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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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125話 第四階層攻略開始

 翌日、俺達は迷宮の第四階層攻略に出発した。


 冒険者12名、術者11名の大所帯だ。


 護衛対象が多いが、いざとなったら、シアが『結界』を張る事になっている。



「それでは皆さんのご武運をお祈りいたします」


 ギルド長は迷宮の入り口まで見送りに来てくれた。


 ・・・といっても、ギルドの中なので移動距離はゼロなのだが。




 第一階層は狭い通路がほとんどなので、術者たちを冒険者が前後で挟む形で進んで行く。


 ココさんが先頭で、護衛担当の俺達は、術者のすぐ近くにいた。


「ねえ、あなたお名前は?」


 シアが術者の少女に話しかけていた。

 同世代の少女の事が気になる様だ。


「・・・・・」


 しかし、少女から返事はない。


「ねえ、あなたはこの迷宮の事、詳しく知ってるの?」


「・・・・・」


 やはり返事はない。


「巫女に話しかけるな!」


 シアは術者の一人に怒られた。


 巫女って何だろう?


 巫女と呼ばれた少女は、うつろな目をしていて、意識がここに無い様にも見える。

 声をかけてもピクリとも反応しなかった事から本当に意識が無いのかもしれない。



「怒られてしまいました」


 シアが俺のところに来てしょぼんとしていた。


「巫女って何なんだろうな?」


「何でしょう? あの子、何だか自我が無いみたいでしたが・・・」


 精神系の魔法で操られている様にも見えるが、他の術者たちがいる前でその話はしない方がいいだろうな。


 魔物の発生を抑える処置に彼女が必要なんだろうか?

 まさか生贄って事は無いよな?



 さすがに上級冒険者がこれだけいれば、第一階層の下級の魔物などものともせず、順調に第一階層の中央にある少し広くなった場所に到着した。


 各階層には中心付近に少し広い空間があり、地面には円形に石畳が敷かれていた。これが『聖域』ってやつだろうか?



 術者たちは各階層の聖域でやる事があるそうで、聖域の中心で何やら魔法陣を描いたりして何かを確認していた。



 術者の確認作業はわりとすぐに終わって、俺達は次の階層へ向かった。



 術者たちは第二階層、第三階層でも同様に聖域で何かを確認していった。



 そして、第三階層から第四階層に繋がるゲートに到着した。



 術者たちはゲートのバリケードを撤去し、何かゲートに処置を施してゲートを作動させた。


 一つ目のゲートを抜けて、二つ目のゲートを通れば、ついに第四階層だ。


 いきなり『上級の魔物』に遭遇する事は無いだろうが、下級や中級の魔物も普通に出て来るらしい。




 ゲートの先の第四階層は森の中だった。


 第四階層は、第三階層と同じ、一つながりの巨大な空間だが、岩しかない第三階層と異なるのは植物が生い茂っている事だった。


 あらかじめ第四階層には植物が生えているという情報はもらっていたのだが、半信半疑だった。

 しかし、地下なのに本当に木が生えているのだ。


 日の光が当たっているわけでは無いのだが、天井からの光がほのかに温かい気がする。

 この光によって植物が育ったのだろうか?


「すごいです!魔法で日の光を再現してるんです!それで植物が育つなんて!」


 シアが興奮気味だ。


 しかし、これだけの植物を育てるためには常に日の光を発生させなければいけない。

 あるいは魔法で直接植物を成長させたかだが・・・いずれにしても膨大な魔力が必要な事に変わりはない。


 これだけの魔力を補うほどの魔物を常に討伐しているのか?




 そもそも、これだけの魔物が発生し続けるための魔力はどこから来てるんだ?




「この大量の魔力は・・・どこから供給されているのでしょうか?」


 ・・・シアも同じ疑問を抱いていた。


 知れば知るほどわからない事が増えていく感じだ。




「では作戦通り、護衛班は術者たちを護衛しつつ『聖域』を目指します」


 護衛班はユナさんにリーダーになってもらった。


「討伐班は、まずは護衛班のまわりで索敵しながら、『上級の魔物』を見つけたら、術者から引き離す様に誘導するぞ!」


 討伐班はココさんがリーダーだ。



 まずは聖域を目指して全員移動を開始した。


 


 聖域までは森の中の道を進む。


 木が生い茂っていて空が見えなくなると、なおさら地底という事を忘れてしまう。


 森の中を移動していると、それなりの頻度で、木々の間から下級の魔物が襲ってくる。


 そしてたまに中級の魔物も現れる。


 だが、さすがにこれだけの枝が生い茂っていると、中級の魔物は枝を折りながらでないと移動が出来ないため、枝の折れる音で早期発見ができるのだ。

 おかげで接近する前に討伐班が討伐してくれる。


 俺達護衛班は、たまに打ち漏らした下級の魔物の対処をするくらいで割と暇だった。


 いざとなったらシアの結界で術者たちを守りつつ魔物を討伐するつもりだったがその必要すら無かった。


 そうして、『上級の魔物』と遭遇する事無く、聖域の近くまで来る事が出来た。



「このまま「上級の魔物」と遭遇しないで処置が終わるといいですね」


「ああ、思った以上に退屈な仕事だが、リスクが無いに越した事はないからな」


「わたしはちょっとだけ『上級の魔物』と戦ってみたかったですが」


 ・・・なんだか最近シアの方が好戦的になってきた気がする。



 シアとそんな事を話している所に、先行していた討伐班の人が戻って来た。




「この先の聖域に『上級の魔物』が居座っているぞ!」




 ・・・もう現れないのかと思った『上級の魔物』は、聖域にいたのだった。


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