新たなもの
「新進気鋭のパーティーがいるって?」
「おう、なんでも、一週間前にできたのに、もうB級まで駆け上がってるらしいぞ」
「まじ?結構面白いパーティーじゃん」
「ふふ、そうですね」
「パーティーリーダー様よ、どうする?」
「...」
のちのレンジス等のライバルとなるパーティーは、フレオへと向かっていた。
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「じゃ、ちょっと本気出すか」
レンジスは目の前の二人に対し、そう宣言した。
瞬間、二人は圧倒的な威圧を受けた。
(なん、だ、これは...?!)
カイアスたちは未だかつてない強敵と会敵したことは多々あった。
だが、ここまでの威圧感はなかった。
(まさか、今まで出会った敵以上の実力、ということなの...?!)
サナは驚愕した。
(だけど、恐れることはない。どんな強敵も、杉田くんと一緒なら、倒せたから...)
アイコンタクトをする。
二人は抵抗を決めた。
だが、勝負は一瞬で決着した。
いや、勝負にすらならなかった。
何が起きたか話そう。
二人が抵抗を決め、僕に向けて突進!
そして、僕が魔法を発動!!
目の前の二人は膨大な魔力によって燃え滓になった!!!
僕が魔法を放つ前にね!!!!
以上!!!!!
ってやべぇよ。こいつらをパーティーに入れて見たら面白そうなのに。
まだ見ぬ魔法を持ってそうなのに。
はあ、できれば人目がつく場所で使いたくはないけど...使うかぁ。
『蘇生』
その魔法は、僕が開発した魔法。
死者を蘇生させる魔法だ。
便利なのが、蘇生時の対象の時間を任意に調整できるということだ。
これが使えると知ったら、世の中の人が僕に蘇生を頼むべく集中してくる。
金が欲しいならそうすればいいが、そんなことしたら人間インフレして世界が破滅しかねない。
さらに言えば僕をめぐってまた戦争が起こるかもしれない。
だからこそ、仲間内でしか使いたくはない魔法なのだ。
だが、塵になった二人に消えてもらっちゃ困る。
蘇生を使用したのはいいが、ギルマスと受付嬢エトセトラには厳重注意しておかねばならない。
場合によっては記憶を消さなければ...
まあ、対処するか。
「んじゃギルマスさん、この二人連れて行くんでね!あと、さっきの魔法のことは黙っておいてね!それで脅しとかしようものなら...ねぇ?」
「わ、わかったから!そんなことはしないと約束する!!」
「そこらへんの君らもだ。へんなことを企んだら、うちの番犬が夜の間に君たちの頭を胴体と分けさせてもらうからな?」
「「「わ、わかりました!」」」
とりあえず、こんなもので良かろう。
「みんな!拠点に戻るぞ!」
「「了解!」」
こうして、僕は二人の仲間(?)を手に入れた。
因みにこの日の襲撃事件は、後世には伝説のパーティーが最初に対処した大きい事件として、伝承されている。
....
俺は、死んだのか?
ああ...天使が見える...
天使よ...サナは...
「僕の彼女に触れんじゃねぇよ、ゴミが」
生き返らせたうちの男が、僕の愛しに触れようとしたので、とりあえず殴っておいた。リエルが回復してくれるから大丈夫だろう。そして女の方は、サクラの胸の内で感情を吐露していた。まあ、どちらも問題なく生き返ったので問題ないだろう。さて、落ち着いたら大人の話だ。
「さて、君らには三つの道がある。一つ目は警護隊に自首する。まあ一番無難だと思うよ。二つ目はあまりおすすめしない。抵抗して逃げる、だ。まあ実力を知っているだろうから選ばないだろうけど、あえて提案しておくよ」
二人の背筋を悪寒が走る。
「最後の三つ目なんだが...これを一番おすすめしよう。僕らのパーティーに入る、だ。なんたって君らも身をもって知ったであろう僕が仲間にいるんだし、安全は保証されたも同然。さらには身柄は僕らが持っているから、よほどのことがない限りは自由の身だよ」
「「...」」
あれ?意外に悩むね。速攻で三つ目選ぶと思ってたのに。
「わかりました、あなたたちのパーティーに、加入させてください...」
おっ、やっぱりそうなるよね。僕みたいな人に一生追いかけ続けられるとかいう地獄は味わいたくはないだろう。そこら辺はわかっていた。よかった。これで、パーティーの総合力がさらに上がる。それじゃ、パーティーに加入させてもらう前に...
「二人とも、冒険者ギルドを襲うなんて選択は、そうそうしないことはわかっているだろう?そもそも、なんでそんなことをしようと思ったんだい?もちろん、話したくなければそれでいい」
二人はコソコソと話し、
「できる限り、話させていただきます」
そう答えた。
そして、彼らの話を聞いた。
...
......
.........
胸糞悪いな本当に。
ヤマザキとかいう奴が元凶で、つい最近クラスメイトをまとめて殺したとのこと。
さらに胸糞悪いのが、黒髪というだけで迫害され、まともに寝床も取れなかったこと。
黒髪の子は禁忌の子である。
そういう宗教がこの世界にはあった。
その宗教はこの国の国教であり、信心深いことで有名なのだが、まさかそこまでとは...
とりあえず、最初から最後まで胸糞悪い話だった。
ちなみに、冒険者ギルドを襲った理由は、フレオなら実力のある冒険者もいるだろう、そいつらを瞬殺したら僕らを倒せるものなんていない、そう思うだろう、という理由らしい。まあ、復讐を遂げた後は何をしようとも思えないからな...だが、僕は目的を与える。
「じゃあさ、元の世界に戻る方法、探したら?」
驚いた表情で僕を見る。
元の世界に帰る。
すなわち次元移動魔法を開発せよ、そう言っているのと同義だ。
「諦めるならそこまでだ。だけど、挑戦する限り、可能性は失われることはない。努力する限り、願いは必ず、いずれ望む形で実現する」
そう言い放った。
また二人でコソコソと話す。そしてこちらへと視線を向ける。
「覚悟は決まったようだな」
二人は頷く。
「わかった。二人の提案を受け入れよう。ようこそ、トゥワイスリザレントへ」
二人を歓迎したのはいいが、いくつか問題がある。
これからそれらを解決していこうと思う。
まず、名前だ。
二人とも改名しているようで、それぞれ杉田がカイアス、紗南がそのままサナへと改名している。
サナは名前バレの恐れがあるが、サナという名前は案外この世界にあるので大丈夫だろう。
そして、大問題の髪の色。
これは染色するしかない。
それぞれ、希望の髪の色を聞いて、その色に染め上げた。
もちろん、任意のタイミングで落とすことができる。
こうして、かれらのイメチェンが数十分で行われた。
「新たな仲間の加入を記念して...乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯〜!」」」」」」」」」
このくだり前もやった気が...まあいい。仲間の加入は盛大に祝わなければ、人脈の神に呪われるというものよ。できる限り祝わねば。そして早速話が交わされ、楽しい一時が訪れる。そして僕は前のようにベロッベロに酔っ払い、リーフェに寝床に連れられ、そして一杯酔いを覚まさせてもらった。
翌日。
フレオの臨時冒険者ギルドに行った。
カイアスとサナの冒険者登録を済ませるためだ。
後ついでに二人のランク上げも行う。
ギルマスが話が早くて助かった。
偶然二人分のギルドカードがあったので、直接登録した。
普通は一週間もかかるので、ありがたい限りである。
さらに偶然にもA級討伐依頼もあったので、三つ受けた。
いやはや、偶然は重なるものだな。
「え...?」
「おいおいこの程度で驚いているのかい?」
「あ、いや....他の方も全員強いなと...」
確かに、全員強い。僕直々に鍛えたからね。
「まあね。それよりも、君等も鍛えてあげるよ。今よりもさらに強くしてあげる」
「ほ、本当ですか?!」
ぐいぐいくるな。
「ああ。だが、それにあたって普段敬語使ってるだろ?それをやめなさい。そしたら鍛えてあげるよ」
「わ、わかったよ...」
おお、すんなりやめれた。
時間かかるかなと思ってたのに。
「じゃあ、鍛錬開始と行きますか!」
「「はい!!」」
ふう。
鍛錬を終えた僕はストレッチをした。
後ろで死んだ顔をしているカイアスとサナが、死んだ魚のような顔と目をしており、リエルから回復魔法を受けている。
リエル、平等に優しすぎるところが好きです。
かつての敵だったはずなのに、もう打ち解けている。
それがこのパーティーのいいところなのかもね。
まあ、そういう話は置いといてだ。
A級討伐依頼も終えた。
帰ろうーー
「「ーーーーーぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」」
ドガーン!!
目の前に人の悲鳴と一緒に物凄い音で何かが落ちてきた。
「いてて...おい!誰がお空の上に転移させたんか!」
「ふぇぇぇ...すみませんすみません」
「あんまこの子をせめやんとってぇよ。ミスは誰にでもあるんじゃけねぇ」
「君たち、ここまできて言い争うのはやめておこうよ。『客人』が目の前にいるんだから。それに、リーダーが黙っちゃって、話が進まない」
「...」
煙幕の中から誰か出てきた。
おいおい。
「随分と派手な演出ですね。だれか脚本でも書いてます?」
そう言って見せた。
諧謔なんだけど。
「ああ、そうですね。まあ、偶然こうなりましたけど、脚本なら大体私が書いていますよ」
「なるほど。そういうわけーー」
ガキィン!!
武器がぶつかり合う音がした。
何事かと思って周りを見ると、複数人に囲まれていた。これは...
「おいおい、いいカモがいるじゃねぇか」
「あれみろよ!『回天』じゃねぇか!」
「へへへ、今日は稼いでいくぜぇ〜!」
ああ、盗賊か。しかし、回天って...
いや、それは後だ。
「やっちまいなぁ、お前らぁ!」
「「おう!」」
「男は皆殺しにしろ!女は楽しんでから売り捌け!」
「わかりやした兄貴!」
ああ、人間の汚いところが見える。これがカイアスの見てきた人間か。だが...
「うっせ黙れゴミクズどもが。人の形してんじゃねぇよ、肉片に戻れ屑どもが」
そういうと、僕独自に開発したあらゆる生物の殺害に特化した魔法を放つ。
『死彗』
光の膜が生まれる。
その光の膜に触れると、即死する。
どんな高次元の存在であっても。
僕の彼女であるリーフェには人差指たりとも触れさせはしない。
確固たる殺意を持って人を初めて殺めた瞬間だった。
さて、盗賊は全滅させた。
それでは話を...
「...」
あれ?リーダーが口を開かない。
そのままこう着状態が続くこと数分...
笑いそうになってきた。睨めっこしているわけじゃないのに。そして救世主が。
「ごめんね、うちのリーダーって結構内気でさ」
おい。そういうのは早く言えよ。
「じゃあうちが代弁させてもらうよ。僕らは『回天』。SSS級パーティーだよ」




