表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
134/320

133話 迷宮の真相

 少女が沈静化した事を確認して、術者たちは戻っていった。



「大丈夫か?シア」


 シアはかなりショックを受けたようで、顔が蒼白になっている。


 それはそうだろう。

 真相は予想していた最悪のケースだった。


 この国の魔力源として、あの少女たちに何らかの処置を施し、無理やり魔力生成量を増大させていたのだ。

 そしてその少女を迷宮の中に常駐させる事により、魔物が無尽蔵に湧き出る仕組みになってた様だ。


 ただ、それも派生的な利用方法であり、本当の目的は・・・



 人工的に『上級魔法士』を作り出す事だったのだ。




 命令通りに動く『上級魔法士』を大勢そろえる事が出来れば、魔力供給問題は一気に解決する。


 迷宮で魔物退治などという回りくどい事をする必要すら無くなるのだ。



 ただ、そんな無茶な術がそう簡単に成功するはずもなく、ほとんどの場合、少女は精神が崩壊して魔力が暴走してしまうのだろう。


 地下迷宮でそれが起きると、結果として『上級の魔物』が暴走して、手が付けられなくなるので今回の『依頼』が必要になったのだ。




「・・・許せません!・・・こんな事!」


 シアはかなり強い怒りを覚えた様だ。


「ああ、そうだな。これはもう見過ごせない」


「そうだよ、こんな事で女の子がいなくなっていくなんて、世界の損失だよ!」


 キアは怒りの矛先がちょっとずれてるかもしれない。


「ゲン、今すぐここの少女たちを解放しましょう!」


「ちょっと待って!シアさん」


 ユナさんがシアを制した。


「おそらく相手は国家よ。やみくもに騒いでも捕まるだけ。もう夜も遅いし、まずは一旦戻って協力者を募って対策を考えましょう」


 さすがユナさん、建設的な意見だ。

 自分の意志で行動できない少女たちを解き放ってもどうにもならない。


「それでいいな?シア」


「・・・・・はい・・・わかりました」


 シアは拳を強く握ったままだ。

 本当はまだ納得できたないのだろう。




 俺達は廊下に人がいない事を確認し、隠れていた部屋を出て出口に向かった。


 足音を殺して慎重に階段のところまで移動し、階段を上っていく。


 階段を登り切った出口の扉は内側からはそのまま開ける事が出来た。




「ふう、なんとか無事に外に出る事が出来たよ!生きた心地がしなかったよ」


 キアは一気に緊張が解けた様だ。


「一旦宿に戻って、ココさんが帰ってきたら作戦会議だ。行くぞ!」


 俺とキアは宿に向かって歩き出した。


 少し歩いて、シアとユナさんが付いて来ていない事に気が付いた。




 振り返ると二人ともまだ扉のところにいた。




「どうした?シア」


 シアは下を向き、ユナさんは困った様な顔をしている。


「やっぱりわたし、あの子たちを助けてきます!」


 シアはそう言って階段を駆け下りてしまった。


「シアさん!待って下さい!」


 ユナさんもシアを追って階段を駆け下りる。




 ・・・何やってんだ、シア・・・


 俺もシアを追いかけようと扉の方に戻ろうとした。


 しかし、その時、扉がひとりでに閉まってしまったのだ!


「何!なぜ閉まった?」


 俺とキアが扉のところに戻った時には扉は完全に閉まっていた。

 開けようとしてもウンともスンとも動かない。


「あの魔法陣が無いとダメなんじゃないの?」


 解錠の魔法陣はシアにまかせっきりだったので俺は覚えていなかった。


 俺は扉をコンコンと叩いた。


「シア、戻れ。扉を開けてくれ!」


 あまり大きな音は出せないので小声で呼んだが返答はない。



「どうすればいいんだ?」


 力技で扉を壊したら連中に気づかれるだろう。

 そうなったらシア達が危険だ。


「ユナさんも一緒だし、大丈夫だよ。しばらく様子を見よう」


「そうだな、ユナさんに期待するか・・・」



 俺とキアは、扉が監視できる場所に身を潜め、シアとユアさんの帰りを待った。



 しかし、何時間待っても出てくる気配がない。


 さすがに遅すぎる。まさか、捕まったのでは?



「こうなったら正面から行こう」


 俺とキアは建物の正面、この国の魔法に関する管理を行なっている役所らしき建物の正面玄関に向かった。


 建物の入り口から入ろうとすると、警備兵に止められた。


「おい!こんな夜中に何の用だ!ここは関係者以外立ち入り禁止だ」


「地下の研究所に用がある!通してくれ!」


「おまえ、何を言っている。この建物に地下など無い!」


「そんなはずはない!間違いなく地下に研究施設があるはずだ!」


「わけのわからない事を言っていると憲兵に引き渡すぞ!」


 ・・・対外的には秘密の場所なのだろう。

 この警備兵も、本当に知らないかもしれない。


 それに、おそらく無理に正面から突入しても、あの地下の研究施設にたどり着く事は出来ないだろう。


「ゲン、一旦出直そう」


 キアの言う通り、ここは引くしかなさそうだ。。




「俺は、このまま扉の監視を続ける。キアは宿に戻ってココさんにこの事を伝えてくれ」


「うん、わかったよ。無理はすんなよ」


 キアはこの場を離れた。


 俺は、物陰に隠れ、扉が開くのを待ち続けた。



 ・・・だが、いつまで待っても、一向に扉が開く事は無かった。



 何度魔法で扉を破壊してやろうと思った事か・・・




 ・・・夜は更け・・・やがて明け方になった。




 そして・・・朝になっても、扉からシアとユナさんが出て来る事は無かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ