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魔導旅記〜魔法を極めるために旅をする〜  作者: 哉瀬
エールヘッジ王国
14/30

圧倒的な力で

「僕らは『回天』。知っての通り、SSS級パーティーだよ」

 はあ。SSS級。知ってはいたが、実際に会うのは初めてである。しかし...

「あなた方は一体なんの御用でここまで?別にたまたま通りかかったとかそういうわけではなさそうなのですが...」

「うーん...まあ秘密で」

「無理やり口を破らせることは」

「できないと言っておこう」

「わかりました。それでは聞かないでおきましょう」

 うーむ。どうして、こいつ等の意図がよくわからない。

 しかもこいつ、かなりの狸だ。

 狡猾さがうまく隠れている。

「リーダー、彼らがそうなんですけど...」

「...」

 おいおい。なんで黙ってる奴がリーダーなんだよ。

 強ければ強いほど変人が集まるっていう話は、本当みたいだ...

「....もう少し、後で」

「わかった。そうしよう」

 何やらコソコソ話していたが...

「どうしました?」

「いや、なんでもない。それより、僕らはこれで失礼するよ。見たいものは見た(・・・・・・・・)んでね」

「ほう?その見たいもの(・・・・・)は僕らのことで?」

「ノーコメントと言っておく。まあ、いずれわかるさ」

 そうして彼らは消えていった。まさに意味がわからなかった。

 うーん...悩んでいてもしょうがない。

「さて、今日はもう疲れただろうし、帰ろうか」

「「はーい」」

 こうして、レンジスたちはいつも通りフレオへの帰路へと着いた。




「レンジス、この街にいつまで滞在するつもりですか?」

 リーフェがそう言ってきた。そうだな。レイア、カイアス達のランクも十分上がったことだし...

「そうだね。S級昇格試験を受けて、物資を整えてからここを発とう」

「了解しました」

「聞いての通り、僕たちはこの街でS級になる。だから、一層鍛錬や依頼に励んでくれ」

 男どもの顔が真っ青になっていく。だが仕方がない。これも目標(・・)のため。

「それじゃ、今日は休んで、明日から頑張ろう!」

「「...おーう...」」

 元気ねーな。まあ、いつも通りか。

 その後、いつも通り報酬エサを用意したらみんなやる気になった。とてもよかった。これで試験を心置きなく受けられそうである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「で、どうだったんです?リーダー」

「...」

「...」

「...」

「...睨めっこじゃないんですよ、リーダー」

「...わかってる」

「まあ、いいですよ。いざという時は本当に的確な指示を出してくれるんで」

「...」

「それじゃあ、僕はもう寝ますね。それでは」

 回天の副リーダー、アランがそういうと、リーダーがいるテントから出ていった。

「...生きていたんだ...」

 ネルエは嬉しそうに、そして悲しそうにそう言った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 数日のうちに、色々あった。

 まず、なんか盗賊が多い気がする。

 僕らをめちゃくちゃ狙ってくる。正直怖い。そんなに金持ってないのにね。どうしてだろうか。よくわからない。

 そして次。

 サクラがまた料理を作った。

 食料を全部使ってね。

 そして僕らはまた地獄を味わった。

 何人かは川の向こうで家族が手を振っている光景が見えたらしい。

 殺人料理、恐るべし。

 そしてサクラは重い罰を受けにギルドに行ったとさ。

 意外なこともあった。

 レイアがリーフェ並に料理ができることだ。

 フレオに行く道中さらっとレイアはサボっていたが、料理がマジでできる。

 料理もできて、戦闘もセンスがいい。さらに顔もいいとは、女性にとってこれほどの優良物件はないだろう。だが、ドジりやすいのが欠点かな。まあ、それを補うほどの完璧スペックがあるから、羨ましい限りである。


 僕は鍛冶屋へ来ていた。

 剣を新調するためだ。

 新調すると言っても、素材はそれなりのものしかない。

 付与魔法でも付与して、硬度や鋭さを向上させるつもりだ。

 今回は、鍛治師に頼んでとあるものを作ってもらった。

 喜んでくれると嬉しいね。

 一週間でできると聞いたので、一週間待ち、できたものをもらった。

 その間も僕らなりに特訓・鍛錬をしたり、依頼を消化した。

 そうして僕らなりに準備が整い、S級へと昇格する日が来た。


 S級昇格試験。

 冒険者の一種の到達点と言ってもいい。

 S級になるかならないかで、冒険者としてのが決まる。

 それがこの世界の一般常識らしい。

 とは言っても、僕らみたいにS級最速TAまがいのことをやっているわけでもないから、あわよくばなれたらいいな程度に思っているのだろう。

 そう思っていた僕が間違っていた。

 いや結構多いね!?

 見えるだけで50人くらいはいる。

 すげぇな、さすが冒険都市フレオ...

 冒険者の質が高い。

 これだと普通に落ちるかも...


「それでは昇格試験についての説明をします。合格条件はS級魔物・および魔獣を三体以上倒し、証明部位をこちらの監査部に提示すれば達成となります。さらに、素材となるものを持ち帰った場合、その量に比例して報酬を増やします。以上です」

 なるほど、とてもシンプル。これなら大丈夫だ。ただ...

「すみません、一ついいですか?」

「どうぞ」

「何事にも想定外があります。例えばこの試験中に僕らでは敵わない、SS級、それ以上の魔物および魔獣と遭遇した場合、誰が倒すのでしょうか?」

「その件なら大丈夫です。今回はこちらのパーティーが警護してくれますので」

 そうしてパーティーリーダーが見えた。

 おいおいあれって前に一度あった回天じゃねぇか。

 フレオに来た理由はそれか...

「SSS級パーティー、回天です。もし万が一の事態が起こっても、できる限り自分達で対処するべきですが、何事にも限界があります。高位の魔物が出現したとしても、彼らが倒してくれますのでご安心を」

 歓声が上がる。気絶しているものもいるようだ。それほど人気なのか...裏を知っている僕らにとってはとても真似できない。

 こうして試験開始前に負傷者三十人が出る異常事態が発生してしまったが、回天のヒーラーが全員治療してくれたことでことなきを得たかと思われたが、またしても治療されたことにより興奮し、倒れるものが続出したことにより、その人等は試験に参加できなくなった。自業自得と言いたいが、若干可哀そうなところを覚えた。


「それでは、試験始め」

 その声とともに、フレオの門から一斉に冒険者が飛び出す。走って飛び出したり、魔法によって飛んだり。意外と魔法技術は素晴らしいようだ。だが...

「付与魔法...上昇(アップ)、足・体...」

 よし。これでいい。

「レンジス君、今何を僕らにかけたんだい?」

 オルン君が僕に疑問を投げる。いい質問だね。

「付与魔法だよ。説明は試験後にしてあげよう」

「「....」」

 その話を聞いていた全員の目がレンジスに向く。

 へ?なんで?

 飛行魔法よりも簡単なのに...

「いや、慣れれば簡単だからね?」

「「「「「...な訳あるかぁ!!」」」」」

 全員が口を揃えていう。

 いやいや、本当のことを言っているのに...


 先の話は置いといて。

 今は付与魔法で身体強化を行い、獲物を探している。

 探知魔法は便利だ。それを何かしらの板に映すだけで、簡単なレーダーとなる。とても使いやすいことこの上ない。

 話を戻す。S級ならちょっとかしこいるんだが...

「おいおい...SA級までいるじゃねぇか...」

 SA級。

 SSS級よりも上であり、神話状でしか存在しないと言われる生物。

 その存在が暴れた時は、大陸一つが壊滅したと言われている。

 対策は簡単。

 そもそも近づかずに、刺激しなければいいだけの話だ。

 あんな存在、英雄クラス数人でも敵うかどうかわからないのだ。

 イコール、手を出すな。そういうことなのだ。

 そんな生物がなぜこんなところに...

 というか、そもそもどうしてこんなにタイミングがいいんだ?

 うーん、またしても違和感が多い...

 まあいい。それよりもまずは試験を合格せねば。

「じゃあ、手分けして狩りますか!」

「「りょうかい!」」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方、森の深層でーー


「おい、いいカモ見つけたぜ!」

「本当か!?見せてみろよ!」

「こっちだって...ほらみろ」

「寝てるじゃねぇか!タコ殴りでおしまいだな」

「ああ、これで三体目だぜ...こいつを倒したら、晴れて俺等はS級だ...!」

 五人組パーティーは最後の獲物を見つけた。

「行くぜ!」

「「「「おう!!」」」」

 直後、彼らは塵一つも残さずに消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 順調にS級やそれ以外の魔物を狩っていた。

 しかし、何事も順調にはいかないようで...

 いきなり爆発音が聞こえた。

 爆発源の元を見てみる。

 って....

「おいおい、なんだあれは?!」

 見てみると、龍がいた。それも超でかい。

 しかもあれ、SA級じゃねーか!

 なんでだ?!誰だよちょっかい出したの!!

 あーもう、本当にめんどくさい...

 あいつを倒して注目されるのも嫌なんだよなぁ...

 はあ、行く前に物資整えればよかった...

 注目されるしか選択肢にないじゃん...はぁ...

 ギルマスさん、ちょっと過労になるかもだけど、我慢しといてくれよ?

 僕らの名を轟かせることで、下手にちょっかいを出す輩が少なくなるからね。

 僕は決断した。

「あいつを...倒す(手懐ける)ぞ!」

 そして僕は向かった。

 S級昇格試験の手土産にするために。

 仲間を守り、そして目の前の化け物を仲間に引き込むために。


***


 対峙する。

 神話状の生物、創神龍ヴァイケインと。

 ははは、こんな経験はあんまりしたくないんだけどなぁ...

「仲間に手を出すなら、容赦はしないぞ」

 さて、まずは小手調べだ。

 小型の魔法陣を展開!

 そして龍へ向けてポン!

 まあ効かないよな。

 さすがは龍。並大抵の魔法じゃ効かないことはある。

 あ、龍がブレス放つ。

 そして延長線上には...

 回天のメンバーとリーフェが!!

 なんとしても守らねば!!

 リーフェをね!!

 防御魔法を展開。

 龍は自分のブレスに絶対的な自信を持ちながら、結果を確かめるも...

 僕によって全て防がれたことに驚きを隠せていないようだ。

 さて...

(お前)もブレス放ってきたんだから、こっちも放ってもいいよな...?」


***


 眠りを邪魔された。

 数匹のゴミ(人類)によって。

 さらには低位の魔物扱いをされた。

 我は創神龍なのだ、そのようなことはあってはならない。

 手始めにその五人組を焼き払った。

 そして、目の前に少年が現れた。

 何やら仲間に手を出すなら容赦はしないと言っておる。

 だが、こちらは自分を侮辱された。

 少なくとも人類を半数殺す。そう決めた。

 だがこの少年...

 やばい。強すぎる。

 我のブレスを防ぐとか、只者じゃない。

 さらには魔力が一気に練り上げられる...

 一体、どんな魔法を放つつもりなのだ!?


***


 僕は今すごく気分が悪い。

 リーフェを狙われたからだ。

 ちょっとこの駄龍(創神龍)にはお灸を据えないとね。

「それじゃ...せいぜい耐えてくれよ?」

 その言葉に戦慄を感じたのか、龍なのに汗をかいている。龍形態なのに。

 まあいい。

無の領域(ロステリア)

 周りを巻き込まないためにも、一応結界を貼っておく。それじゃ、本気で行きますか。

 魔力を練る。練る。練る。膨大な量を練る。目の前の龍を仲間にするために。

 僕は種族関係なく、気に入ったものは絶対に仲間に入れる。

 それが敵だとしても。

 だから、圧倒的な力を見せつけ、僕が勝つ。

 そして、仲間へと引き入れる。

 僕の実力を知れば、わざわざ寝返ることなんてしないだろう。

 だから、敵対するものは一度、ぶちのめす。これが僕のやり方だ。

「...」

 詠唱を続ける。

 そして放つ。この星の文明を崩壊させることができる魔法を。

人の終焉(コルカナ)

 終焉。

 名前に入っている通り、まさにその言葉がふさわしいほどの威力。

 僕が仮想空間にこの星と同じものを作って、魔法を放ってみたら見事に跡形もなく消えたため、この名前にした。

 有事の際には結界を厳重に貼って行使するという条件を自ら科した魔法。

 一体どの程度耐えられるかの実験も兼ねて、放ってみた。

 しかしさすがは無の領域。僕の結構強い魔法でも案外耐えられるものだな。両方僕が開発したけど。

 いってみれば、この世界は魔法開発が全くされていない。改良されず、欠点だらけの初期魔法をずっと使い続けている。傷だらけの剣を最強の剣と言っているのと全く同じことをこの世界の人間はしている。もちろん剣で戦う人もいる。だが、大半は魔法師である。この世界の人間の魔法師と剣士を戦わせたら、正直剣士が勝つと思う。正直それほどこの世界の魔法技術は発達していない。なぜ僕が魔法開発に固執しているのかって?そりゃ楽しいからです。楽しいから、魔法を開発する。改良する。それが楽しいのだ。

 話を戻すと、つまり創神龍もこの魔法を受けたことはないだろう。そう思っていたのだが...大怪我を負いながらも、まだ生きている。

「ふーん...案外耐えるもんなんだね」

「...オマエハイッタイナニモノナンダ?」

 お?!しゃべったぞ。まあ、神話状の生物とか言われているんだから、当然っちゃ当然か。

「まあ...そこ等辺にどこにでもいる、しがない冒険者ですよ」

「ソンナワケナイダロウ!!」

 龍にまで否定された。悲しい。

「それよりも、降参の意思はあるか?ないなら...」

 僕は先ほどの魔法を複数出現させる。

 龍はまたもや戦慄した。そして思う。

「コレホドノコトガ、ニンゲンノコニデキテタマルカァァァァ!!!」

 おお、龍がツッコミをした。

 創神龍がツッコむとか、ちょっと笑ってしまう。

 そして創神龍、降参。

 ふう、とりあえずひと段落ついたね。そして...

「じゃあ、降参する代わりに一つ条件がある」

「ナ、ナンダ?」

 ニヤッと笑い、

「僕の仲間になれ!!」

 と言った。

 そして龍が固まる。

 なんでだ?人間の言葉は先ほどのやりとりから理解できているとわかっているが...

 ...

 ......

 .........

 数分後。

 ようやく脳が働き出したらしい。

「ワ、ワカッタカラ、モウアノマホウヲハナツノハカンベンシテクレ...」

「いいだろう!ついでにひとつお願いがある」

「ナンダ?」

「創神龍だから、人間の姿になれるだろ?そっちになってくれないかな。あと覇力を抑えてくれ。じゃないと、一般人じゃ泡吹いて死んじゃうよ」

「ウーム...ソレガネガイトイウノナラ、イイダロウ」

 そして人型になる。

 覇力もだんだん小さくなっていくが...

 おいおい。

 性別女だったのかよ。

 そして結構容姿端麗だし...

 しかも変な男もいるし!!

 さらにまた幼い女の子が出てきた!!!

 一体こいつ等はなんだ!?

 というかそもそもどこから出てきたんだ?!

 全力バトルしてた時にはこいつ等いなかったぞ?!

 それに僕が首を傾げる。

「...?」

「「「?」」」

 全員が首を傾げる。

 そして我に返った創神龍が自己紹介プラスアルファをしてくれた。

「改めて私は創神龍ヴァイケイン。すべての龍の母となるものです。そしてこちらが私から離れなかった龍。それぞれ火龍メナス、冰龍アリアです。以後、貴方様の配下として、我らの力を奮わせていただきます」

 こうして僕は素晴らしいほどの強力な仲間を手に入れた。

 しかし、この後の問題は山積みだ。

 仲間にどう説明するか、あと、ギルドにどう説明するか...

 ...考えるだけで頭が痛くなってきた。

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