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魔導旅記〜魔法を極めるために旅をする〜  作者: 哉瀬
エールヘッジ王国〜エリャグル山郷編〜
30/30

始まり

「はーいお疲れ様。特訓終了でーす」

 箱の中の世界に声が響き、中から僕の愉快な仲間たちが飛び出てくる。

 しかし、その顔はとても生きた人間のそれではなかった。

「それでは死にかけの皆さんに朗報です!」

 返事がない。ただの生き死体のようだ。

「こちらをどうぞ〜...」

 左側へと視線を誘導する。

 すると見えたのは...

 またもや箱。

 それをみた仲間たちはパニック状態となった。

「それではご開封〜〜」

 パニクってる仲間にお構いなしに箱を開ける。

 すると見えたのはーーー

「夢の世界に行ってらっしゃ〜い」

 またもや吸い込まれていった仲間たち。

 だがしかし、今度戻ってくる時は生き死体が本物の生きた人になるだろう。

「ふふふ...インターバルトレーニングはまだまだこれからだぞ...」



「さて...それじゃ、行こうかな」

「父さん」

「なんだい?ミリス」

「ここに来た目的、忘れたの?」

 ...

 すっかり忘れてた。

「おいアレス!どこにいるんだ?!」

「ど、どうしたんだレンジス?」

「お前の親父に会わせてくれ!!」

「あ、ああ...お前の望みがそうなら父上に交渉してくるが...今更父上に何の用なんだ?」

「それはいまはどうでもいい。なるべく早く会いたいんだよ!」

「せ、急かすなって...わかったよ」

 アレスが小走りで去っていった。

「父さん、私たちはどうするのですか?」

「んー...ミリスも箱の中に入ってみる?」

「有り難く遠慮いたします」

「秒ですか...」

 ミリスはこの箱のどこがいけなかったんだ?

 入れば夢のような世界が広がるだけなのにな...本人にとってだけど。

 まあとにかく。

 とりあえず、ここにきた目的を達成しよう。

「まずは...っと」





 しばらく経った後。

 アレスがやってきた。

「父上、お前に会いたがってるぞ」

「だろーな...」

 まあ、早く会いに行こうか。

 そんなことを思いながら、アレスの後ろをついていく。

 ...

 しかし。

 僕には思うところがある...

「そう言えば、お前、リシアはどうした?」

「......」

「...またか?」

 こくりと頷いた。

 ...ハイエルフの後継たち、自由すぎんだろ。

 いずれ森の守護をほっぽってどっか新天地を求めて旅立つんじゃないか?

「お前も大概だが...何で外に出るんだ?」

「それは...」

 会話が止まる。

 なんか必死に理由を考えているようだが...

「結局、ここが窮屈なんだろ」

「うぐっ」

「図星か」

「うるせぇやい」

 男同士の絡み合い。

 女同士の絡み合いにもある、それ(・・)

 もはやテンプレと言ってもいいね。

「おっほん...レンジス、ついたぞ」

「うむ、案内ご苦労」

 そんなことをしている間に、ハイエルフの王の間に続く扉の前についた

「何で上からなんだよ...」

「そんなことはどうでもよかろうて」

「どうでもって...まあ、どうでもいいか。この先に父上がいるから、あとはおすきにどうぞ」

「いいのか?ありがたいな」

 さて...

 レス、どんな感じになってるかなぁ...




「久しぶりだなぁ!レンジスよ!」

「レスのおっちゃんも久しぶり。やっぱり変わってないなぁ」

「もちろんだ。我らハイエルフは長命種の中でも最も長い寿命を持っているからな」

 ハイエルフが長命種だということは一般的に知られている。

 その平均寿命は一万年をゆうに超える。

 中には十万年も生きたハイエルフもいる。

「僕らにとっての十年は、ハイエルフにとったら1時間くらいか?」

「ハハハ、そうかもしれないのぅ」

「貴様!王に対して無礼であるぞ!」

 王への態度に憤った新人の守衛がレンジスを斬り捨てた。

「王よ、ご安心ください。この無礼者の死体はすぐに...」

 ...はずだった。

「馬鹿者が...」

「はい?」

「お前、俺を斬ったということは、俺に殺られる覚悟があっての上のことだよな...?」

 新人守衛の背後にとてつもない覇気を持った人が首に刃物を突きつけている。

 その守衛は怯えるあまり、股の間から湯気を出していた。

「はぁ...おいレンジスよ。その辺で許してやってほしい。頼む」

「...おっちゃんがそういうならいいぞ」

「守衛よ。この者にはワシに対する無礼を許しておる。この者を傷つけるものはワシを傷つけたということと同じだと思え」

「はっ」

 こういう時に限っては聖王の雰囲気を出しているな...

「今、お主ワシに対して失礼なこと考えていたじゃろ」

「考えてねぇって...それよりも、お願いがあるんだよ」

「なんじゃ?最も請けるかはそのお願い次第じゃが」

「いや、絶対受けてくれるさ」

「ほう?」

 レスのおっちゃんが耳を傾ける。

「ちょっとーーー」

「で、伝令、伝令!!」

 お願いを言おうとした瞬間、扉が開いた。

「なんじゃ、ワシは今応対中なんじゃ、手短に頼む」

「そ、それが...」

「はっきりと言え。時間がないんじゃ」

「そ、その...我らの里に、魔族どもが侵入してきました...」

「なんじゃと?!」



「ふぅん...」



***



「サクッと侵入できちゃったね」

「そうだな...」

 男女はいう。

「しっかし...何で僕らが...」

「しょうがないだろ。俺らは先鋒なんだからな」

「でもねぇ...」

「文句は今なら無料で聞くぞ」

「っ...なんでだよ〜〜!」

「...」

「なんでだよ!何で僕らまで巻き込むんだよ!」

「そうだな」

「僕ら”穏健派”まで巻き込みやがって!なにが魔王様のためだ!」

「ああ、そうだな」

「あいつら魔王様の不在を理由にいいように魔族を脅してからまとめ上げやがって...だからあいつらは好かれないだよ!!」

「お前の言う通りだよ」

「だいだい魔王直属の四星死王(スーデノス)はどうしたのさ!何でこんな時にいないんだよ!」

「確かにな」

「こんな時に不在とか...最悪だよ全く...!」

「単純にお前の指示が細かすぎて聞きたくないだけだろ、魔王様の右腕殿」

「君に言われたくはないよ、魔王様の左腕殿」

 彼らはこのあとその敬愛する魔王様に再開し、川を渡りかけることになる。



***



「防衛を急げ!何としてもこの里を守るのだ!」

「「はっ!」」

 レスは素晴らしい指揮力で馬の混乱を鎮めた。

「すまんなレンジスよ。この通りドタバタしておるのでな、客室で待ってもらえぬか?」

「ああ、それはいいが...助力は大丈夫なのか?」

「もちろん大丈夫だとも。我らよりも脆弱な魔族如きに後れをとるなど微塵も思っとらん。それに、人はそんなに(・・・・・・)戦力にならん(・・・・・・)からの」

「...わかりました。それではまた」

「おお。次に会える機会を心待ちにしておるぞ」

 レンジスはその場を去った。

 そして、ミリスに伝えた。

『ミリス、聞こえるか?』

『はい、父さん。何か御用ですか?』

『仲間に連絡だ。里を壊さない程度(・・・・・・・・)に暴れて注意をひけ、と伝えてくれるか』

『わかりました。父さんは...』

『僕はちょっと野暮用だよ』

『...わかりました』

 通信を終える。

 ちなみにさっきの通信はミリスを中心とした、魔力を送るだけで遠隔で喋れる魔術だ。

 これをぽろっと口から零してしまうと全世界からミリスが狙われることになるので、仕組みは口が軽すぎる仲間には話していない。

 簡単な使用法だけしか教えていない。

 このままだと僕の秘密、どんどん増えていくな...

 いつの日か、心から信頼できる仲間がいてほしいものだ。

 さて。

「じゃあ、掃除を始めようかな」

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