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平和 とは 正義 とは、、?


___


物書き初心者ながら自らや知人の経験を元に現代日本を舞台とし、外国人が日本で暮らすことや働く事の難しさ。

貧困、格差、日本に満ちた矛盾や問題、色々なテーマ・メッセージを様々な形に変化させ練り込み、シニカルな社会風刺的コメディとして仕上げられたらと思っています。







  勇者 ( ゆうしゃ )


勇敢な、勇ましい者。










 何十年も前、この世は平和だった。

しかし、その平和の世を乱した奴がいる。

やつはどこからともなく現れ、村人たちや近隣のモンスターたちを洗脳し王国に何度となく攻撃を仕掛けた。


平和を乱し、争いを産む、邪悪な存在。


やつの事を国王はこう名付けた 魔王 と………







熾烈を極めた争いの日々。


戦争、紛争、血を流さない日はなかった。




だがそんな暗黒の日々も今日までだ。






『 この先にやつがいる… ここまでくるのに少々怪我を負ったが…… 幸い薬草はまだある。この程度の怪我なら充分だ』






 男は懐から薬草を取り出しひとかじり、すると細かな切り傷は癒える。






『 … よし』






 俺は 勇者 平和のために戦う勇敢で、勇猛で、最も誇り高き戦士。

そして俺が今踏みしめてる絨毯、これが敷かれてるのは魔王の部屋への一本道。


絨毯の先の先にある重い扉をあける。

その一室の1番奥、玉座…とは言い難い古めかしい赤い椅子に座るのは他ならぬーーー 魔王 。


俺の視線の先にいるのは国を脅かす悪の化身にして、悪の権化たる、魔の王。



俺はついにここまできた。

この視線の先にいる魔王を斬り捨てればこれから先に見えるのは 平和 ただひとつ。

俺はそのために戦い抜いてきた。



一歩一歩、絨毯を踏みしめ進む。

魔王に近づけば近づくほど 平和 に近づく。


さぁ、最後の戦いだ__







 勇者は剣を構える。

対峙するは椅子に腰掛ける魔王。

2人はしばしの沈黙。








その沈黙を破ったのは魔王の方だった。







魔王は口を滑らかに動かし、語る。









『 よくきたな 勇者よ 』







 勇者は鋭い眼光で魔王を真っ直ぐにみると矢のように鋭く、力強く言い放つ。







『 魔王よ、決着の時だ 』




『 決着の時? 違う、これが幕開けだ…私はキミを待ってた。

ここまでたどり着ける本当の勇者を…… 』









『 …? わけのわからんことを言うな!! 』





『 老い先短い私とは違いキミは若い。

急ぐことはないだろう? 私との会話に時間を割いても悪くはないはずだ… 』






魔王は微笑を浮かべ語り続ける





『 キミはなぜ勇者なんだ?

私はなぜ魔王なんだ?

正義とはなんだ?

視点を変えれば正義は変わる。

物事にはあらゆる側面がある。

私は薬草が嫌いだ。

それは不味いと感じるからだ。

だが別の人は薬草が好きだ、それは薬草が美味しく感じるからだ…

同じに薬草でも感じ方はそれぞれ。

正義もそうだ。

キミはあらゆる側面から物事を見ようとしたか?

誰かに言われ命じられるままに誰かにとってだけ都合のいい勇者になってはないか?

キミと私の違いはなんだ?

キミは国王のために戦ってきた。

国のために戦い抜いてきた。

私はこの国の、世界の、あぶれた者たちのために戦ってきた。

貧困、飢餓、勉強をまともに受けられない子どもたちやモンスターとひとくくりにされ、区別された者たち。


彼らの決して楽とは言えない人生。

その一方で国王たちは大きな城の中で綺麗なドレスを着て美味しいご飯を食べる。


国王たちが食べるご飯を、ドレスを、一つ減らせばどれだけ彼らの腹を満たすことができる?


国王たちとあぶれた者たちの違いはなんだ?


王の一族に生まれた事とそうでなく生まれた事…それだけだ。


理解に苦しむ。


私にとってキミが信じてついてきた国も国王たちも、悪だ 』




……





 剣を身構えたまま魔王に鋭い眼光を向け続ける勇者。

魔王はその眼光に臆することなく、柔らかに、かつ、力強く話を続ける。

それは挑発するような敵意のある口ぶりでも、頭のおかしな妄言のよう口ぶりでもなく、それはまるで意中の人を口説き落とすかのように滑らかで自信に満ちた口ぶり__





『 国王は魔王でキミは魔王の手先さ。

そして私の仲間たちは私の考えを正義と感じ、私の事を勇者や英雄と慕いついてきた。

キミや国王たちが魔王や悪という私についてきた。

希望と期待を抱き、ついてきた。

キミや国王に希望と期待を抱きついてきてる者たちのように…


勇者よ、キミと私の何が違う? 』





『 ……… 』






『 勇者よ、やはり君は本当の勇者のようだ 』





ただ黙る勇者とは対照的に魔王は語り続ける。

先程とは少し違う、勇者の心を掴み上げるように強い強い強い口ぶりで語る




『 キミは長い旅をえて、多くの戦いを乗り越え、ここまできた。正義と平和のために。

それでもなお、私の言葉を聞きその剣を振るうことに迷いを感じている。

キミは宿敵たる私を前にしてもなお私の言葉を聞き、その言葉を理解し思考する優しさや柔らかさがある。

私がキミだったらば私の言葉などきかず切り捨ててるだろう。

長く険しい旅の中信じてきた正義を疑わず、それに相反する物は敵だとし、自分が信じてきた物は間違いではなかったと言い切るために……


だがキミは私とは違う。


君は本当の意味で勇者になれるかもしれない。


私は救う事ができなかった。

私は勇者にはなれなかった。

自分の思考に支配され、心が汚れてしまったからだ。


だがキミは違う。


私はまってたんだよ、キミのような勇者が来ることを…… 』





魔王は語り終えるとゆっくりと深く深く椅子にもたれる。

勇者は魔王に剣を向ける。

しかしその眼差しはさっきまでの鋭い眼光とは違う。


そして、問う__





『 魔王よ、お前は何者だ…? 自分にはお前が単純な 悪 には思えない。なにが目的だったんだ?なぜ魔王になったんだ??』



『 単純な悪にはおもえないか…面白いことを言う……だがその通りだ。単純な悪も単純な正義もこの世には存在しないのだ。

だれでも平和を愛し、正義と信じる。

ただ……皆、愛しかたも信じる形も違うだけだ…

最初に話した事と重なるが、私は魔王になりたくてなった訳ではない。君たちにとって魔王だっただけだ……』




『 …… 』





勇者は剣をおさめると魔王へ言葉を投げる





『 …どんな形であれ平和を望む事ができるなら、平和のために共に歩めるはずだ 』





『 …誰もが幽霊について語るが誰もソレを見た者はいない、ソレと同じで誰もが平和を望むが誰もソレを見た者はいない。それに… 私は歳をとりすぎ汚れ過ぎた。私はもう本当の平和や正義を見つける事ができない。

キミになら 勇者 としての役割を譲れると信じていた。ただキミが救うのはこの世界ではない。キミが救うのは、私が本当に救いたかった世界だ。

その若さで私に匹敵する力、そして純粋で柔軟だが強い意志、平和を愛する心。

キミならできるかもしれない。

いくたのドラゴンを倒し、姫を救う事ができても… 1人の子どもを守る事すら困難な救難き世界。

その世界を救うことを……… 』




『 …何を言っているかわからないがどんな世界であれ、どんな人であれ救ってみせるさ。例えそれが魔王であっても、な。

魔王よ、一緒に行こう。皆の前で謝り、そしてお前の考えも話すんだ。

時間はかかるだろうがきっと…… 』




勇者の言葉をかき消すかのように響くのは魔王の笑い声





『 話を聞いていたか? 私を救う方法はそれではない、私を救う方法は一つ、救難きあの世界を救う事だ。さァ!!勇者よ救ってくれ!!!!私が救えなかったあの世界を!!!!!!!!! 』






魔王は椅子から飛び上がると勇者へと降りかかる!!

勇者は咄嗟に剣を抜く__




















『 …?! 魔王、なぜ、このくらいの一打……避け切れたはずだ…?』



勇者の剣は魔王を串刺しにし、腹を貫き背中から飛び出ている

魔王はそのまま勇者に覆い被さると小さく呟く




『 キミを、私の、、私の最後の魔法から避けれなくするためだよ、、、、さぁ、いってくれ、救ってくれ、最後の勇者、真なる勇者よ、、』




『 ?!! 』








覆い被さった魔王は勇者の両肩を掴む。

何色とも形容し難い光が勇者を包む。

そして数秒の時が経った時、魔王の部屋には勇者の剣が刺さり息絶えた魔王だけが残された___








何日か経った後、残された亡骸と剣を見つけた王国の者は 勇者が魔王を討ち取った  と確信し伝え 戦争は勝利 で幕を閉じたのだった。




戦争が終わり、パレードが行われる。





しかし、



そこには勇者の姿はない__
























『 ここは… どこだ…… …』





『私は魔王をこの手で… 打ち取ったのか……?』





『… いや、そんな簡単なはずはない……影武者か、何かの罠か………しかし、剣を失ってしまったのは痛手だな……』





『どちらにせよここから出なければ……』











勇者は周りを見渡す


目にうつるのはいくつのもの扉







『 …魔王の魔法でダンジョンにでも送られたか…… だが100を超えるダンジョンを突破してやつの元に辿り着いたということを忘れたのか……… ? こんなダンジョンすぐに攻略して再び奴の元へ…… 』







ドアのひとつ、そのドアノブをガチャリと回す




ドアは開くて狭い個室


そしてそこには白く光り、中心には穴のある異形のモノ


見知らぬソレを前にも勇者は身構える






『魔王の手先か…?!』



『……』






まてども返事はない、それどころか微動だにしない





『…手先ではなくトラップか? なんにせよこの扉は後回しにしよう』




勇者は続けて隣のドアをあける。そこにもまた白く光る中心に穴のあるモノ。





『…ここもか』






勇者はさらに隣のドアを開ける、そこもまた同じモノ。






『……何か仕掛けや謎解きがあるのかもしれない』




勇者は個室に入り辺りを見渡す。



『 見慣れぬ文字が多いな、それからこれは魔法の巻物か何かか…? 白くて何も書いてないが… それにこの白いヤツの真ん中の穴、よくみると水が溜まっているぞ。

もしや、この水とこの巻物を使えば出れるかもしれん』




勇者はさっきまであけた個室ひとつひとつを見て周ると静かに悩む





『 巻物の分厚さはそれぞれだが個室内はどれも似た作り、つまり、巻物に記されてる事は全て違うということか…ならばなにか正式な順番を暴き出しこの水で何かしらをする必要があるはず……

とりあえず他のドアもあけてみよう…何か新しいヒントがあるかもしれない……』




勇者がドアノブに手をかける、が、他の扉とは違う。

ドアはあかず、中から冷たい声が響く。






『 はいってまーす 』





勇者はドアノブを握りしめたまま凍りつく、聞きなれない言語、未知のトラップ。

勇者はこの未知の迷宮から脱出する事ができるのだろうか…?







次回 『『  迷宮の名はトイレ 』』 ご期待ください。








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