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【8章完】勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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117話 雪の国の王都

 『ストーンブレード』のそりで、軽快に街道を進んだ俺達は、予定よりだいぶ早く王都に着いてしまった。



 王都は、後方に標高の高い山脈を構えた強固な城塞都市だった。


 頑丈そうな城壁は『中級の魔物』でも破壊できそうにない。


 国境付近の町も大きかったが、王都はその数倍の規模はありそうだ。

 もしかしたら俺達の国の王都に匹敵する規模ではないだろうか?


 国土全体の面積と国力の差を考えたら、この小さな国にこの規模の王都は異常なのではないだろうか?


 むしろ人口の大半が王都に集中してるという事だろうか?





 城門ではかなり厳しい検問を行なっていた。


 おっさんの憲兵がシアとココさんのボディチェックを妙に念入りにやっていたので、ひとこと言ってやろうと思ったら、先にココさんが、憲兵の腕を捻りあげていた。


 これは問題になるかと思いきや、『上級冒険者』の権威は絶大で、今回の事は不問に付すという事になった。


 まあ、『上級冒険者』にセクハラを働いたという事が冒険者ギルドの耳に入ったら大事になるから、憲兵としても誤魔化したいところだろう。




 王都の城門は、国境の町と同じで二重構造になっていた。


 二つ目の門を通って、ようやく王都の中に入る事が出来た。




「へえ!これは驚いた!」


「すごい!これって魔法でしょうか?」


「雪が積もっていないどころか全然寒くないや!」



 そう、王都の中は国境付近の町と同様に全く雪が積もっていない。

 この広大な町全体を結界魔法で覆っているという事だろう。


 それだけならまだしも、気温が快適な温度に調整されているのだ。

 国境の町では雪は積もっていなかったが、気温は町の外と同じでかなり寒かった。


「これだけの規模の町をこの気温に保つのって、どれだけの魔力を使っているのでしょうか?」




 そう、『結界』は発動に膨大な魔力を必要とするが、その後の維持にはさほど魔力を必要としない。


 『上級魔法士』クラスの魔法使いが時々補修をしてやればこのサイズの結界も維持できる。

 実際、俺達の国でも王都を結界で覆っている。


 だが、この寒冷地で気温を維持するのは話が別だ。これだけの空間の温度を上昇させるには、膨大な魔力を使い続けなければならない。


 これまでの町でも不思議に思ったが、魔力の充填された魔結晶が大量に販売されていた。


 国外との貿易が盛んではない小さな国に、どうしてこれだけの魔力源が存在しているのだろうか?




「よそ様の国の事情だ。あまり詮索しない方がいいぞ」


「そうですね、国家機密に関する事だとすると、変にかかわると危険です」


「よくわかんないけど、快適ならそれでいいんじゃない?」


「とりあえず、今日の宿を探そう」




 俺達は王都の中を見物がてら歩き始めた。


 城壁の内側には、なんと広大な農地があり、穀物や野菜を栽培していた。




 王都の城壁の外側は氷点下で、かなりの降雪量だったのだ。

 国境の町から王都に近づくにつれて、気温は次第に下がり、降雪量も増してきたのだ。

 途中、吹雪に遭遇する事もあった。

 シアの結界魔法が無ければ結構危なかったのだ。


 とても農業が出来る環境ではなかった。


 ところが王都の中では、普通に作物を育てているのは驚きだった。




「これだけの農地があれば、王都の住人の食糧くらいは賄えますね」


 この極寒の国が、外国との貿易無しで自給自足しているのはこういう事か。




 農業地帯を抜けると住宅地や商業施設が見えてきた。


 商店街の雰囲気は国境の町に似ているが、規模と人の多さが桁違いだった。

 飲食店の数も多く、メニューのバリエーションも幅広そうだ。

 町ゆく人のファッションも変化に富んでいる。

 

「ゲン、ずいぶんにぎやかですね。まるで私たちの国の王都みたいです」


「そうだな、こんな雪深い山奥にこんな栄えた町があるのは驚きだ」


 気温は凍えるほどの寒さではないが、俺達の国に比べたら若干肌寒いので、道行く人々はやはりコートを羽織っていた。


 俺達もコートを羽織っているので違和感はない。


 ・・・ただ、担いでいるそりが若干悪目立ちしていた。

 この王都の中では、そりは必要ないので俺達の他にそりを担いでいる通行人はいなかったのだ。


 繁華街を抜けて、少し高級な建物が並ぶ通りに、同じく高級そうな宿を見つけた。


「ここなら前の町みたいなファミリールームがありそうですね」


「よし!入ってみよう!」


 宿の受付で聞いてみたら、やはり同じ仕様のファミリールームがあるそうなのでそこに泊まる事にした。


 身分を証明するために冒険者証を提示した。


「もしかして指名依頼の冒険者様でしょうか?」


「そうだぞ!予定より早く着いたのでしばらく観光でもしようと思ってる」


「それでしたら王室より当宿屋が任命されておりますので、無償で宿泊いただけます」


「そうなのか?予定よりだいぶ早いが構わないのか?」


「はい、そのような場合も承っておりますので問題ありません」


「そうか!助かるな!」




 俺達は、無償で高級宿に泊まる事が出来た。




 早速その日の夜は、四人で一緒に家族風呂に入り、雪原の旅で冷え切った体を温めたのであった。


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