表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
119/318

118話 契約魔法

 王都に到着した翌日、俺達は王都の冒険者ギルドを訪れた。




 冒険者ギルドは町の北の端の、山脈がそびえたつ側の城壁に接した、大きな建物だった。


「変わった場所に冒険者ギルドがあるんだね?」


「なぜ山のふもとにあるのでしょうか?」


「まあ、入ってみれば分かるさ!」


 冒険者ギルドの中に入ると大勢の冒険者で賑わっていた。


「すごい人数ですね?」


「こんなに人の多い冒険者ギルドってはじめて見るよ」


「町の外には大して魔物がいなかったのに、なんでこんなに冒険者が集まってるんだ」




 ギルドの奥には大きな扉があり、冒険者たちは、そこから出入りしている。


「あの奥に何があるのでしょうか?」


扉のある方角は山のはずだが・・・




「まずはギルド長に会いに行くぞ」




 ココさんが受付に話をすると、ギルド長の部屋に呼ばれた。




「よく来てくれました、ココ様!ずいぶん早かったですね?」


 ギルド長は、冒険者ギルドの責任者にしては珍しく、細身で物静かな感じの紳士だった。


「おう!ゲンが魔法を使ってうまい事移動手段を考えてくれた」


「ほう!それは素晴らしい!ゲンというのは・・・?」



「紹介するぞ!こっちが『上級冒険者』のゲン、それからシアとキアだ!」


 俺達はギルド長に挨拶をした。



「ゲン達は最年少で『上級冒険者』になったんだ」


「噂には聞いておりました」



 ギルド長が俺の方を見た。


 穏やかな雰囲気に見えるが、一見微笑んでる目の奥の眼光は鋭かった。


「あなたは見たところ剣士の様ですが、魔法使いなのですか?」


「『中級剣士』で『中級魔法士』だ」


「ほう!中級魔法士とは素晴らしい! なるほど、剣と魔法を組み合させて戦うスタイルという事ですね」


「俺はどちらかというと剣がメインなんだが」


「しかし、あなたの国で言うところの『中級魔法士』というのはかなり魔力量の多い人の事を指しますよね?」


 まあ確かに、国民の大半が『下級』魔法を使えるが、『中級』は少数派だ。

 『上級』に至っては数人しかいないが。


「シアも『中級魔法士』だぞ!」


「ほう、『中級魔法士』が二人も!冒険者には珍しいですね」


 確かにな、俺たちの国では『中級魔法士』は魔法庁で職に就いた方が優遇されるからな。

 冒険者になる『中級魔法士』は少数派だ。




「ところで、今回の依頼は何なんだ?ここに来るまで教えてもらえないって言われたんだが?」


 ココさんがギルド長に依頼内容を尋ねた。


「今回の依頼はこの国の国家機密にかかわる内容ですので、内容をお話する前に機密保持契約も交わしていただく必要があります。詳しい事は参加者が全員揃ったところで説明させて頂こうかと考えております」


「そうか、じゃあ、みんな揃うまで待つか」


「はい、それまでの間、この町でゆっくりとお過ごし下さい」



「そういえば、ギルドの奥には何があるんだ?」


「それこそ、まさに国家機密事項です。ですが、もし興味がおありでしたら、先に契約を交わして頂ければ中に入る事は可能です」


「どうする?契約して中に入るか?」


「いずれ契約が必要なら先に済ませておいた方が良いのではないでしょうか?」


「そうだな、シアの言う通り、先に済ませておこう」


「そうですか、それでは、職員に案内させます」




 俺達はギルド職員の女性に案内された部屋に入った。


「それでは契約魔法による機密保持契約を交わさせていただきます」


「どういう契約なんだ?」


「契約書に記載された機密情報を部外者に教えるという行為が出来なくなるという精神的な制約が課せられます。それをかいくぐって何らかの方法で外部に情報を漏洩した場合、その事が冒険者ギルドに通達される仕組みになっています。そして冒険者ギルドを通して莫大な違約金をお支払いいただく事になります」


 ずいぶん強力な精神魔法みたいだな。


「その契約はいつまで有効なんだ?」


「この国を出るまでです。この国から外に出ると契約魔法は消滅しますが、それと同時に機密事項に関する記憶を忘却する仕組みになっています」


「どうやって契約するんですか?」


 シアは契約魔法の方法に興味津々だ。


「魔法で体に刻印を刻まさせていただきます。魔法による刻印ですので普段は見る事が出来ません。特定の方法で確認する時だけ浮き上がる様になっています」


「『上級冒険者』国家機密にかかわる仕事を受ける事があるからな。時々こういう契約をする事はあるぞ」


 ココさんはこういう契約魔法を交わした事があるみたいだな。


「はい、どこの国でも一般的に使われている契約魔法ですので」


 それなら特にリスクは無いのかか?


「せっかくの経験を忘れてしまうのは、何だかもったいない気がします」


「下手に国家機密を覚えていると後々面倒な事に巻きこまれるかもしれないからな。忘れた方が気楽だぞ!」


「それもそうですね、今はとりあえずどんな魔法か楽しみにしています」


 シアは、魔法の事なら何でも知りたいみたいだ。




「では、施術士がそれぞれの部屋におりますので、各部屋にお一人づつお入りください」


 複数の扉があり、俺達はそれぞれ、別の扉に案内された。


「じゃあ、また後でな!」


 俺はみんなと別れて、施術士のいる部屋に入った。


 施術士は女性の魔法使いだった。


「ようこそいらっしゃいました。それでは契約魔法の施術を行ないます」


「ああ、宜しく頼む」


「まずは、装備は外して頂けますか?魔法耐性のある装備の方もいらっしゃいますので」


 俺の装備が特別製の附加装備だって気が付いているわけではなさそうだが・・・


 とりあえず言われたままに装備を外した。 


「では、後ろを向いてうなじを見せて下さい。うなじに魔法陣を描いて術を施します」


 俺は後ろを向いてうなじを見せた。


「では始めます」


 施術士の女性は、杖で俺のうなじに魔法陣を描き始めた。


 魔法陣が描き終わると、次は魔法陣に魔力を注入する。



 ・・・ここまでは俺達の国の魔法と同じだな。



 しばらく魔法を注入していた女性が俺に話しかけた。


「申し訳ありません、魔力を注入しても魔法陣が発動しないのでもう少々お待ちください」


 なんだか少し困惑している様だ。

 うまくいかないのだろうか?




 女性は更に魔力を注入し続け、ようやく魔法陣が発動した。


 女性が呪文を詠唱し、無事に施術が完了した様だ。


「申し訳ありません、あなたの魔力容量が予想以上に大きすぎたために契約に膨大な魔力が必要になってしまいました。『中級魔法士』と伺っておりましたが、まさか『上級魔法士』でしたのでしょうか?」


「いや、そんな事は無い。『中級魔法士』だ。中級にしては魔力量は多い方だとは言われたが、『上級魔法士』はこんなものではないって話だ」


「そうですか、とにかく施術は完了しましたので元の部屋にお戻りください」




 俺が部屋を出ると、ココさんとキアが待っていた。


「遅かったな、ゲン」


「ずいぶん時間がかかってたみたいだね?施術士のお姉さんといちゃいちゃしてたの?」


「するかっ!」



 ん?シアがいないな。



「シアはどうした?」


「シアはまだ出てこないぞ」




 俺以上に時間ががかかっているのか?




 大丈夫か?シア・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ