【一場面小説】ジョスイ物語 〜官兵衛、三成に引き継ぐノ段
島津を降し九州征伐を終えた秀吉と官兵衛は、この間の戦で荒廃してしまった博多の復興に着手した。
「これがあります故、頗る捗ります。」
今では治部少輔に出世した石田三成。珍しく白い歯を見せ、利発で可愛らしかった懐かしい佐吉の貌を見せた。一旦、算盤の音が止んだ。
この間、官兵衛は戦で焼けた古からの貿易港、博多の復興に取り組んできた。家老久野重勝と思案した町割りは仕上げの段階に入った。が、肥後で乱が生じ黒田は救援に赴く為、三成ら奉行衆に役目を引き継ぐことになった。
此度の町割りに島井や神屋ら地元商人は欣喜雀躍し、金も労力も躊躇わず供出したが、その先の目論見まで識る者は少ない。唐入りだ。秀吉はここを兵站基地にして、博多商人らの大切な取引相手の明、朝鮮を侵さんと企んでいる。これを知れば彼等が激しく抗拒すること間違いない。
官兵衛は懸念を伝えたが、殿下のご叡慮ですから、と三成は目を逸した。斯くして二人の引き継ぎは終結し、再び算盤の音が鳴り始めた。