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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第五章 氷雪の国
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114話 異国の街並み

 風呂ではハプニングがあったが、仲間意識、いや、家族意識を固めた俺達は、夕食をとって早めに就寝した。


 夕食は独特な味付けの肉の煮込み料理だった。


 食べた事が無い味だったので、師匠だったらきっと、調味料は何を使ってるとか、どういう調理方法だとが、興味津々だろうな。


「おいしいです!ララ先生だったら、どうやって作るのか分析を始めてますね?」


 シアも同じ事を考えていた。




 翌日は町の見物も兼ねて買い出しに出た。


 目的地は王都だが、予定の期日に対して、だいぶ行程が前倒しになっているので、この町で何日かゆっくりしてから王都に移動する事にしたのだ。


「まずは洋服を買いましょう。この町でこの格好は目立ちすぎます」


 そうだな、町の人々は全員がコートを羽織っている。

 俺達の恰好は見るからに寒そうだ。


 洋服屋はたくさんあったが、一番品の良さそうな店に入った。


「わあ!かわいいコートがたくさんありますよ!」


 シアは楽しそうにコートを選んでいる。


「これ、どうですか?」


 シアは襟と袖にファーの付いた白いコートを羽織っていた。


 シアのピンクブロンドの髪と調和して、まるで妖精の様な幻想的な可憐さだった。

 思わず見とれてしまった。


「ああ、よく似合ってる」


「ゲン!かわいいって思ってるならはっきり言わないとだめだぞ!」


「ふふっ、ゲンが今わたしの事、かわいいって思ったのは分かりますから大丈夫ですよ!」


 だから何で俺の考えている事がダダ洩れなんだ?


「ゲンも気にったみたいのなのでこれにします」


 シアはこの、かわいらしい白いコートに決めた様だ。



「あたいの方はどうだ?」


 ココさんは対照的に真っ黒なコートを試着していた。

 ココさんの鮮やかなオレンジの髪が黒いコートに良く映える。


 ココさんは、以前はいつも砂埃まみれで薄汚い格好だったのだか、最近はシアと共に行動し、きれい好きのシアと毎日一緒に風呂に入っているおかげで、ぼさぼさだった髪やガサガサだった肌もすっかりツヤツヤピカピカで、どこから見ても可憐な美少女なのだ。


 服もシアが毎日クリーニングするので、身だしなみもすっかり小ぎれいなっていた。

 


「素敵です!ココさん!なんだか魔女みたいです」


 確かに、黒いコートは魔女のローブ風にも見える。

 ただ、ココさんの髪の色が鮮やか過ぎて、全然イメージが違うけどな。


「あはは!あたいは魔法が全く使えないけどな!」


「ココさんが魔女なら・・・さしずめ『剛腕の魔女』ってとこですね!」


 拳で勝負する武闘派の魔女って何なんだ?

 って既にそれは魔女ではないだろう。


 まあ、実際に剣の技で頂点を極めた魔女がいるくらいだから、拳で頂点を極める魔女がいてもおかしくはないか?


「あっはっは!うまい事いうな!シア!」


 ココさんにはバカ受けしていた。




 俺も当たり障りのないダークグレーのコートを買った。

 俺は髪が白いから白いコートだと全身が真っ白になってしまう。


 キアはブラウン系のコートを買った。




 四人ともコートを着たら、この町の住人っぽくなった。


 コートはゆったりしているので装備の上からでも着る事が出来た。




「さて、次は魔道具のお店を見に行っていいですか?」


 シアは、この国の魔法に興味津々の様だった。


 魔法大好き少女の本領発揮である。




 まずは手近なところにあった魔道具の店に入ってみた。


 店内は思ったより小ぎれいだった。

 魔道具の店っていえばもっとおどろおどろしいイメージだったが。


 店頭近くには、暖を取るための魔道具が並んでいた。


 魔結晶のかけらを入れると、半日くらい暖かさが持続する小さなケースだった。


「この町の人たちはこれをポケットに入れておくみたいですね」


 隣には交換用の魔結晶のかけらがたくさん売られていた。


 それから、魔結晶で光る照明とか魔結晶で風を送る道具などがあった。


 更に店の奥の方には、魔結晶を用いた調理器具や、食品を長期保存するための保冷庫などもあった。


 俺達の国にも同じような道具を扱った店はあったが、これほどの品ぞろえの店は無かった。

 これくらいの事は下級魔法でできるし、身体強化が使えれば、寒くても体を温める事も出来る。


 それに魔結晶をこんなに大量に売っている所も見た事が無い。

 ほぼ全員が魔法を使える俺達の国では、この程度の小さい魔結晶のかけらだったら、誰でも自分で魔力を充填できるから、魔結晶をたくさん買い込む必要が無いのだ。


「この国では魔道具が生活必需品なんですね」


「この国も魔法が使える人間が少ないからな。こうやって魔道具が普及したんだろうな」


「でも魔力が無かったら、これらの魔結晶はどうやって魔力を充填するんでしょうか?」


 確かにそうだな。一部の人間で、国民全員が生活するだけの魔力を賄えるのか?


「シアだったら、どれくらいの魔結晶に魔力を充填できる?」


「このワゴン一台分なら余裕です」


 ワゴンには『下級の魔物』の物と思われる魔結晶が大量に積んである。


「俺も似たようなもんだ」


 魔力だけは無駄にたくさん持っている。


「へえ!すごいね君たち、僕は十個くらいが限界かな?」


「あたいは一個も出来ないよ!」


 だが、中級魔法士の中でも魔力量の多いシアや俺でも、全国民の需要を満たすには不十分だ。


 意外と大勢の中級魔法士がいるか、上級魔法士を抱えているかだが・・・


「この辺りは魔物の出現率もそんなに高くないんだろ?」


「そうだな、そんなに魔物が大量発生するって話は聞いた事無いな」


 どういう事なんだ?国外から仕入れているとも思えないが・・・




 それからいくつかの魔道具店を回ったが、結局どこも魔結晶を使った日用雑貨の店だった。


 シアがちょっとがっかりしている。


「魔道具の店がたくさんあったので期待していたのですが、珍しい魔道具はありませんでした」


「看板が魔道具店だけど中身は日用雑貨店だったからね」


「やはりわたしたちの国以上に魔法が発達してる国は無いのでしょうか?」


「だが、この前の盗賊の自称『魔女』なんかもいたからな。俺達の知らない魔法ってものどこかにはあるどろう」


 シアの顔がぱぁっと明るくなった。


「そうですよね!まだたった三か国しか見ていませんから、まだまだ期待できますよね!」


「シアは本当に魔法が大好きなんだな」


「はい!魔法って、とってもわくわくするんです!」



 シアが元気になって何よりだ。




 今回の依頼が終わったら、また別の国にも連れて行ってやりたいな。


『勇者の息子は魔女になりたい!』第2章を開始しました。物語は本題に入っていきます。

併せてお楽しみください。

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