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魔導旅記〜魔法を極めるために旅をする〜  作者: 哉瀬
エールヘッジ王国
15/30

昇格

 あれ?

 僕のパーティーは大所帯になってきた気がする。

 おかしいな、リーズの街を出る時は6人だったのに。

 いつのまにか、9人増えた。

 このペースで行くと、旅の終わりには数百人規模になってるな...やばい。それだけはとてもやばい。ただでさえ人数多いのに、これ以上増えるとパーティーとは呼べなくなる。せめて20人程度は仲間を集めておきたい。それに、人数増えると単純に制御が効かなくなる。仮に僕の仲間がことを荒立てるとパーティー全体の信用問題になりかねない。それを避けるためにも、仲間はあんまり多くはとらない。素質が極限まで光っている子がいたら、人間性に問題がない限りは仲間に誘う。それに注意しながら今後旅を続けるとしよう。

 それにしても...

「本当に大丈夫か?魔力隠せてるよな?」

「もぅ、隠せていますってば!」

 ...本当だろうか。

 隠せているかどうか不安になる。

 これで隠せていなかったら、大騒ぎどころじゃない。

 僕が神扱いされるだろう。

 それだけは絶対に嫌だ!!

 というワケなので、厳重に魔力を隠すようヴァイン(ヴァイケイン)とメナス、アリアに認識阻害の魔法を何重にかけた。これほど緊張した時は後にも先にも多分ないだろう。創神龍を従える人間なんて聞いたことがないのだから。こりゃ、仲間にも話すの苦労しそうだな...


「...レンジス君、無事なんだろうか...」

「ばっか、無事に決まってるでしょう?!来るまで待てばいいのよ!!」

「フェリス...足震えてると説得力ないよ...」

 カイアス君の心配をフェリスが見事にブーメラン発言をし、それをオルン君が静かにツッコむ。さらにサナも混じって、もはや入り込む隙間も無くなってしまった。この場合の蚊帳の外は...

「...ねぇ兄様。あの場所焼き払ってもいいかしら?」

「...だめだよ」

「ダメですよサクラ様。あそこはとても尊い場所なんですから...!」

「...その尊いが私にとっては煽りにしか見えないのよぉぉ!!」

 サクラがブチ切れ、レイアがそれを宥め、ルナがさらに状況をややこしくする。

 この状況でリーフェとアリスは遠くで苦笑いをしながら明後日の方向を向いている。

 巻き込まれないのが一番だと誰よりも理解していた二人だった。

 だが、全員に共通しているのはレンジスを心配している気持ちだった。

 どれだけ意見が食い違っていても、根本的な思いは皆同じだった。それだけレンジスを心から慕っているのだろう。

 そしてしばらくしたあと...

 レンジスが帰ってきた。

「あ、レンジスだ!」

「レンジス君、一体どこで....?!?!」

 次の瞬間、全員が口をそろえて驚愕した。

「「「「り、龍?!?!」」」」

 のちにこのうちの一人は語る。

「心臓が実際に止まりました。本当に死ぬかと思った」


***


 おいおい...

 魔力、隠せてねーじゃねーか!!

 どういうことだよったく...

 ヴァインの方を見てみると...

 ...

 てへぺろじゃねぇよ。こいつだな?!こいつが自分で僕の認識阻害の魔法を解除したんだな?!ふざけんじゃねぇ!!あーもう...だからめんどくさくしたくなかったんだ...

 説明するしかないかぁ...

 その前に...みんなを現実に呼び戻さないとねぇ...寝るか。


 数時間後。

 僕が起きると、みんなも一緒に現実に戻っていた。

 そして、なぜか打ち解けていた。

 一体何があったんだ...

 聞いてみたら、

「意外と怖くありませんでした!!」

 そう言っていた。

 ふーん、そうなんだ。

 龍にもそんな器用なことが...

「あ、今私に失礼なことを考えていますね?!」

 視線を逸らす。

 僕は何も考えていませんアピールをする。我ながら完璧な演技をしていると思う。

 その証拠にヴァインは気づかなかった。いやはや、よかった。

 ゆか、人間形態で馴染んでるじゃねぇか。

 そこまで魔力抑えられるなら自分で抑えてくれよ、と叫びそうになる程魔力の認識阻害がうまくできていた。今認識しても、普通の人間程度の魔力量にしか見えない。これが龍、それもすべての龍の母たる創神龍だと初めて知ったら驚愕どころじゃ済まなそうだな...実際に見てみたいと思ったのは秘密である。

 しかし、その願いはすぐに叶えられた。


 藪の中から音がすると思ったら、柄の悪い奴が数十人出てきた。

 おそらく試験の討伐証明を奪いにきたのかな?

「おい、あいつ等結構いい討伐証明持ってますぜ」

「いいじゃねぇか。金品女全部奪っちまえ!」

 そして突撃してくる。

 ヴァインに目配せ。

 いいの?的に目をキラキラさせてこちらをみる。

 オッケーとアイコンタクトで伝えた次の瞬間。

 とてつもない圧力を感じる。

 ヴァインが魔力を解放したのだ。

 気絶する盗賊たち。

 唯一、気絶しなかったものもいたが、股間から白い煙を上げながら何やらつぶやいていた。あらら。彼を根本的にバッキバキにへし折ってしまった。自業自得だね。

 リーフェたちは...

 カイアスとサナ、リーフェ以外が戦慄していた。

 ああ、まだダメか...と思っていた。

 カイアスたちは立ったまま気絶していた。

 凄えな、と思いながらリーフェの意識確認をする。

 あ...心臓止まってるじゃん。

「僕を置いていかないでくれー!!」

 すぐ様リーフェの蘇生術を始めた。

 心臓は魔法で勝手に動かないからね。

 魔法で手を作り、心臓を強制的に鼓動させた。

 その後、すぐにリーフェが息を吹き返したのは僕のおかげである。

 そして、全員の意識が川から帰ってきたあと。

 僕らはギルド出張所の監査部に来ていた。

 証明部位を提出するためだ。

「はい、確かに受け取りました。しばらくお待ちください」

 うーむ、この瞬間が緊張する。

 何にせよ、合格することを祈ろう。

 すると隣で...

「はいよ、これ」

「...?!なんです?この量は...」

「とにかく、全部鑑定してちょうだい」

「かしこまりました...しばらくお待ちを」

 隣で鑑定してもらっているのは、小柄な少女。

 ある特定の派閥の男どもの性癖に刺さりそうな、見事な少女だった。

 何がとは言わないが、完全に城壁だった。

 そしてその背後には...

 こちらも何がとは言わないが、とても豊富だった。

 レイアが惚れている。嘘だろ、誰彼にも靡かなかった、レイアを惚れさせるとは...彼女、何者なんだ...

「鑑定終わりました。S級30体、SS級5体。そして...SSS級2体。合格です。『再び彼の地で蘇る(トゥワイスリザレント)』パーティーのレンジス様、オルン様、レイア様、リーフェ様、フェリス様、サクラ様、ルナ様、フラス様、カレナ様、リエル様、カイアス様、サナ様をS級冒険者として承認します」

 よし!心の中でガッツポーズ。とりあえずは目標達成。

 そして、隣で大声が上がった。

「え、SSS級10体討伐?!」

 ほう。

 相当な手練れのようだ。

 ただの少女だと侮りはしてはいなかったが、少々強者の持つ独特な気配を持っていた。

 どちらもだ。

 だが、これで明らかになった。

 彼女等、只者ではない。

 複雑な手続きを終え、彼女等は自分のパーティーに戻った。

 うーん、ちょっと知ってみたい。

 僕も複雑な手続きを終える。

 そして振り返って戻ろうとすると...

 彼女が来た。

 そしてすれ違い様に僕にしか聞こえない声で言った。

「この後、試験会場の森の中で会いましょう」

 うは、声綺麗すぎ...じゃない。森の中で会いましょう、か。これはちょっと厄介ごとになりそうな気が...


 数十分後。

 僕らは試験会場の森の中へ来ていた。

 レーダーによると、彼女等はここにいるんだが...お、見えた。いるいる。

「で、何で呼び出したんだい?」

 僕らが先に疑問を投げる。

「まあ、あなた私たちよりも強いでしょ?」

「はは、それなりには強いですよ」

 むっと顔をこわばらせる。

 あっこれ、サクラちゃんタイプだね。

 でも、その前にね。

「勝負をしたいなら、まず名乗るのが礼儀というものじゃないかな?」

「あら、これは失礼。私はジリア」

 僕はもう次にくる言葉を知っている。というか、予想できた。

「あたしと勝負しなさい!!」

 テンプレセリフいただきました。

 サクラみたいな負けず嫌いは、自分よりも上の存在に大体気が許せない。自分が一番じゃないと気が済まない性格なのだ。僕なりの偏見だけど。

 前にもかなりあったが、いずれもすべて返り討ちにしている。

 だけど...今回は手応えがありそうだ。

「そうか...じゃあ、手合わせ願おうかな」

「ふふふ...その自信、へし折ってあげるわ!!」

「あ、ジャッジはこっちでするからね」

「わかったわ。強いからって逃げるんじゃないわよ!」

「逃げないよ。というか、ここから一歩も動かずに勝ってやるよ。だから...全力でこい」

「...っ!!」

 ジャッジが試合の開始を告げる。

 その瞬間、彼女は消えた。

 そして、目の前に現れる。

「舐めんじゃないわよ!!」

 おお、無詠唱で魔法を構築できるのか。

 これは結構珍しい。仲間に入れたいほどだ。

 けど...構築が甘いな。

極破バッヂ

 彼女の魔法を破壊する。当然、破壊された本人は驚く。

「はぁ?!何で魔法が...」

「おい。今は戦闘中だぞ」

 そして殴り飛ばす。魔法で強化した体で。

 今の一撃でノックアウトだったらしい。勝負が決まった。僕の勝利だ。

 またしても思う。仲間に入れたいなと。

 だが、みた感じ、彼女、ジリアはパーティーリーダーのようだ。

 パーティーリーダーを引き抜くわけにはいかない。

 だが、育て上げたらうちのパーティーに引けを取らない強さになりそうだ。

 アルファの調べによると、ジリアをリーダーとするパーティー、『絶海』は僕らのパーティーとほぼ同時期に作られたらしい。しかも年齢帯もほぼほぼ同じだときた。ここまでくるとなんか運命を感じる。うん、彼らには僕らのライバルとして、強くなってもらおう!

 そう悪巧みを考え、魔王と聖霊王に手伝ってもらうことにした。

 まずは偶然(・・)彼らの元にSSS級魔物が現れる。

 それが偶然(・・)何度も続く。

 そして最後に偶然(・・)それ等の討伐依頼があって、多額の資金を得る。

 見事な計画だ。

 これを実行したらライバルが強くなる...ふふふ。再戦の時が楽しみである。

 ちなみに、絶海のメンバーはSSS級魔物を1日で20体倒したことで、相当疲弊したそうである。


***


 S級に昇格した。

 これで、ようやく旅の続きを始められる。

 その前に、お世話になった人たちにお礼を言って回った。

 泊めてくれた宿の女将からは「この街にまた来たらご贔屓にね!!」といった。相変わらず商魂素晴らしいことだ。鍛冶屋の人も「...また作ってやるからこいよ」なんて言ってた。普段は無口でも、そういうことを言うところはとても可愛い。初めて知ったが、鍛冶屋の人は女性らしい。

 そして、物資を色々買い集めた。いやはやこれも大変だった。女性陣がいらないものも買い求めようとしたりしてルナが相当苦労したり、在庫切れで出立が二日延期になったりした。それはもう色々とあった濃い一週間だった。

 そして、出立の日ーー




 その日はとても快適な旅日和だった。まるで天が僕らの旅路を祝福しているかのようだ。だが...

「な、何であんたがここにいんのよ!!」

 ジリアがそう叫ぶ。

 そう、どう言うわけか道中同じ道を進むことになったのだ。

 いやはや、運命の女神も意外と近くにいるのかもしれない。

 もしかしたら、うちのパーティーと絶海のパーティーで恋愛関係が...

 これ以上はやめておこう。

 さて、道中同じ道をゆくとなった以上、馬車を同じにしたら良くね?と言う侯爵の提案から、馬車を三台借りた。一台は僕ら、もう一台は絶海、もう一台は荷物用だ。これで旅費の削減ができる。何事もコストカットは重要なのだ。お金は大事。

「あんたら、今すぐ目的地を変えなさいよ!!」

 おお、素直じゃないなぁ。

 なんて言えば魔法をぶっ放してくるのは目に見えてる。

「ごめんごめん。目的地がライテス港都でさ...」

「な、なんでそこなのよぉぉ!!」

 ジリア曰く、最終的な目的地はどうやらそこらしい。僕らは途中ドワーフの里によるので、ここから2個先の宿場町にて一旦ジリアと別れることになる。だが、最終的な目的地は同じらしい。とんだ偶然だ。

「あんた、まさか私たちをストーカーしてるわけじゃないでしょうね...」

「そんなわけないだろ。聖霊王に誓ってしていない」

「聖霊王様って...まあいいわ。信じてあげるわ」

「そっちも、強さの秘訣が気になるからってついてくるんじゃないぞ?」

「ばっ、するわけないでしょが!!」

 いやぁ、ジリアはとてもいじり甲斐がある。

 いちいち反応が面白い。

 そろそろ行きますか。

「それじゃ、女将さん、侯爵様、鍛治師、おせわになりました」

「いつでもくるんだよ!従業員一同待ってるからね!」

 女将さんから代表して言葉をもらった。

 もしかして女将さんの方が立場上なんじゃ...と思ってしまう。

 不敬罪なのではと侯爵様の顔を伺うが、表情ひとつ変えていない。

 まあいいか。

「ありがとうございました!!」

 こうして僕らはフレオの街を旅立った。

 次の目的地はここから一週間、宿場町ケイオルである。


 後から知った話なのだが、僕らが泊まっていた宿の女将さん、どうやら侯爵様の正妻とのこと。なんで侯爵家正妻が?!となるのだが、来客が来る場合は従業員一同に宿を任せてくるらしい。侯爵様自身も奥様の宿の経営を許しているとのこと。いやはや、とても珍しい夫婦である。

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