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魔導旅記〜魔法を極めるために旅をする〜  作者: 哉瀬
エールヘッジ王国〜エリャグル山郷編〜
29/30

次期聖王

 耳を疑った。

「それは本当なのか?」

 ハイエルフの王子を疑っているわけではない。

 ハイエルフは周辺の森の管理をしているのだ。つまり、ハイエルフが森のことについて知らないことがないはずがない。

 なのに、この呪いは知らない。

「本当だ。俺の名にかけてだ」

「...そこまで本気なら本当なんだろうな。この呪いは知らないと」

 しかし、それにしてもおかしい。

 全員僕が鍛え上げた仲間たちだ。少なくとも、こんな脆弱な呪いにはかからない。しかし、かかった。それも、僕以外の生身の人間が、だ。

 リーフェまでかかったのがおかしい。リーフェは僕が一番手塩をかけて育て上げた。物として言うつもりはないが、いわゆる僕の最高傑作なのだ。その実力は僕に一番近いと言ってもいいと思う。当然、あらゆる耐性魔法を身につけ、常時結界を展開している。

 そのリーフェまでもかかった。だとしたら僕もかかってしまうのが筋なはずなのだ。

 しかし、僕はかからなかった。

 ここに違和感を感じる。

 ミリスは人ではないので、かからないと言うことはそこまでおかしくはないと思う。

 だが。

 ヴァインもかかっていた。

 そうなると、ミリスはかからなかった理由がわからない。

 以上から立てられる仮説は...

『動物、それも高い知能を持つ有機生物のみがかかる呪い』

 だと...思う。

「...以上が僕の仮説だが...どうか?」

「...僕もそう思うよ。えっと..ちなみにミリスちゃんって...」

 思いっきり威圧した。

「ん?聞こえなかったなーもう一回言ってもらえるかな?」

「な...なんでもありません...」

「そうか?ならばいいや」

 ミリスはゴーレムだと言うことは何人たりとも知ってはならない。

 僕でさえ、信用できる仲間にしか話していない。

 アレスも僕の古い知り合いではあるが、なりすまされている可能性を考慮し、話さないことにした。

「...話を戻すが、仲間の呪いを解いてくれってお前の姉にお願いできるか?」

「あ、ああ...いいぞ?」

 完全に僕に恐れている。

 そりゃ人の触れては行けない逆鱗に触れたからね!!

 僕、逆鱗何個あるんだろうか...


 しばらく歩いた。

「ここが俺の部屋だ」

「お前の姉の部屋に案内してくれたらいいものを...」

「いやっ、いいんだっ、俺の部屋で!あ、そーだ、姉さん呼んでくる!檻から出す準備しとけよ!」

「あ、ちょっーーー」

 ダッシュで姉を呼びにいったらしい。

 ...なにがしたいんだ。あいつは。

「はぁ...」

「父さん、なんでため息をついているんですか?」

「ああ、いや、ね...」

 僕は視線を向ける。

「僕ら、やっぱり信用されてないなって...」

「?そうですか」

 ...実に残念だ。

「おーい!呼んできたぞー!」


「こちらが俺の姉のフィエ。で、こっちが....」

「我こそが次期聖王である、レニウスである!」

 ...誰だこいつ。

 めちゃくちゃ上からやん...

 ミリスよこせって言ったら殴ろ...

「痴れ者が。頭が高いぞ。跪くがいい!」

 ...なんか関係なしにキレそう。

「ぬ?おお、そこの娘!綺麗ではないか!」

「...ぉぃ」

「そこの娘!我の側付きを許す!我に仕えるがいい!」

「えっと...その...」

「...おい」

「ん?喋れると思って話しかけているのだが...いいだろう!ではこうしよう!我のさっきの問いにはいかイエスで答えるといい!」

「おまっ、やめろ!」

「ん?なんだ兄上?我は次期聖王なのだぞ?我こそが全てであるのだ」

「それ関係なしにまじでやめてくれ!」

「我は欲しいと思ったものは必ず手に入れる主義である!他の人がいいえやノーと言っても関係ない!」

「おい」

「いい加減にしろ!お前にまだ兄の安全を憂う心があるならもうやめてくれ!」

「何を言っている兄上?我はただ...」

『おい』

「「?!」」

 その場の空気が揺れた。

「さっきからごちゃごちゃ好き放題言いやがって...」

「なんだ?不遜な態度を取るのではない!平伏せよ!」

「うるせぇよボンボン王子」

「な?!」

「世の中を知らない王子が好き放題言ってんじゃねぇよ、ああ?」

「な...ば...」

「さっきから俺の愛娘をあたかももう自分のもののように言いやがって...」

「...」

「ミリスは物じゃねぇよ!!わかってんのか!!」

「...だ」

「ああ?」

「もう我のものなのだ...」

「あ?なにがだ?」

「その小娘は我の側付きとなったのだ!」

「まだ言うか...?」

「何度でも言うぞ!その小娘は我の側付きなのだ!異論は許さぬ!」

「駄々を何回捏ねるつもりか?」

「う、うるさい!我のパパとママに言いつけたら1発だぞ!」

「お前は親の権力を借りて威張ることしかできないのか?」

「黙れ!黙れ黙れ黙れ痴れ者が!」

「人の大切な存在を物として扱い、それを奪い、さらに拒否されたら親の権力をかざす...」

「だからなんだと言うのだ!」

「お前、相当なクズだな」

「...」

 殺気威圧放ちまくり。

 部屋の中は相当なレベルの域じゃないと意識を持つことさえ許されないほどだった。

 ただこのボンクラ王子、意地だけは評価できる。

 意地だけで気絶せずに俺に歯向かってくるからな...

 だが、こいつは...

「お前は手を出してはならないものに手を出したんだ、その覚悟は...できてるな?」

「いやだ...いやだ...」

「今更許して欲しいのか?」

「そ、そうだ!特別に我が許してやる!だから」

「立場が逆だろうが!何お前が被害者になってやがる!加害者が!」

「ひぃぃぃぃ!!」

 こいつは救われないな。

「お前は走馬灯ってやつを見たことあるか?」

「な...な..い...」

「なんなら見せてやるよ」

「や...やめ...」

「今更遅いんだよ」

 俺が魔法銃(エンチャントガン)の引き金を引こうと...した。

「やめろ!」

 アレスが間に入ってきた。

「...お前、こいつを庇うのか?」

「...」

「何も言わないなら退け」

「...」

「...」

 アレスをどかした。

 そして...また間に入ってきた。

「お前は何がしたいんだ?」

「...」

「何か言わないと、お前がなぜそこにいるのかも見当がつかない」

「...」

「...付き合ってられないな」

 魔法銃を収める。

「...して、フィエさん?」

「ひっ?!」

「こちらの仲間たちの呪いを解いてくれるか?」

「わっわかりましたぁ!!!」

 あらら。

 さっきのやり取りで完全に僕に怯えてる。

 いつか、怯えなくなる日が来るかね...



「ここは...」

「よう。随分と間お眠りのようだったね諸君?」

「「え?」」

「さてそんな諸君に今日はプレゼントがありまーす」

「ええ?!師匠プレゼントあるんすか!?」

「そうともそうとも。こっちに用意してあるからな。この箱を開けてみな?」

「なんだろうなー?」

 箱を開けた瞬間。

「う、うぇぇぇぇぇ?!」

「「ああああああああ!!」」

 レンジス一行からレンジスとミリスを除いた、他全員が箱の中に吸い込まれた。

「父さん、これって?」

「ああ、生き残りゲームだよ」

「...父さん、趣味悪い」

「しょうがないさ、呪いに耐えられるだけの結界を常時張ってもらえるほどじゃないと、この先僕についていけないだろうからさ...」

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