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魔導旅記〜魔法を極めるために旅をする〜  作者: 哉瀬
エールヘッジ王国〜エリャグル山郷編〜
27/30

森を進む猿たち

「ふぅ...」

 森から出られない。

 そのおかげで仲間が野生の力に目覚めつつある。

 もう以前の二の舞になるのは嫌なのになぁ...

「なぁ...みんな」

「「ウガァァァァァァ!!」」

「皆さんもう正気ではないようですよ。父さん」

 服を破り捨てて草木で下着作り出した時にはもう遅いと思ってた。

 気づけば僕とミリス以外全員が野生化していた。

 愛しのリーフェも今や猿のように木を渡り歩いて...

「なんでこうなるんだぁぁぁぁ...」

 頭を抱えた。

 状態異常じゃないため、治癒系統の魔法は通用しない。

 精神異常の系統のため、僕には扱える魔法がない。

 残念ながら僕は治癒系統の魔法は極めていないのだ。

 希望があるとしたら、アリスとリエルなんだが...

 彼らも草木を纏い、木々を伝って移動している。

 もはや唯一助けれる存在は森を抜けた先の街にいるエルフ(みみたぶ)族しかいない。

 でもなぁ...あいつら、ちょっとねぇ...

「とりあえず、森を抜けるかぁ...」






 土人族王。

 伝説の鍛治師にして、武闘家。

 鍛治師ながらも、一国の軍隊に引けを取らない強さだと言われるその男。

 彼がいるおかげで、土人族の住む地域は魔族の被害を最小限に抑えていた。

 しかし、それでも被害は出ていた。

 族王、ラタは悩んでいた。

「くそが、キリがねぇったらありゃしねぇ」

「ラタ、追撃だ!」

「ああ、わかってる」

 指示を出して下がらせる。

 しかし、この戦いはいつまで続くのか。

(そもそも魔族がここを襲う理由はなんだ?)

 ここには何もない。

 強いていうならば、少々地下資源が豊富なだけだ。

 それを狙うのならば、鉱山を襲撃すればいいだけの話なのだ。

(奴らがここを狙う理由...)

 王国進攻への足がかり?

 もっといい場所があるはずだ。

 肥えた土地を奪う?

 論外。それならここには攻めてこない。

 武器生産のための鉱石の奪取?

 それならさっきも言った通り...

(まさか....)

 もし俺の予想通りなら...

「おい!ヤガルはいるか!」

「ヤガルは今前線に出てるが...」

「馬鹿野郎!今すぐ戻して来い!」

「わ、わかったぞい」

 部下に怒鳴りつけて命令する。

 もし、魔族どもの狙いがアレなのだとしたら....

「やばいな...この国が半分消し飛ぶぞ」





 歩く。

 歩く。

 ひたすら歩き続ける。

 しかし、目的の街はおろか、森の出口すら見えない。

 それどころか...

「父さん、私たちはずっと同じところを通っています」

「わかってる...」

 そう。

 ずっと同じところを延々と歩かせ続けられている。

 こんなことをするのはあいつらしかいない。

 だがしかし、今はそれどころではないはずだ。

「うーん、結界を壊すのは簡単だけど、敵対されるとちょっとなぁ...」

 面倒しか残らない。

 しかし。

「だからといってねぇ...」

 森をずっと彷徨い続けるのは勘弁である。

 どちらを選んでも、面倒ごとが待っている。

 地上が駄目なら空を飛べばいいじゃない精神で空へと飛び立つも、地平線の先まで森が続いていた。

 地図に記すと、この森は街を囲むように直径が約27km(人間単位換算)ある。

 逆に地下を掘ればいいじゃない精神で地下を掘り進め続けても、地上に出ると森しかない。

 そう、まさに詰みという状態にある。

「あーもー、どうしよ...」

 野生の力に目覚め、本能のままに動く仲間たち。

 全てを包み込み、侵入者を惑わす森。

 そしてその森の中央にある街。

「どうして、こんなに面倒ごとが降り注ぐんだ...」

「父さん、みんな、どっかいっちゃったよ?」

「はぁ?!」

 いずれはこうなると思っていた。

 が、速すぎた。

「はぁー、面倒だ...」

 そう言いながら僕は仲間を一ヶ所に集めるべくあらゆる魔法を駆使して迷子探し(猿ハント)をした。


 数分後。

 今度は逃げ出さないように、檻の中に閉じ込めた。

「父さん、これ他の人が見たら犯罪だよ?」

「...檻なしでこいつらの手綱を握れるか?」

「わかった。何も言わない」

 流石にミリスも大変さがわかったようだ。

 仲間がこんな状態でも、ミリスだけはいつも平常。

「ミリス...大好きだぞー」

「わかってます」

 マジで天使。

 リアルに天使。

 もしミリスまで野生の力に目覚めてたらと思うと...

 とても退屈になっていたに違いない。

 野生の猿と戯れながら無言で森の脱出方法を探る、なんてとても退屈だろう。

「ミリス...ありがとう」

「いきなりどうしたんですか父さん。もしかして頭を打ちましたか?」

 とうとう変人認定されてしまった。

 しかしその程度では僕は止まらない。

「マジでありがとう...おかげで僕は退屈にならずに済んだ...この世に生まれてきてくれて、本当に...ありがとう」

「...別に」

 ミリスがでれた。

 これが所謂、クーデレキャラか!

 いいことを知ることができた。

 さて、それでは森探索を再開するとするか!



 気合を入れて丸一日後。

 ついに、森の出口に到達した!!

「「っはぁぁぁぁぁぁぁ」」

 僕とミリスは脱力した。

 そりゃもう体の骨も柔らかくなるほど脱力した。

 野生の猿(仲間)たちとリーフェの世話に精神を喰われていった。

 もう森を出たら一ヶ月ほどは休みたい。

「ミリス...ようやく外だぞ...陽の光を浴びれるぞ...」

「わかってますが...今回は父さんの今思っていることには全面的に同意します」

 僕の思ってること。つまり...

「「森を出て寝よう」」

 圧倒的睡眠不足。

 僕もミリスも、目の下にクマがくっきりと写っていた。

 なぜか。

 それはもう見ての通りである。

 野生の猿(仲間)たちとリーフェの世話に追われまくっていたおかげである。

 夜通し世話を頑張った。そりゃもう世界全体から称賛されてもいいほど頑張った。

 ミリスもゴーレムとはいえ、人にとても似ているのだ。

 無限の体力を持っているわけではない。

 なので僕同様に疲れ果てている。

 しかし。

 目の前には光が見える。

 ようやくこの狂い狂った森から出られるのだ。

 問題はここからだ。

 どうやってこいつら(狂い猿共)とリーフェを守りつつ、耳たぶ共(エルフ族)に会うか。

 だが、奴らは面倒だし...

「しゃーない、あいつに頼むか...」

「父さん、あいつとは誰のことですか?」

耳たぶ共(エルフ族)の上位存在だよ」

「...時々父さんの人脈関係には耳を疑いたくなる言葉があります」

「気にしたら負けってやつだよ」

 あいつ、元気にやってるかねぇ...

 ...?

「何か、懐かしい気配がする...」






「王よ、エルフたちが助けを求めています」

「...」

 広い部屋の中にある玉座に佇むエルフ。

 いや、エルフの上位存在。

 その種族を纏める王、レスは悩んでいた。

 今、自分の治める種族たちに問題が起こっている。

 その中で、自分たちが守護する種族たちに敵襲があった。

 そっちに割ける兵力は今は存在しない。

 しかし、守護たる存在として、自分たちの配下を傷つけたものには鉄槌を下さないといけない。

 だが、今は...という思考ループに陥っていた。

 広い部屋に沈黙が続く中、それを破ったのは...

 王の息子、そして娘だった。

「父さん!じゃあ、僕らが行く!」

「「?!」」

 誰もが驚いた。

 いや、王だけは驚かなかった。

 なぜなら息子の放蕩は止められないと昔からわかっていたからだ。

「...絶対に私の前に帰ってくると誓え。5体満足で戻ってこい。必ず、妹と共に...」

「当然です!」

 そして息子と娘は王の前から去った。

「いいのですか!?」

「ああ、君は私の息子に会うのは初めてかい」

 王は昔を思い出した。

 少し前までは、なんの意味もなく何度もこの里から勝手に出ていったいったものの...

「我が息子、アレスはなんの意味もなく里から勝手に出ているのではないよ。息子には...息子なりの考えがある。それを周りの恵まれた環境が実行してくれるのだ。今回も、優秀な誰かと出会い、無傷で帰ってくるだろうさ」

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