殲滅完了、そして旅へ〜東門・南門etc.〜
その魔法を見た全ての者達はそれぞれの反応を示した。
ある者は世界の終焉だと。
ある者は神の怒りだと。
また、ある者は聖霊が持つと言われる神槍による力だと。
だがこの魔法を見た全てのものは知らない。これをたった1人の魔法師でもないものが実現させたものだと。3人を除いて。
***
とある城でー
「これは...」
とある王国の王女・王子はいう。
「これなら僕らがいても問題ないんじゃない?」
「そうね。私たちみたいな人も匿ってくれるかも...」
その2人は『元』王女・王子だった。
「そうだね...僕たちみたいな人は嫌われるからね。この『冰炎紋(カワラヌ標)』を持つ人は...」
そして2人は向かう。その巨大な魔力が動いたその現場へと。
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〜リーズ防壁南門〜
「それじゃアリス、いいかい?」
「う、うん。大丈夫...だと思う...」
「おっけー。それじゃ行くよ...」
レンジスはアリスに向けて魔力を集中させる。
『魔力増幅』
瞬時、アリスの魔力が普段の1.5倍に増幅した。レンジスなら最大10倍にまで増幅させ、さらに重ね掛けも可能だが被付与者のことも考えてしなかった。今そんなことをしたら大問題である。万が一、魔力感知で自分の凄さを知られたら自分を求めて世界中で争いが起きるかもしれない。それに変な奴が来ることもあり得る。だから加減を覚えないといけないのだ。しかし...
「これは...少々枷を外さないと厳しいかも...」
「レンジス君、大丈夫?」
「ああ、問題ないよ」
「でも...『魔力増幅』って超文明の魔法だったんじゃ...」
「それは後でいい。とりあえず、目の前の敵をなんとかしないと」
「そ、そうですね...でも、どうやって...」
「アリス、僕の詠唱を真似して言ってみて?」
「わかった、やってみる」
『『・・・』』
レンジスとアリスは詠唱を始める。不思議なことにアリスはレンジスと同じ詠唱をできていた。
(...?どういうことなの?普通、他の人の詠唱なんて真似もできるはずないのに...)
しかしアリスの疑問は捨てられる。戦場でそんな質問をすることが愚かだとは流石のアリスもわかっていたのだろう。
そして2人の詠唱は終わり、構築の段階に入る。この間、1sにも満たない。
『『構築...圧縮』』
そしてその魔法を放った瞬間、目の前にまで迫っていた魔物たちの姿が消えた。
「え...?レンジス君、魔物は...」
そしてレンジスは無言で下を見るよう視線で促す。そこには数秒前まで魔物だった血肉が散乱していた。
「うっ...」
なぜ下を見るよう促したのか。普通ならこう指摘され、非難されるだろう。だがこれも旅に連れて行く人には必要なことなのであるとレンジスは思っている。これに慣れないと、この先あまりにも危険だから。
「大丈夫かい?」
「だいじょうぶ...だとおもう」
「わかった。じゃ次、行くよ」
『『・・・』』
そしてレンジストアリスは次の波を迎え撃つべく、詠唱を始める。
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〜リーズ防壁東門〜
「ううう...大丈夫かしら、オルン...」
「大丈夫ですよ。我が友であり魔王のイリスがついているのですから。心配には及びません」
彼女らはオルンがイリスたちを置き去りにして無双状態になっていることに気づいていない。この先気づかないことを祈ろう。
「それよりも我らはこちらのことに集中しないと」
「そう、よね。これしきのことを乗り越えないと、レンジス君に笑われそう...それだけは勘弁よ!」
「フェリス...どうして前へ進むのですか?」
「うっさい黙って集中してるの!」
フェリスは何を唱えているのだろうか、詠唱の言葉を理解できているアルファでも理解できていなかった。
(これから何が起こるっていうの...?)
そしてそれは解放される。フェリスの手に、剣として。
「らっしゃーまとめてくたばれ!」
『閃一残!』
フェリスが剣を振るうと、広がっていた魔物たちは分別なく全て足と生き別れになった。不思議なことは、彼らは足と別れ別れになっていることに気づいていないことである。
「ふう...とりあえずはこんな感じかな!あースッキリした!」
「フェリス...あなたは一体...?」
不意に思ったアルファはそう問う。
(もしかしたら彼女はあのーー)
答えは...
「あたし?あたしはあたし。ただのフェリスよ」
「そう、ですか...」
そう返ってきた。
(やはり彼女はあの....)
そんなことを考えながら不思議に生きている魔物たちを焼き払うアルファであった。
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リーズ上空にてーー
「ちょっと!いつになったら落ちるの!逆に押し返されてるんだけど!」
「わかりませんよ!だからって俺の髪を引っ張るのやめてくれって!」
”傍観者”たちは揉めていた。
「まあこれで人間たちの平和ボケも少しは治るでしょ。治るわよね?」
「だから圧かけるのやめてくださいって!辞めますよ!」
直後、爆音。
「え?なんて言ったの?聞こえなかったわ。もう一回お願いできるかしら?」
「私はあなたに一生の忠誠を誓います!」
結局やめれない男。
(はあ、いつまでこの人の踊りについてかなきゃいけないのかな...)
「あ、地上の魔物少し強くしといてね☆」
「今いうんすか!?もうちょっと後でも...」
「お願いね??」
「わかりましたぁ!」
(くっそー人使い荒すぎだろ!)
苦労性の男はまたもや働く。
だかこのやりとりを見ているものが2人ーーー
***
あれは何をやっているんだ?
それが僕の率直的な感想。
「ねえ、どうかした?ボーッとして」
「ああ、いや。彼はどうしてあんなに抑えているのかなって。彼が本気を出せば、気づかれることなく全ての魔物を殲滅できているだろうに」
「そうね、なんでなのかしら。あんなに子供を集めて...しかも掃除までさせてるじゃない」
「でも、その中にも興味深い魔法を使う人もいるよ。いや、そもそも魔法じゃないかもしれない...」
「?!ねぇ、それって...」
「うん、僕らはやっぱりあそこにいくべきだ」
「やっぱり、そうなるのね...」
2人は空でそんな会話を重ねていた。
「じゃあ、あの戦いが終わった後に行こう」
「ええ、入れてもらえると嬉しいのだけれど...」
彼らがレンジスたち一向に加入するまで、あと数十分。
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うぉい、なんだあれは?!
南方面の敵を全て全滅してから気づいた。西門で、ものすごい現象が起きていた。
それは空に浮かぶ、巨大な剣。それが何十本もある。
あんなん落とされたら、ここら辺一帯が吹き飛ぶ!
しっかし、なんであんなんを使うんだ?
とりあえず、今はそんなところじゃない!
「アリス!おるんたちと合流して東門で待機!僕たちが合流次第、すぐに出発だ!」
「わ、わかりましたぁ...でも、私まだ...」
「そんなことは手紙でも書いて門番がいる部屋に置いておけとみんなに言ってくれ!とにかく急がないといけないんだ、また後でな!」
そして僕は全速力で西門へと向かう。
どうして『聖霊体一』なんて使ったんだ?リーフェ...
「これは...」
『これが私の力。とりあえずゴミどもをなんとかするから、始めてくれない?』
「わ、わかった...」
そしてリーフェは魔力を集中させて行く。それをシルが魔法として顕現させる。
『戦神の天撃...』
それをリーフェとシルが発動しようと...
「ばっきゃろー!それを打つんじゃねー!」
あっぶね!
後少しで手遅れになるところだった。
万が一のため、リーズ全体を僕が独自開発した魔法で防御していたけども、これを防げても、周りはそうじゃいかない。自然破壊なんてもの優しい言葉になってしまう景色が広がるのだろう。それを阻止できただけ万々歳である。
「リーフェ!どうして聖霊体一をつかったんだい!?」
「え...シルが使わないと今の私じゃ倒せないって...」
「それはわかっている!でもこんな大規模な魔法使わなくてもいいんだ!」
「そ、そうですよね...」
「じゃあどうして...」
「私、こんな魔法発動させる気はなかったんですけど...」
ということは...
「シル!でてこい!今すぐしばき回す!!」
「シルが『謝るから許して』と...」
「はあ...それはまた後だ。とりあえず...」
そして僕は振り向かずにリーフェが無理だった魔物たちを瞬殺する。
「とりあえず、僕らは東門に行くよ。そこから僕らの旅は始まるんだ」
「わ、かりました。その...レンジスは...」
「僕は少し遅れるよ。多分人を連れてくるから。先言っててってオルンたちに言ってくれないかい?」
「わかりました」
そう言ってリーフェは東門へ向かう。さて、シルにはどのようなお仕置きを...てそうじゃない。
「おーい、人払いは済んだぞ、出てこいよ」
そう言う。
「へい親方、空から元王子が!」
「はあ?!」
上を向くと本当にいた。降ってきていた。王子みたいな人が。そして隣で親方とか言ってくる王女みたいな人もいた。
誰なんだ?こいつら...
***
「やっぱり彼はすごいね。あれほどの魔法を...」
「そうだね、兄さん。でもやっぱり兄さん...」
「うん。気づかれてるね。あの2人も」
「そうですよね...私たち、本当に入れるのでしょうか...」
「大丈夫だよ。彼も僕たちの目的はわかってくれるだろうから」
「そうですよね!なら私は先に行って参ります!」
「あ!待てよ!」
そうして2人はレンジスの元へと向かって行った。
「とりあえず、うちの妹がすみませんでした」
「ああ、大丈夫だよ。んで、2人は...」
「申し訳ない。名乗ることなどなにぶん忘れていたもので...名前はあなたがつけていただけないだろうか?」
まじか?2人分の名前か...
「その...2人は兄妹なのか?」
「ええ、双子ですよ」
まじか。それじゃあ...
「わかった。兄は『レイア』、妹さんの名前は『サクラ』だ」
「ありがとう。私はこれから『レイア』と名乗らせていただくよ。早速だけど...」
「おう。上で見てたんだろ?それで俺たちについて行きたいと。いいぞ?」
「話が早くて助かるのですが...いいのですか?そんな余所者をすぐに認めても」
「その辺の勘は一度も外れたことがないのでね。万が一外れたとしても、とっておきがあるから」
「そうですか...それなら、安心ですね」
さっきから妹さんが会話に参加していない。多分この手の会話は苦手なのか?
「ちょっ、絶対今私に失礼なこと考えてたでしょ!」
「いやいやそうじゃないよー?」
「絶対よ!ニヤニヤするな!私もそんな話できるんだから!」
サクラが喚く。ふふふ、可愛い。思わず口がにやける
「だからニヤニヤするなぁ!!」
「さて、それじゃ仲間の元へ行こうか」
「親や使用人に挨拶しなくても?」
「大丈夫さ、また会える」
「...そうですね。そうでした」
「そうだ。僕は目的は必ず達成させるからね」
そして彼らは東門へと向かうが...
「...私を無視するなーー!!!」
そんな悔しさまみれの声が静かな平原に響いたのだった。
***
「初めまして、レイアです。そしてこっちで不貞腐れてるのが...」
「...サクラよ!!」
「レンジスさんに拾ってもらいました。旅の一向に加わります。これからもよろしくね」
今更なんだが、双子なので揃って顔つきがいい。親の顔も相当だったのだろう。現にレイアはフェリス、リーフェ、アリスが、サクラはオルンが見惚れてしまっている。おいおいこの先大丈夫だろうか...まあオルンとフェリスは大丈夫か。
「おっほん!とりあえず当面の目標は冒険者として身を立てていくことだ。だからまずはここから最も近い冒険者ギルドがあるフレオにむかう。そこでレイアとサクラの冒険者登録を行ってから世界を放浪するつもりで頼む」
「わかったわ」
「わかりました」
「了解」
それぞれが各々の反応を示し、理解の返事をしてくれた。
それでは始めよう。僕らの冒険(物語)を。
これがのちに伝説と呼ばれるパーティーの原点である。