7月7日の七夕に
さぁ~~今日は那奈美ちゃんが楽しみにしている7月7日の七夕である。世間では七夕は、織姫と彦星が天の川を挟んで向かい合っていて、年に一度だけあえるってものだよね。この物語は元々中国のお話がもとになっていて、日本の風習と合わさって作りあわされた風習なんだ。
夢多き乙女たちが、作った物語なんだろうね。一年中想い合って、年に一度だけしか会えないってせつないよね。今はそれよりも願い事を書いた短冊を笹の枝に吊るしてお祈りするってことの方が伝わっているよね。
かくいううちの高校も、小学校や中学校じゃなくて、高校だけど、そういう日本的文化は取り入れられている。こういう時は男子学生が、教員に連れられて、学校の裏にある竹藪から、数人ががかりで竹を取ってきて、学校の正門付近に飾るんだ。
この行事は創設時からあったようで、廃れることもなく年々受け継がれている。女子はみんなウキウキして、竹に折り鶴やくず籠(紙で作った箱)などを飾り付けをして、願い事を色とりどりの短冊に綺麗に書いて、吊るしていく。僕も那奈美ちゃんも勿論短冊に願い事を書いた。
僕の願いは、『那奈美ちゃんが危険な目にあいませんように』ってこと。今回の七不思議にしてもそうだけど、オカルティックなことがあれば、それに夢中になって少々の危険は無視して進んで行ってしまうからだ。なので、小さい頃から僕は、那奈美ちゃんのお目付け役なんだ。ちなみにうちの学校は短冊に願い事を書くときにフルネームを書く風習がある。
これだと見られたら、誰がどんな願いを書いたかわかってしまうので、あまり大ぴらには書けないことが多いんだよね。なんとでも名前を書かないと織姫様や彦星様がその短冊の願いを誰が書いたか、わからないから叶えてくれることが出来ないからだそうだ。
遠い星から、豆粒みたいに小さい短冊の文字は読めても、誰が書いたかの特定はできないらしい。大変だね。神様たちも。
僕も名前は書いたけど、これに関しては、もう周りは周知しているから「天宮君も大変ね~」で済むお話で色恋のお話には繋がらないのだ。
ナナちゃんが書いた願い事は『私がわくわく出来る不思議な出来事にあえますように』だ。
僕の願い事とは、反対のことが書かれている気がするのは、気のせいだろうか?願わくば、織姫様がナナちゃんの願いごとを叶えた時は、彦星様は僕の願いを叶えるように頑張って欲しいものだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そういった感じで飾られている竹の前で僕は待っていた。那奈美ちゃんを。
「トシ君おはよ~~~。お待たせ~~~」
待ち合わせ時間ぴったりにナナちゃんが来る。前の正門からではなく、後ろの学校の建物の方から。振り返ってみてみると、そこには袴姿の美女が長い髪を後ろで束ねて立っていた。ま~ナナちゃんなんだけど。中学時代は彼女は弓道部だったのだ。僕らの中学は、生徒数が全校生徒200人で、一クラス約30人が2クラスの小規模な学校だったんだ。
そのため、部活動は強制参加だったよ。男子は、剣道、陸上、野球、卓球の体育関連の部活動オンリーで。女子は、バレーボール、ソフトボール、弓道&茶道の3つから選ぶことになってたんだ。
中学時代は、僕は剣道を彼女は弓道をしていたのである。本来は僕たち二人とも文科系の部活動をしたかったんだ。
「ナナちゃん。おはよう。早いね。もう着替えたの?」
「ふふん。どう?2年経ってもまだまだ着られるでしょ?どう、似合っているかな?」
といって、その場でゆっくりと一回転した。
「うん、とってもよく似合っているよ。中学時代と変わらずにね」
「ありがと、トシ君。さっ、トシ君も早く剣道着に着替えてね。これから、タイムスリップするかもしれないんだから、タイムスリップ先の服装に合わせておかないと、不審者扱いされて逮捕されちゃうかもよ」
「うん、わかったよ。教室ですぐに着替えてくるね。ちょっと待っててね」
「私は、虹を作る準備をここでして待ってるから、急いでね」
「は~~~い」
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