エルフの実態
エルフ族。
治癒魔法系統が得意な存在。
一般的には森と共に過ごし、とても温和な性格。
という設定になっている。
どの国の書物にも、とある英雄が残した手記にも。
しかし、その実態は...
「あいつらに会うためには...入るしか...ないよな?」
「入るしかありません。そうしないとジリ貧ですし、食糧が尽きてしまいます」
「だよなぁ...嫌なんだけど」
「なぜですか?エルフは温和な性格と言われています。支援してくれると思いますが」
「ミリスはエルフの皮の裏を知らないからそう言えるんだよ...」
「わかりませんね。それでは、私1人で行ってきます」
「あ、待てミリス!!」
行ってしまった。
こうなると僕でも止められない。
せめて、ミリスの無事を願おうか...
数十分後。
ミリスがとてもしょげた顔で帰ってきた。
「父さん...父さんが言いたかったこと、ようやくわかりました」
「わかってくれたか...父さん、嬉しいな...」
「よくわかりました...エルフ共はいつもあんな感じですか...?」
ミリスが恐る恐る聞いてくる。
「...ノーコメントだ」
「私は書物でしかエルフの話を聞いたことがないので、あれは知りませんでした」
「そうだな...まあ、そういう側面を隠すために、美化してしまくったからね...本来のエルフの姿を隠すために」
「でも、物資は底を尽きかけています。これはなんとかしないといけません」
「そうなんだよなぁ...」
レンジスは覚悟を決めた。
本来の姿とは言っても、外見がとても人外でしたというわけではない。
エルフ族、その本来の姿。
それは...
「あ、旅人ちゃんよ!みんな、争奪戦の始まりヨォ〜!」
オカマ。
そして...
「あっちには可愛い女の子がいるじゃない!あれは私のものよ!」
「え〜!?私のものよ!」
「違うわよ!あれは私と愛し合うの!」
百合。
さらには...
「いいガタイの男がいるじゃねぇか」
「本当だな...さて、どいつにするか?」
「俺はあいつで」
「いや俺があいつだよ」
「ふざけんな!俺があいつを取る!」
「俺だ!」
「いや俺だ!」
BL。
これがレンジスが里に入りたくなかった理由である。
里に一歩踏み入るだけで、男はエルフの男共に、女はエルフの女共に追い回される。
そして、捕まったら最後、エルフの里から外に出ることは叶わないという。
エルフたちを守護するハイエルフたちも顔を青くしてドン引きするほどである。
こんなもんを知ったらそりゃ、隠したくもなる。
かの英雄も、ここの件についてはほとんど美化している。
こんなエルフを子供に見せるのは教育的によろしくないためである。
それでも、一部のカルト的集団による教育運動があるのだが...
一体何がいいのかわからない。
さらにここでは隠密系の魔法が使えない。
つまり、影を薄くして里に入るということはできないということだ。
補足だが、おかしいのはこの里だけで、他の世界に散らばっているエルフたち、上位存在のハイエルフは普通なので安心してもらいたい。
物資の補給のためにやむを得ず里に入ると、異常者たちに追いかけ回された。
わかっていたことなのだが、物資を補給するためにやむを得なかったのだ。
「まって〜!私の天使様〜♡」
「おい待てー!そこのやつ!おれといっしょに...」
「それ以上は言うなーーー!!!」
「父さん...先に入ってなんなんですが、この里、教育的によろしくないですね...」
「そうなんだよ...!どうにかなんないのか...!?」
逃げ続ける。
野生の猿たちとリーフェを収容した檻を抱えながら。
「どこかに隠れる場所はありますか?」
「ねーよそんなところ...!あいつら、隠れ場所は全て網羅しているからな...!」
「...詰んでませんか?」
「認めたくないが...」
そう。
エルフたちは逃げ惑う人間を見つけるために、隠れ場所を全て網羅している。
全ては自分たちの趣味を満たすために。
稀にまともなエルフが里に現れるが...
エルフ総出で挨拶を行い、仲良くなる。
そしていずれかの派閥に入るのだ。
なので、まともなエルフとなると激レアな存在となる。
一応、森の守護と魔法の探究もしているのだが...
実際会った時の第一印象が強烈すぎて、そんなことをしているのかさえ疑ってしまう。
そんな話は置いといて、だ。
「こいつらをなんとかしないと...!」
「吹き飛ばしますか?」
「ばっかやろう!穏便な方法で頼む!」
「それでは逃げましょう」
「それしかないのかよ...」
とりあえず走り続けた。
すると。
「おい、お前ら!こっちだ!」
「あなたは...?!」
「ミリス!あいつについてくぞ!」
「父さん、敵である可能性も...」
「いや、敵じゃない」
「...わかりました」
そのまま、声をかけてきたエルフの上位存在のものについていった。
「あらぁ?消えちゃったわ?」
「せっかくあともう少しだったのに...悔しい〜!」
「くそ、逃したか....次は捕えるぞ!」
異常者たちはレンジ酢一行が消えたとわかると、何もなかったように異常な日常に戻っていった。
「いやぁ、助かったよ」
「いやいや。それよりも...大丈夫だよね?」
「ああ、何もされてないから...」
「よかった...それよりも、随分と周囲が愉快になったね?」
「まあね。仲間ができたり、弟子を取ったり、家庭を持てたりできたからね...」
「いつの間にかよ...」
「父さん、その人は誰ですか?」
「ああ、ごめんミリス。紹介を忘れてたよ」
「酷くね?」
ハイエルフのツッコミは貴重だね。記憶に焼き付けておかないと。
「こいつはハイエルフの王子、アレスだよ。で、僕の影に隠れてる女の子がロドスの妹のゼーレ」
「よろしくね。えっと...」
「ミリス。俺の娘だ」
「そうか...とうとう、か...」
「ああとうとうだよバカが」
まるで久しぶりに会った男友達のように、レンジスとアレスは昔話に花を咲かせていた。実際、久しぶりに会う男友達なのだが。
話題が尽きた頃。
「ああ、そうそう。アレスにお願いがあるんだった」
「ん?なんだ?」
「仲間がいるって言ったろ?実は森の影響でこうなったんだけど...」
檻の中を見せる。
「...どういうことだ?」
「だからここにくる道中の森でこうなっちまったんだよ。精神系の呪いだと思うから、お前の姉に頼んで直してもらえるか?」
「それはいいが...森にはこんな症状になる呪いなんてないぞ?」
「...なんだと?」




