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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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136話 自称魔女

 フードを外した魔法使いの顔は、旅の途中で遭遇した盗賊団のボスの顔だった。


 目と髪の色は、前に見た時の黒目黒髪ではなく、この国でよく見かける銀髪に紫がかった青い目だったが、この顔は間違いない。


 俺達は全員、瞬時に剣に手をかけ、臨戦態勢をとった!




「ふふっ、前の村では煮え湯を飲まされましたが、あの娘が不在で、わたくしに勝てるつもりですか?」


 ・・・そうだ、あの時はシアがこいつの攻撃魔法を全て防いでいてくれたから、俺達の攻撃がこいつに届いたのだ。


 シアがいない状況で戦えばこちらが全滅するかもしれない。


「わたくしとしては、この場で全員を打ちのめしても構わないのですよ?」


 そして『自称魔女』は俺を睨みつけた。


「特にお前です!お前がわたくしにした様に、全裸にひん剥いて、体の隅から隅まで舐め回す様に視姦した挙句、徹底的にその体をいたぶって、もっ、弄んで差し上げますわ!」


 ・・・『自称魔女』は自分で言いながら顔が真っ赤になっていた。


 そんなエロい目で見ていたわけでは無いんだが・・・




「なんだ、おまえもゲンの子供が産みたかったのか?それだったらシアとあたいの次だぞ!順番はちゃんと守らなきゃだめだ!」


 ・・・ココさん、完全に的外れな事を言っている。

 そもそもココさんと子供を作るつもりは無いからな。


「ちっ!違います!なっ、何を馬鹿な事を!あっ、あくまでこれは復讐です!」


 ・・・動揺して声がひっくり返って噛みまくってるが・・・




「ああ、みんな待ってくれ、この人は今は敵じゃない!むしろ君たちに救いの手を差し伸べに来たんだ!」


 ギルが俺達の前に立ちはだかった。


「信用できるか!ギル、あんたの事もそれほど信用しているわけじゃない」


「ひどいなあ、何度も死線を共にした仲なのに」




「どういう事ですか?お前の仲間では無いのですか?」


「こっちはそのつもりだったんだけどね」


 ギルはポリポリと頬を掻きながら、『自称魔女』と何か言い合っている。




「まあいいでしょう。では、そのままでいいですから、まずはわたくしの話を聞きなさい」


 『自称魔女』は語り始めた。


 まだ少し頬が赤いが・・・





「お前たちも『巫女』の様子は見ましたね?」


「ああ、自我が無くなって、生贄の様に扱われていた」




「シアという娘は『巫女』にさせられます」




 ・・・そんな予想はしていたが・・・


「やはり・・・そうなのか!そもそも『巫女』とは何なんだ」



「・・・この国に伝わる秘術・・・人間の魔力量を強制的に増大させる特殊な魔法に関係します」


「やはり、魔法だったか」


「ただし、これは十代前半までの若い女性にしか効果がないのです。それも若い女性なら誰でもいいというわけでは無く、適性のある少女はごく少数に限られます。さらにその効果の度合いもバラバラです。その中で、特に高い魔力量を持つ事が出来た少女を『巫女』と呼んでいます」


「その『巫女』を地下迷宮に常駐させると魔物が無尽蔵に発生するという事だろう?」


「その通りです。よくご存じで」


「『巫女』は皆、自分の意志を待たない様に見えるがあれはどういう事だ?」


「この秘術は魔力の増大と引き換えに、人格や自我といったものを奪ってしまうのです。そして、ただ本能だけで行動する動物の様になってしまいます。そこで催眠魔法をかけて本能を抑制し操っているのです」


 ・・・シアが・・・あの、『巫女』の少女たちの様になってしまうのか!


「ああなってしまった彼女たちは、元には戻らないというのは・・・本当なのか?」


「ええ、精神の一部が欠損してしまいますので、元通りにはならないでしょう・・・ただ、この秘術に対して極めて適性が高い場合は、自我をを失わずに強大な魔力を得る可能性もあります」


「いずれにしても、そんな魔法をかけられる前に助け出さねえとな!」



「シアという娘はおそらく迷宮の第八階層に連れていかれたと思われます」


「そこに何があるんだ?」


「この地下迷宮は大昔に発掘された古代遺跡です。先ほどの秘術もこの遺跡から発見されたものです。この遺跡は魔物を人工的に発生させるために作られたものでした。そして、魔物を発生させるためには、強大な魔力量を持った人間を各階層の『聖域』と呼ばれる場所の『棺』の中に収める事によって、その魔力を増幅させ、魔物を発生させるための魔力をまかなう仕組みになっているのです」


 古代遺跡だったのか・・・


「秘術の施行は二段階になっていて、まず体に魔法陣を描き、それを発動する事によって、適性のある場合は、魔力量がある程度増大します。この時の魔力量の増加具合で、その人物の適性の度合いが読み取れます」


 ・・・魔力量が増大?



「・・・もしかして、シアは既に秘術の魔法がかけられていたのか?」


「おそらく、契約魔法と称して、施術させていた可能性があります」


 それで、魔力の回復が速くなっていたのか!


「そして、次の段階として、地下迷宮の聖域にある『棺』に入る事により、術が完全に発動するのです。」


「つまり、その前に助け出せばいいって事だな?」


「・・・そうなります」


「だが、どうして第八階層なんだ?」


「各階層の棺は、階層が深くなるほどその効果が大きくなるのです。シアという娘はかなり高いレベルで適性が出ていた様ですので、おそらく最大限に魔力が増加される第八階層に連れていかれる可能性が高いと見ています」


 ・・・なるほど、そういう事か。


「でも、どうやって第八階層まで助けに行けばいいのさ?」


 キアが尋ねた。


「正面突破しかねえだろ」



「・・・それは不可能です。おそらく入り口のゲートの通行資格が削除されているでしょう。ギルドまで行けたとしても地下迷宮に入る事は出来ません」


「・・・あんたには策がありそうだな?」


「・・・はい、第八階層へ直接つながっている抜け道を知っています」


「やっぱりな。それはどこにあるんだ?」



「この山の裏側に入り口があります」



「・・・ええっと、この山ってかなり高そうだけど、どうやって反対側に行くの?」


「もちろん山を越えます」


「ええっ!無理だよ!こんな険しい雪山を越えるの!」


「無理だろうが何だろうが、他にシアを助ける方法が無いなら俺はいく」


「もっ、もちろん僕だって行かないとは言ってないよ!」


「もちろんあたいも行くぞ!」




「ユナは無理しなくてもいいぞ!」


「いいえ、あたしも行くわ!シアさんには何度も助けてもらってるし、今回もあたしがしっかりしていればこんな事にならなかったんだから」


「そうか、それなら手伝ってくれ!」


 ユナさんもまだ体調が完全じゃないのに有難い事だ。



「もちろん僕も行くよ。姫を助けるのは騎士の務めだからね!」


 ギルも・・・一応戦力にはなるからな。




「では道案内をします」




「待ってくれ!結局あんたの事は何も聞いていないんだが?今の話をどこまで信用していいのか判断がつかねえ」



「・・・わたくしはこの迷宮で行なわれている事を終わらせたいだけです」



「・・・あんた、自分の事を『魔女』って言ってたが、本当の魔女じゃねえよな?」


「・・・まるで『本当の魔女』を知っているような口ぶりですね?」


「あんたは知っているのか?」


「・・・知っているも何も、わたくしは正真正銘、本物の『魔女』です」



 その瞬間、彼女の魔力が一気に膨れ上がった!




 そして・・・目と髪の色が・・・真っ黒に変わっていた。


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