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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第四章 国外遠征
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101話 実力の証明

「大丈夫かおっさん?」


「いててて・・・なるほどな、確かに実力は本物だ」


 練習用の剣なので傷は打撲だが、さっきの打ち込みなら肋骨ぐらいは折れているかもしれない。


「何だったんだ今の技は?」


「ゲンの技を真似してみたんだ」


「俺のは師匠の真似だがな」




「今、傷を治します。待って下さい、」


 シアが治癒魔法でおっさんの怪我を治療した。


「すまねえな、お嬢ちゃん。治癒魔法が使えるのかい?・・・おお!みるみる痛みが引いていくぞ」


 おっさんの顔から次第に苦痛の表情が無くなっていく。


「もう大丈夫です。痛みは残っていませんか?」


「ああ、なんともねえ。こりゃ、かなり高度な治癒魔法じゃねえのか?」


 シアは回復系やサポート系の魔法の習得にも力を入れている。

 既に一般的な中級魔法士のレベルをはるかに超えているのだ。


「さっきのはおそらく骨折していたんだが、それを一瞬で直すなんざ『聖女』レベルの治癒魔法だぜ?」


「『聖女』ですか?」


 俺達の国にはいないが、他国には『聖女』という職業が存在する国もある。

 治癒魔法などの回復系魔法に特化して、その能力を極限まで高めた魔法使いだ。


 俺達の国では、攻撃魔法も防御魔法も、回復魔法や支援魔法も同様に『魔法士』が習得して使用する。

 魔法士によって得意分野は分かれるが、魔法の種類に特化した職業名は無い。


「ああ、魔法が使える人間が少ないこの国で、高度な治癒魔法が使える存在は貴重だ。『聖女』と呼ばれ、特別な存在となる」


「そうなんですね?でもわたしはどちらかと言えば、攻撃系の魔法の方が得意なのですが?」


「なんだって!『聖女』レベルの治癒魔法が使えるのに攻撃魔法も使えるのか?それじゃまるで『賢者』じゃねえか?」


「『賢者』ですか?」


「この国には一人しかいねえが、高度な攻撃魔法と回復魔法、その他ほとんどの魔法を扱える魔法使いが『賢者』と呼ばれるんだ」


「わたしたちの国の『魔術師』みたいなものでしょうか?わたしはそれを目指して修行中なんです」


「なるほどな、そりゃ、上級冒険者になってもおかしくねえな。そっちのあんちゃんも強ええんだろ?」


 おっさんが俺の方を見た。

 

「はい!ゲンは『剣聖』様の弟子ですから!」


「『剣聖』ってのは今の『勇者』の事だよな?見た目はえらいべっぴんの少女って話だが」


「ああ、だが俺は『勇者』では無く『剣聖』の弟子だ!」


 俺はおっさんに答えた。


「・・・どう違うんだ?」


「『勇者』ってのはこの世界を守るために最強の力を与えられた存在だが、『剣聖』は己の力のみを鍛えて剣を極めた者だ。俺の師匠は勇者になる前に剣の技を鍛えて最強になった。俺もそれを目指している」


 勇者の力を継承していないのに勇者のふりが出来てる師匠の強さが異常ではあるがな。


「そうか、その考え方は俺も嫌いじゃねえ」


 このおっさん、話せばそう悪い人ではなかった様だ。




「疑って悪かったな、お前らみんな本物だ」


「おう。分かってくれればそれでいいぞ」


「実力がわかったところで一つ相談があるんだが、いいか?」


「旅の途中なんで、あまり時間はないぞ」


「そうか、だが、とりあえず話だけでも聞いてくれねえか?」


「おう!いいぞ」


「盗賊退治を手伝ってくれねえだろうか?」


「盗賊?」


「最近王都周辺の町や村に盗賊団が出没する様になってな。護衛人任務についた冒険者が、もう何人もやられてる」


「そうなんですか?」


「ああ、ここ数年で、この国には山賊やら盗賊やらの数が急激に増えて来てな、特に最近王都付近に出属する盗賊団は、容赦なく人を殺して金品を強奪していきやがるんだ」



 俺達の国には、もう大規模な盗賊の組織が殆んど残っていないが、その分周辺の国に移動したのかもしれないな。



「国の騎士団は王都の防衛を優先しちまうんで、周辺の町や村の護衛に冒険者が駆り出されるんだが、実力の無い冒険者じゃ返り討ちにあって殺されちまう」 


 

「それで今度、冒険者を集めて大規模討伐を決行し、一気にその盗賊団を殲滅しようって話になったんだ。だが、みんな怖気づいちまって、人数が集まらねえ。このままじゃ最初から戦力的に勝ち目が無くなっちまうんだ」




 師匠が頑張って国内を平和にした皺寄せがこんなところに来ていたんだな。


 ・・・若干他人事でない気がして後味が悪い。



「ココさん、手伝ってやる訳にはいかねえか?」


 俺はココさんに判断を仰いだ。

 一応今のパーティーリーダーはココさんだ。


「そうだな、その大規模討伐はいつの予定なんだ?」


 ココさんも気がかりだったらしい。

 おっさんに日程を尋ねた。


「二日後の夜だ。調査の結果、二日後に、奴らが王都から半日ぐらいの距離にある町を襲う計画を立てている事がわかったんだ。そこを叩く」


「二日後なら大丈夫か?・・・よし、討伐に参加するぞ!みんないいな?」


「はい!わたしは手伝うべきだと思ってました」


「僕も腕試しにちょうど良さそうだしね!」


 行程が三日短縮できているから問題ないよな?


「ありがとう、ココさん」


「・・・何でゲンが礼を言うんだ?」


 ・・・なんとなく弟子として師匠の後始末をするのが当然な気分になっていた。



「助かったぜ、じゃあ受付に行って討伐参加の手続きをしてくれ」


「おっさん、もう受付のお姉さんを口説いちゃダメだよ」


「おっさんじゃねえ!俺の名前はガズだ!」




 俺達はガズと共に盗賊討伐の依頼に参加する事になった。


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