13話 魔法士講座
シアと話をしながら歩いている内に『魔法士講座』の教室に着いた。
『剣士講座』の受講生は血気盛んな暑苦しいやつばっかりだったが、『魔法士講座』の受講生は落ち着いている物静かな奴が多いな。
しかし、俺がシアと一緒に教室に入った事に気が付くと、男子生徒たちからの妬みの目線が集中した。
(また、ここでもかよ?)
一瞬不穏な空気が漂ったが、幸いな事に『魔法士講座』は女子の方が人数が多く、俺とシアの周りには女子の壁が出来ていた。
「ねえねえ、シア。彼が噂の編入生?」
「はい、そうですよ」
「『剣士』って聞いてたけど『魔法士』なんだ?」
「『剣士』ですけど魔法も使えるそうです」
「へぇ、近くで見ると結構イケメンじゃない?」
「ずるいよ、シアが先に仲良くなったらあたしらに勝ち目無いじゃん」
俺とシアは女子から質問攻めにあっていた。
・・・女子に囲まれるのも微妙だった。
「はーい、皆さん。講義を始めますので静かにして下さい」
先生が教室に入ってきた。
「今日から編入生がこの講座に参加する事になりました。ゲンさん自己紹介お願いします」
なんか毎日自己紹介やってるな。
「ゲンだ。『剣士』を目指している。魔力がある事がわかったんでこの講座に参加する事になった。宜しく頼む」
「あっさりした自己紹介ですね。私はこの講座を担当する講師のミトです。宜しくねゲンさん」
「ああ、最速で魔法士になれるように宜しく頼む」
「ははは、すごいやる気ですね。では新メンバーも入った事ですので、今日は実習場で魔法の実習を行います」
実習場に移動していると、ミト先生が小声で話しかけてきた。
「ゲンさんは師匠に魔法陣の描き方を習ってるんですよね?」
?・・・『師匠』ってのは『師匠』の事であってるのか?
この先生、師匠よりずっと年上だよな?
「『師匠』ってのはララ先生の事か?」
「はいそうです。ララさんはわたしにとって魔法陣の『師匠』なんです」
・・・師匠、ほんとに何でも有りだな。
「それなら編入試験の受験対策で主だった中級魔法の魔法陣の描き方と、速く描くコツっての教えてもらったが・・・」
「えっ?ゲンさんは師匠の高速描画が再現できるんですか?」
「いや、師匠・・・ララ先生ほど速くは描けねえよ」
・・・つられて『師匠』って言っちまうじゃねえか。
それにしても師匠は何でもできるんだな? あれ?だけど師匠は『勇者』になる前は魔法が使えなかったんじゃなかったか?
「なあ、ララ先生は魔法が使えなかったんだよな?何で魔法陣が描けたんだ?」
「魔法陣を描くのが趣味だったって言ってましたよ?」
・・・趣味は料理じゃなかったのかよ?
そういえばレンが追及すると色々出て来るって言ってたな。
実習場は編入試験の時も使った場所だった。
周囲は頑丈そうな壁で囲まれており、無造作に岩があったり木が生えてたりする。
「では前回も練習した防御魔法『シールド』の発動練習を行います」
この間の試験で使ったやつだな。
「防御魔法は実戦において相手からの攻撃から身を守るために重要な役割を果たします。緊急時に咄嗟に発動できるかどうかで生死を分ける事もあります。まずは全員で誰が一番早く発動できるか競争してみましょう!」
競争って、子供かよ? まあ一度やった事があるから何とかなるか?
全員が間隔を開けて並んだところでミト先生が号令をかけた。
「では、始め!」
防御魔法の魔法陣は攻撃魔法に比べたら構成がシンプルだ。
師匠は一瞬で描き上げていた。
俺は師匠ほどではないが、これくらいなら数秒で描ける。
魔法の杖を掲げて目の前の空間に魔法陣を描き、描き上げた魔法陣に杖をかざして魔力を注入する。
意識を右手に集中すると魔力が流れ込む速度と量が変化するのがわかる。
急速に流し込もうとしたら一瞬目まいを起こしそうになった。
無理に魔力を流し込むと良くないらしい。
ある程度魔力を注入すると魔法陣が光り出し、回転を始めた。
魔法陣が励起状態になった頃合いを見て、呪文を唱える。
「「『シールド』」」
声が被った。
隣を見るとシアの魔法陣も、既に描きあがって励起状態になっていた。
そして、俺とシアの『シールド』は同時に発動した。
「ゲン、すごいです。初めての実習でわたしと同時に発動できるなんて!」
シアはえらい喜んでいる。
周りを見たら他の連中はまだ魔法陣を描いている途中だった。
そういえばシアは魔法士講座の首席って言ってたな。
「すばらしいです!ゲンさん!まるで師匠が魔法陣を描いている様でしたよ!」
ミト先生は何か妙に興奮している。
「だから、ししょ・・・ララ先生はこんなもんじゃねえ」
なんかややこしいな・・・
そうしているうちに他の連中の魔法も完成していった。
中には魔法が上手く発動しなくて再度魔法陣を描き直している奴もいる。
「そんなに難しいか?」
「普通はゲンみたいに素早く正確には描けないですよ。わたしもずいぶん練習しましたから」
「ララ先生の剣技について行くには、もっと速度と精度を上げなきゃいけねえからな」
それに比べたら魔法陣を素早く正確に描くなんて造作もねえな。
師匠の剣は見ないほどの高速にもかかわらず、髪の毛ほどのずれも無く正確だ。
剣聖のレベルは本当にとんでもねえ。
「はい、それでは次は攻撃魔法です。『ファイヤーアロー』の早打ち勝負です。向こうの岩に最初に当てた人の勝ちです」
「ゲンは『ファイヤ-アロー』は使えますか?」
「使った事はねえが魔法陣なら覚えてる」
「じゃあ大丈夫ですね」
「皆さん!用意は良いですか?」
「では、始め!」
俺は素早く魔法陣を描いて、魔力を注入した。
さっきので加減がわかったから、目まいを起こさないギリギリの速さで魔力を注入する。
「『ファイヤーアロー!』」
今度はシアより早かった。
俺の描いた魔法陣から炎の矢が現れ、目標の岩に向かって発射される。
(よし!俺が一番だ)
そう思ったが、矢はわずかに逸れて岩には当たらなかった。
「『ファイヤーアロー!』」
すると、隣でシアが魔法の矢を放った、
シアの矢は吸い込まれるように岩に命中した。
「はい!シアさんの勝ちです」
「ふふっ、どうですか?ゲン」
「何が違うんだ?」
「アロー系の魔法は放った後も軌道をコントロールできるんです」
「あの速さの矢をコントロールって難しくねえか?」
「はい、ですから制御できるように練習が必要なんです」
「そういう事か・・・」
ただ発動すればいいわけじゃないっていう意味がわかった。
簡単には『魔法士』の資格は取れねえな。




