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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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131話 巫女の行方

 第五階層を攻略して地上に戻ってみると、案の定、祝賀会の用意がされていた。


 術者たちを見ると、ギルド長と何やらアイコンタクトをとっていた。


 そしてギルド長に冒険者たちの注目が集まっているのを確認すると、ギルドの入り口の方に向かって移動を始めた。


 俺達は予定通り、彼らの尾行を決行する。


 ココさんがいなくなるとさすがに目立つので、ココさんにはこの場に残ってもらう事にした。

 俺達の事を聞かれたら、三人は疲れたので先に宿に帰ったと答えてもらう手はずになっている。


 術者と『巫女』の少女がギルドから出て行ったのを確認した俺達は、同じ様に、皆の視線がギルド長に集まっている内に入り口の方に移動した。


 ただ、俺達はギルド長にも気が付かれたくないので、ギルド長からも見えない様に姿勢を低くして、冒険者たちの陰に隠れて入口へ移動し、ギルドの外に出た。



 無事に誰にも気が付かれずに外に出た俺達は術者たちの行方を捜した。


「ゲン、あそこです」


 シアの指さす方を見ると、丁度彼らが路地を曲がって行くところだった。


 足音を立てない様に気を付けながら、素早く移動し、路地の角から様子をうかがうと、更にその先の路地を曲がるところだった。


 最後の一人が角を曲がったのを見届けると、素早くその角へ移動し、見つからない様に彼らの行先を確認する。


 そうやって俺達三人は術者たちの後をつけて行った。


「この方角って、王城じゃないの」


 キアの言う通り、彼らはジグザグに進んではいるが、王城の方に近づいている。


 

 やがて王城の周辺の各省庁や国の施設の集まったエリアに来た彼らは、その中の一つの建物に入っていった。

 それも、正面入り口ではなく、裏側の人気のない路地にある通用口の様な扉からだ。

 



 その建物は・・・俺達の国で言うところの『魔法庁』のような場所だった。



「中に入って鍵を締めちゃったみたいだけど、どうする?」


 俺達は見つからない様にその様子を観察していた。

 何やら扉に魔法陣のようなものを描いたら扉が開いたのだ。


「先ほどの魔法陣は覚えました。同じものを描いてみます」


 シアは遠くから一目見ただけの小さな魔法陣を覚えているのか・・・



 周りに人がいない事を確認して扉に近づくと、シアは魔法陣を描き呪文を唱えた


「『アンロック』」


 すると魔法陣が光って扉から「かちゃり」と音がした。


「やった!すごいじゃん、シア!」


「さすがだな!」


「見たままやっただけですから!」


 解錠魔法がうまくいってシアも満足げだ。


 扉に手をかけると、問題なく開く事が出来た。




「何してるの?あなた達?」



 その時・・・背後から声をかけられた。



 俺達は背筋がぞっとした。


 誰もいない事を確認したつもりだったが、うかつだった!




 ゆっくりと振り返ると・・・・・そこにいたのはユナさんだった。


「なんだ、ユナさんか。びっくりしたよ!」


「びっくりしたよじゃないわよ!あなた達、何か危ない事やってるでしょ?」


「ユナさんこそ、どうしてここにいるんですか?」


「あなた達三人がこっそりギルドから出て行くのをたまたま見かけてね、気になったから後を追ってきたのよ」


 抜け出した事がばれていた。


「まあ、大体察しはつくけどね!あの『巫女』の少女の事が気になったんでしょ?」


「・・・はい、彼女たちがもしかしたらひどい目にあってるんじゃないかと思って・・・」


 シア、ユナさんに話すつもりか?


「『巫女』が行きと帰りで別人だって気が付いたんでしょ?」


「ユナさんも気が付かれましたか?」


「ええ、今回はあからさまに別人だったから。前回は気が付かなかったけど、前回もそうだった?」


「はい、第四階層でも行きと帰りで別人でした。これで合計4人の『巫女』を見ています。そしてみんな感情が無い様な、うつろな目をしていました」


「それで、後をつけてきたらここに入ったって事ね?」


「そうです!お願いです!ユナさんも手を貸してもらえないでしょうか?」


 ユナさんも巻き込む事になるが・・・大丈夫だろうか?


「・・・あたし達冒険者はクライアントの事情を詮索しないのが鉄則なのよ。そうでないと冒険者ギルド全体が成り立たなくなるの」


 確かにそれが鉄則だ。


 冒険者への依頼の大半が、国や貴族からの依頼だ。

 そして、国や貴族が裏でやましい事を全くやっていないかというと・・・残念ながらそんな事はあり得ないだろう。


 俺達の国はまだいい方だ。

 師匠がにらみを効かせているおかげで、国王や貴族も出来るだけ不正を無くし国民の事を第一に考えた政治をやってくれているが、それでも不正がゼロという事は無い。


 権力者が誰一人、私利私欲のために不正行為を行なっていないなどという国は、極めてレアだろう。


「・・・とは言っても、あたしも幼い少女たちが、ひどい扱いを受けているとしたら、さすがに黙っていられないわね。分かったわ!あたしも手を貸すわ。その方があなたたちのリスクも軽減するでしょう?」


 確かに、経験豊富なユナさんが手伝ってくれた方が心強い。


「そうと決まれば、まずはこの扉の中の調査ね!」




 ユナさんは先頭をきって、扉の中に入っていった。


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