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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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123話 依頼の真相

 俺達はそれから毎日、地下迷宮の第三階層まで行っては中級の魔物を討伐しまくった。


 一緒に行動すると、全部シアに持って行かれるので、途中から分散して単独でそれぞれ中級の魔物と戦う事にした。


 おかげで膨大な量の魔結晶を入手してしまって、俺達は結構なお金持ちになってしまった。


 色々試してみて、オレとキアも多少ながら魔力回復量が普段より増加しているのを確認出来た。

 しかし、その変化はシアほど大きくはない。




 しばらく討伐を続けてわかった事がいくつかある。


 迷宮の魔物は、倒しても倒しても、尽きる事無く次から次へと発生する。


 魔物を討伐して体数が減ると、すぐに新たな魔物が発生してしまうみたいなのだ。

 だから、第一階層など、大勢の冒険者が、こぞって魔物を倒しまくっていても全然魔物がいなくならないのだ。


 しかし、魔物は倒さないでいると際限なく増え続けるのかというとそうではない。

 おそらく階層ごとに最大数が決まっているのだろうか?

 その体数まで増えたらそれ以上は増えない様だ。

 そうでなければ、第三階層など、討伐が追いつかず魔物で溢れてしまう。


 

 次に魔物の発生する場所は、ある程度決まっている。


 迷宮内で無作為に発生しているのではなく、おそらく各階層の外周で発生しているのだ。

 そして、人間の近くで突然発生する事もない。

 外周付近で人間が近くにいない場所でのみ発生しているのだ。


 発生する魔物の種類も場所によってだいたい決まっている。

 ほぼ、同じ場所からは同じ種類の魔物が発生する様だ。



 それから、魔物はゲートには近づかない。

 なぜか、ゲートの近くには魔物はやってこないのだ。



 そして、迷宮内にいると魔力の回復が若干早くなる。


 これは他の冒険者にも確認したが、魔力の回復が早くなるのは皆感じているらしい。

 だが、やはりそれはわずかな変化で、シアほど極端に回復が早くなったという話は聞かない。


 ・・・やはり、シアにだけ何かがあるのだろうか?




 そうやって数日が過ぎ、他の指名依頼の冒険者も揃ったので、正式に依頼の説明を受ける事になった。



 俺達は冒険者ギルドの会議室に集められた。


 会議室に入ると15人ほどの冒険者が集められていた。


 皆歴戦の屈強な冒険者ばかりだ。

 俺達の様な子供は他にはいない。


 俺達が会議室に入ると、何人かの冒険者が、何でこんな所に子供がいるんだ?といった目つきで睨みつけてきた。



「ひさしぶりだね、シアさん。しばらく会わない間にまた一段と美しくなったね」


 ギルが早速シアを見つけて声をかけてきた。


「わたしは別に会いたくありませんでした」


「ふふっ、相変わらずだね」


 シアの塩対応も久しぶりだな。



「みんな!元気だった!」


 後ろから声をかけてきたのはユナさんだった。


「ユナ!久しぶりだな!元気だったか!」


「ユナさん!あなたの事は一日も忘れた事はありません」


「ユナさんも元気そうで何よりです」



「ゲンも相変わらずね」


 うなずいただけの俺にユナさんが話しかけてきた。


「ああ、そうだな」


「ふふっ、あなたたちはずいぶん先に来て地下迷宮を回ってたらしいわね」


「ああ、あんたらを待っている間、暇だったからな」


「あたしも昨日来てちょっとだけ迷宮に入ってみたんだけど、シアさんがすっかり有名人になってたわよ『迷宮の聖女』って」


 まあ、片っ端からケガ人を直して回ってたら、そうなるだろうな。


「そんな、わたしはただ困っている人助けたかっただけで」


「世間ではそれを『聖女』っていうのよ」



「シアさん、僕にとっては初めからシアさんは聖女でしたよ!」


 ギルはめんどくさいから話に入ってくんな。


「僕も昨日地下迷宮に入ったけど、すっかりシアさんの噂で持ち切りでしたよ。魔物にやられそうなところを高度な結界魔法や攻撃魔法で助けたり、重症の怪我をきれいに治したり、シアさんほどの美少女が優しく微笑みかけながらそんな事をしてくれたら、男だったら誰だって惚れてしまって当然ですよ」


 相変わらず大げさなやつだな。


「でもシアさん!できれば君には僕だけの聖女でいて欲しかった!」


「わたしはゲンだけの聖女です!」


「ゲン君、君もそろそろ身の程をわきまえた方がいいですよ!君とシアさんではつり合いがとれない」


 余計なお世話だ。




「皆さん!静粛に!」


 ギルド長が会議室に入って来た。


「全員お集まり頂いたようですね?では今回の依頼の説明を始めます」


「まず、今回ここにお集まりいただいたのは『上級冒険者』あるいは上級に近い実力を持った上位の『中級冒険者』に限定させて頂いています」


 冒険者たちの目線が一斉に俺達の方に向く。


「彼らは先日、史上最年少で『上級冒険者』になった方々で、実力は本物です。既にこの数日で有名人になられたようですが」


「さて、みなさん、既に機密保持の契約魔法の施行は済ませたと思います。これからお話しする事は国家機密事項になります。部外者に伝達する事が出来ない様に制約がかかり、また国外に出た際には、この機密事項に関する記憶は抹消されます」


 記憶が消えるってのが今一つ実感がねえんだよな。

 人の記憶なんてそんな簡単に必要なところだけ消せるものなのか?


「既に地下迷宮の事はご存じかと思います。この国はこの地下迷宮に発生する魔物から回収される魔結晶により成り立っております」


「既に第三階層まで行かれた方もいらっしゃる様ですが、現在第四階層から先を封鎖させて頂いております」


「おそらくお察しの方もいらっしゃると思いますので単刀直入に申し上げます。第四階層に『上級の魔物』が出現しております。その討伐が今回の依頼です」


 やはりそうか、そんな事だろうと思った。


「それなら『勇者』に要請すれば済むんじゃないのか?」


 年配の冒険者が質問した。


 確かにその通りだ。


 『上級の魔物』討伐は基本的に勇者案件だ。

 俺も何度か同行した事がある。


 俺は連れて行ってもらえなかったが、国外からの要請に応じた事もあったはずだ。


「この迷宮の事は現在この国の国内だけの機密で、外国には一切存在を知らせていません。しかし勇者の出動を依頼するとなった場合、勇者の国に迷宮の存在を知られる事になります」


「それにおそらくですが、『勇者』には契約魔法が利きません。記憶の抹消が出来ないのです」


「なるほどな、秘密裏に事を済ませたいから『勇者』には頼めねえってわけだ!」


「その通りです。ですから今回、皆さんに規定以上の高額な報酬を支払ってまで依頼をかけたのです」



「それで?このメンバーで『上級の魔物』を一体倒せば依頼は完了なのか?」




「いいえ・・・『上級の魔物』は無限に発生します」


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