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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第四章 国外遠征
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108話 村の防衛

 複数のチームに分かれて行動していた盗賊の大半を潰したが、まだボス直轄のチームが残っていて、他のチームを仕切っていた幹部たちもそのチームに合流したと思われる。


 そいつらが村を襲うとしたらかなり厄介だ。


 こちらもギルの遊撃部隊が対応しているが、あの『アニキ』を含む盗賊に幹部達が集結したら対処しきれるか不安が残る。



 とにかく、一刻も早く村に向かわなくてはならない。

 俺達はペースを上げて先を急いだ。


「あの丘を越えたら目的の村に着くわ!」


 ユナさんが教えてくれた。


 ここまで逃走した幹部連中に追いつけなかったので、幹部たちは既にボスと合流している可能性が高い。


 早く行かないと村が大変な事になってしまう。




 丘の上にたどり着くと、村を見下ろす事が出来た。


「間に合わなかったか!」



 既に村の数カ所で火の手が上がっていた。


 村は防壁に囲まれているが、正面の門が破られていた。


「急ぐわよ!少しでも被害を食い止めなきゃ!」


「私は火を何とかします」


 シアは走りながら魔法陣を描き、それを放った。


「『アイシクルアロー』」


 シアの放った氷の矢は、はるか遠くの火の上がっている家屋に命中し、瞬時に火を消した。


「すごい!飛距離と命中精度もすごいけど、火を一発で消せるなんて!」


 ユナさんが驚いている。


「当たった瞬間に冷気を周囲にまき散らす様にしたんです」


「なんか、色々すごいけど、あなたたちの国の魔法使いって、みんなそんな事が出来るの?」


「こんな事が出来る奴はそれほどいない」


「へえ!シアさんって優秀な魔法使いなんだ」


「わたしなんてまだまだです」


 そう言いながらシアは、次々と『アイシクルアロー』を放って、火を消していった。




 シアが殆んどの火を消し終わった頃、俺達は町の入り口に到着した。



 そこでは、ギルとココさんが、盗賊の一人と思われる人物と対峙していた。



「ココさん!大丈夫ですか?」


 シアがココさんに声をかけた。


「あたいは今着いたとこだ、まだ何ともない」


 ココさんは対峙している相手を睨んだまま、こちらを見ずに答えた。


「ははは、シアさん、僕にはねぎらいの言葉は無いのかな?」


 ギルの方は、かなり激しい戦いをしていた様で、体の各所に傷が出来ている。


 『上級冒険者』のギルがここまで手こずる相手なのか?



 相手は一人で黒いローブにフードを被っていて顔が見えない。

 大きな杖を持っているところを見ると魔法使いか?


「こいつが盗賊のボスみたいだよ」


 ギルが教えてくれた。



「ギルさん、傷を治します!」


 シアはギルに向かって治癒魔法をかけた。


「おお!痛みが引いていく!怪我が治ってるぞ!シアさんの愛情、確かに受け取ったよ!」


「愛情では無いです。ただの仕事です!」


 いちいちめんどくさいな、ギルのヤツ・・・


「シアさんの愛情に答えるためにもこいつを倒さないとね!」


 ギルが、盗賊のボスに切りかかる。


 しかし、ギルの剣は盗賊のボスの手前で何かにはじかれた。


「『結界』です!その人は自分の周囲に『結界』を張っているんです」


「やはりそうか!『シールド』にしては硬すぎると思ったよ。しかし、『結界』まで使えるとはかなりハイレベルな魔法使いの様だね」


「今度はあたいが行くよ!」


 ココさんが『ボス』に殴りかかる。


 ココさんの拳は『結界』すらも打ち破る事が出来る。

 これでボスにダメージを与える事が出来るだろう。



「覚悟しな!」


 ココさんの渾身の一撃は、『ボス』の『結界』を破ったが、その先で止まった。


 ・・・何が起こった?


「『結界』が二重に張られています!」


 シアも使った二重結界だ。


 そもそも普通の『魔法士』は同時に二つの魔法を使う事が出来ない。


 複数の魔法を同時使用できるのは、『魔術師』や、シアの様にそのための修行をしている者だけだ。


 もっともこれは俺達の国の常識であって、他の国でどうなのか分からないが、それなりに高度な魔法使いである事は間違いない。


「いくつ張っていたとしても全部壊せばいい」


 ココさんが再度『ボス』に殴りかかった。


 しかしその時には再び外側の『結界』が復活していた。


「シア、どういう事だ!今、あいつは魔法陣を描いていなかったぞ」


「おそらく魔法陣を使わない魔法の発動方法を使用しているみたいです。外国にはその様な方法もあると聞いた事があります!」


 確かに、『勇者』や『魔女』は魔法陣も詠唱も無しで魔法を発動している。

 必ずしも『魔法陣』や『詠唱』が必要なわけでは無いのだろう。


 


 そして、『ボス』は結界の中から攻撃魔法を放ってきた。


『ファイヤーランス』がココさんを襲う。


続けて二発目の『ファイヤーランス』がギルを襲う。


「『結界』!」


 シアがココさんとギルに結界を張って、攻撃を防いだ。


「助かったぞ!シア!」


「ありがとう!シアさん!やはり君は僕の事を・・・」


「違います」


 ギルのめんどくさい話をシアは途中で遮った。



 しかし・・・今も二つの魔法を同時に使ったな。

 黒ずくめの姿といい、まさか『魔女』って事はねえよな?


 ゆったりとしたローブに全身を包まれているので、性別は分からないが。


 まあ、こいつが『傲慢の魔女』だったらこんなもんじゃねえだろうがな、



「ゲン!ここはわたしが加勢しますから、ゲン達は村の中の他の盗賊をお願いします!」


 そうだ、こうしている間にも、村は他の盗賊たちに蹂躙されている。


「あたしたちは村に行きましょう!」


 ユナさんは既に村の中に向かって走り始めた。


「シア!ココさん!気を付けろよ!」


「はい!わかってます」

 



 俺もユナさんを追って村の中に向かった。


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