、ココさんはそれでも足りなかったらしい。


「なあ、あんた魔女だったら魔法で食べ物とか出せないのか?」


 ココさんがビビに聞いていた。


 師匠だったらこんな時、食材を現地調達してきて、旨い料理を用意してくれる。

 こんな、生き物がいなそうな場所でも、どこからともなく獲物を捕ってきてくれるのだ。


「そんな都合の良い魔法などありません」




「魔法で何でもできるなら、昨日の夜はふかふかのベッドも出してくれたら良かったのに!」


 ユナさんもこういうところはわがままだな。


「寒さをしのげただけでも感謝して欲しいものです」




「それよりもさ!魔女だったら僕たちを一瞬で第八階層に移動させたり出来ないの?」


 キアも魔女に尋ねた。

 師匠だったら転移魔法が使えるからな。


「そんな都合の良い魔法があったらとっくに使ってます」




「君がもし、本当に魔女だったら、魔法で僕を虜にしているのではないかな?・・・いや、既に僕は君の虜かもしれないね?」


 ギルが訳の分からない事を言い始めた。


「そんな魔法があってもあなたには使いません!」




「なあビビ、あんた、剣の達人だったりするのか?」


「それ!もう魔女関係ないですよね!」


 ・・・話の流れで俺も何か質問した方がいいかと思って聞いてみたんだが・・・


「いや、魔女って剣も鍛えるもんなのかと思ってな」


「なんでですか!あなたの偏った魔女の知識はいったいどうなってるんですか!」


「単に疑問に思っただけだ」



 しかし、こいつ・・・からかうと結構面白いな。




 そんな話をしている内に、雪山を下って洞窟の入り口にたどり着いた。


「この洞窟の奥です」


 俺達はビビに続いて洞窟に入っていった。


 しかし、少し進むと洞窟はすぐに行き止まりになった。



「あれ?行き止まりだよ?」


「結界が張ってあるのです。今解除します」



 ビビが手をかざすと洞窟の突き当りに、さらに奥へと続く洞窟が現れたのだ。


「結界と認識阻害魔法で隠してあったのです」



 ・・・レンが使ってるやつだな。



「へえ、すげえな、こういう魔法も使えるんだ?かなり高度な魔法なんだろ?」


「魔女ですから当然です!」


 ビビはちょっとだけ自慢げだ。




 ・・・こいつ・・・ちょろいかもしれねえ。




 洞窟の奥は、複雑に枝分かれしていたが、ビビは迷わずに進んで行った。


「なあ、どうして正しい道がわかるんだ?」


「魔法で周囲の地形を読み取っています。それに迷宮の方角も把握しています」


「へえ、いつの間にそんな魔法を使ってたんだ」


「洞窟に入った時からです」


「そうか、魔法陣や呪文の詠唱がねえからわからねえんだな」


「ええ、魔女ですから!」


 ビビはどや顔で答えた。


「魔法陣無しで魔法を発動するってどうやってんだ?」


「頭の中で魔法陣をイメージして発動すればいいのです」


「そんな事が出来るのか?」


「もちろん魔女でなければできません」



「なるほどな、それは便利だろうな」




「わたくしはあなたの方が不思議です。剣士なのにその魔力量はどういう事ですか?」


 今度はビビが俺に聞いてきた。


「ああ、オレは『中級魔法士』の資格も持っている」


「それだけの魔力を持っているのなら、剣士ではなく魔法使いを目指せば良かったのではないのですか?」


「俺は世界一の剣士を目指してるんだ。たまたま魔力量が多かったってだけだ」


「それでしたら、その魔力量を身体強化に充てればいいのでは?」


「俺は身体強化が使えねえんだ。かといって魔力を使わねえのももったいねえからいざという時の大技に特化して魔法の腕を磨いてたんだ」


「なるほど・・・それであのような桁外れな威力の攻撃魔法を・・・しかし通常の中級魔法ではありませんでしたよね?わたくしの『結界』を打ち破るなど、貫通力だけなら上級魔法に匹敵する威力では無かったでしたか?」


「さあ?魔力量のせいじゃねえのか?」


 師匠がカスタマイズした、対『上級の魔物』用の魔法陣って事はごまかしておいた。



「それだけでは無かった気がしますが・・・まあ、いいでしょう。次に同じ攻撃を受けたとしても、わたくしにはもう通用しませんから!」


「すでに対策済みって事か」


「ええ、あの時は油断しただけです」


「できれば、ビビとはもう戦いたくはねえけどな」




「あなたもですが、あの、シアという娘、魔力量はともかく、あの年であれだけの魔力制御技術はどういう事ですか?見た目より年上という事は無いですよね?」


「まさかな、それこそ魔女でもあるまいし。シアは単に魔法が大好きで努力家ってだけだ。シアがこれまでやってきた魔法の修行は半端じゃねえ。それに実戦経験も相当なもんだ」


 ビビは少し考えこんでいた。


「なるほど・・・それによってさらに適性が上がっていたという事ですか・・・」


「適性ってのは『巫女』の適性の事か?」


「ええ、普通は十代前半であそこまで熟練した魔法使いはいません。他の巫女は、生まれつき魔力量が多いだけにすぎません。魔法の修行により『巫女』の適性が向上したとすると、奴らにとっても有益な情報になってしまいます。やはり何としても阻止しないと!」


 ・・シアはこれまでの『巫女』と違うって事か?

 


 そんな話をしながら洞窟の中を進んでいたら、目の前に金属製の大きな扉が見えてきた。




「扉が見えました。あの向こうが第8階層です」


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