事件
ちょっと長め。
「なんで...」
「...」
「だめだ、もう聞く耳さえ持っていない、あれはもう『堕ちた』」
「そう、ね。もうあれは、私たちの知っている彼じゃないわ」
唐突にその戦いは始まった。
そして戦いが終わり...
「...」
「...せめて、私の手で...安らかに...私の、最愛の人...」
女が最後のとどめを刺す。
「...あ......う.........ふ......」
そう言い残し、男は塵となって消えていった。
「なんで...なんでですか...一生側にいると...守ってくれると言ってくれたのに...」
塵となった男の妻であった女は泣き崩れた。
これがーーー
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「とりあえず、まずはフラス君からだ。フラス君が使う武器は何だい?」
「僕は、これですね」
ほう。二刀流...しかもよくみるとただの短刀だが、実際に鑑定にかけてみるととんでもない性能を秘めている。これはーーー
「なるほど。道理でそうなるわけだ。僕にもやっと理解できたよ」
「「「「「「??」」」」」」
周りははてなマークを浮かべているものたちだらけだったが、まあいい。説明などする必要はないだろう。いずれわかるだろうから。
「さて、フラス君は前衛だ。とりあえず、この依頼書に書いてある魔物を10体倒してきてくれ。ソレができたら君は晴れてこのパーティーの前衛だ。別に無理をして倒しに行かなくてもいいからな」
「わかりました!では、いってきます!」
元気に魔物を探しにいった。それでは...
「それじゃレイア、ちょっとフラスの様子を見ながら、いざという時は助けてくれるかな?」
「わかりました。お任せください」
レイアは消えた。動きが早すぎたのだ。
「それじゃ次だ。カレナ、君は魔法師ということでいいかい?」
「は、はぃぃ...」
「わかった。君には後衛で魔法砲台を努めてもらうわけだけど、得意な属性とかあるかい?」
「えっと...特には...その、全部、使えますし...」
!!?
嘘だろ?!全属性使えるだと?!
冗談にも程があるだろ!と言い、実演させてみたら、本当に全属性を常人以上、下手したら賢者に迫るほどの威力だった。これは...
「よし。君にはコーチをつけよう。監督はリーフェだ!」
「「!?」」
「リーフェ、頼んだよ。僕がリーフェにやらせていた練習メニューをそのまま使ってもいいからさ。困ったことがあれば僕に聞けばいいよ」
「は、はい。わかった、レ...レンジス」
!!初めて!初めて、リーフェが僕を呼び捨てで呼んでくれた!嬉しい!
リーフェは顔を赤らめている。相当勇気を振り絞っていったんだな。かわいい。
「ありがとう、リーフェ。それじゃ、次はリエルなんだけど...」
「は、はぃ...足を引っ張らないように頑張りますので、どうか、捨てないでください...」
これは、過去に相当なことがあったかな。触れないでおくのがいいだろう。
「大丈夫だ。そんなことはしないからさ」
「ほ、ほんとう...?」
「ああ、ほんとうさ」
「...わかった、頑張る」
ふう。ようやく次の段階に行ける。リエルのこの卑下癖は何とかしないとな。
「さて、リエルはなんだが...」
***
とりあえず、彼らの育成は完了した。
三人とも、とんでもない潜在的なものを持っていた。
これからが楽しみである。
さて、今僕はリーフェとデートをしている。
最初から地味だなぁって?陽の者たちが過激なだけだろう。普通はデートから始めて健全に大人の階段を登る者であると僕は思っている。さて。リーフェとのデートを楽しむとしよう。
「リーフェ、これ、似合うと思うよ」
「ほ、本当...?」
「本当だよ。ほら」
はめて見せる。リーフェの透き通る藍の瞳と緋色の髪と良く似合っている。
「き、綺麗...」
「店主さん。これ、一つ」
「...」
あ、落ちたなこれは。
「店主さん。これ、一つ」
「....っ?!...!!?わ、わかった!代金をっ...」
おっと危ない危ない。僕としたことが、一般人を威圧してしまった。
これからは気をつけないとね。
「だ、代金ピッタリです...お買い上げありがとうございます...」
「うん。これからも懇意にしてもらうよ、店主さん」
「ひ、ヒィ!!」
「そんなに驚かなくてもいいだろう?なんせ僕らの仲だからねぇ」
「わかった!もうみないから!やめてくれ...!」
リーフェは変な反応をする店長さんを不思議そうにみているだけだった。
そう、リーフェはレンジスがなにをしているのかを知っているのであった。
だから関わらない。そう、関わらなかった。
この店長はのちに大成功を収めるのだがこの時はまだ知らない。
店長に、幸あれ。
レンジスは疲れた。
それはもう訓練の時よりも疲れた。
なんせ女性の買い物についていったのだ。
デートだからと言って侮っていた。
まあ、リーフェがかわいいからいいけど。
そして久しぶりの膝枕。とてもイイ。リーフェの体温を感じられるのが幸せだ。
「今夜も一緒に寝てもよろしいですか...?」
とリーフェ。いつでもウェルカム、と言いたいが時と場所による。だが今回は別だ。
「ああ、いいよ」
「!!ありがとう、レンジス!!」
死ぬほど眩しいリーフェの天使スマイル。ちらっとみた人の性別関係なくハートを奪った。さすがは僕の彼女(天使)。可愛すぎてにやけそうである。
「それでは、フラス、カレナ、リエルのパーティー加入を記念して...乾杯!」
「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」
「「か、かんぱーい」」
元気な野郎と内儀な少女たちと分かれた。だがそんなことは気にしない。だって今日は三人も新規がパーティーに加入するのだから。
「.....!!!」
「....!!」
やべ。ベロベロに酔っ払ってしまった。久しぶりにこんなに大量に酒を飲んだ気がする。しかしだ。
「....ぶ?....す....か...?」
何を言っているのかわからない。だが僕の彼女(天使)が僕を心配してくれているのはわかった。ここは甘えよう。
「ぅぁぁ...ぅいぃぁぃ....」
まともに喋れない。
「....し.......に.....ね.....」
やばい。もう頭回んない...ねむ...い....
起きた。
隣にリーフェがいた!とても幸せそうな顔で寝ている。とてもかわいい。しかしスースーするな...と思ったら服を着てなかった。なせだ?!
「ん...」
リーフェが起きた。リーフェも裸だった。僕の53万円CPU並の演算速度で導き出される答えは...そういうことですよね。はっずっかっしい!!なんということをしてしまったんだ昨日の僕!!
「すまないリーフェ!」
「え?!あ、いや、あの、その...」
双方大いにテンパっていた。まあ、こんな調子で今日の朝は始まった。しかし...これはきついなぁ。
ふう。とりあえず騒ぎは落ち着いたけど...双方顔が赤い。とても赤い。これでは何があったか一目瞭然である。なのでリーフェに顔を洗いにいかないかと提案し、了承してくれた。よかった。とりあえず、顔を洗う。何とか顔の赤らみが取れないかと祈りながら顔を洗っていたところ、
「あ、あ、あの...」
リーフェが尋ねてきた。
「そ、その...昨日は...」
「?!っああ、昨日の宴会ね?あれは楽しかったよね」
「は、はい!私も初めてです。あんなにご飯を食べられたのは...」
ふう。どこでもありきたりな日常会話にすることができた。
そこからずっと、何気ない会話を続けた。
弱気だなぁ...僕ら。
さて、今日は依頼を受けにきた。
性格には、昇進試験である。
僕らは今日、A級に上がるのだ。
いやぁ、ここまでくるのに疲れた...
「それでは、こちらへ...」
それは一瞬の出来事だった。
ギルド内のほとんどの人全員が殺された。
僕は仲間と一番近くにいた数人ほど、ギルドマスターと秘書を真っ先に守った。
殺された者たちはあとで丁重に葬ってあげよう。それよりも今は...
「あれ?まだ生き残ってるやついるの?どういうことだろ...全員殺したと思ったのに」
「...」
目の前の二人の男女である。僕らは彼らと対峙する。
男女...元日本人である彼らと。
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とある場所にて...
「はあ...こいつ、意外に頑丈だな」
「そう、ね。魔力も全部使い果たしたし...」
とあるパーティーがあった。
「とりあえず、やすみましょ」
そのパーティーは全員異世界人だった。
召喚者である。
訳もわからずこの世界に召喚され、魔王と勇者という物語に魅せられ。
現在、勇者パーティーとして行動している。
その総数、42。
「まあ、これで俺らの懐も潤うってわけよ。なあ!お前ら....は?」
「は?とはねぇ...相変わらず変わってないようで嬉しいよ、山崎」
山崎という、異世界パーティーのリーダーは目の前のことに驚愕していた。
「気安く呼ぶんじゃねぇよ杉田が。役立たずのお前が、なんでここにいるんだ?」
(確かにこいつには死んでもらったはず...なんで生きてやがる?)
そう、彼、山崎はどうしようもないほどのクズだった。
人をこき使いまわし、自分だけうまい汁を啜る。
それだけならこの世に何人もいる。
だが、さらに腕っぷしも強ければ、逆らうのは難しくなる。今、目の前にいるようなモノがそうだ。
その山崎の前に立っている杉田、いやカイアスはその被害者だった。
かつて、殺されたカイアス。
理由は雑魚だからという、当人からすれば理不尽な理由だった。
さらに殺されたとなると、精神が歪むのも分かる。
だがここまできても精神が歪まなかったのは、とある存在があった。
それが、紗南綾音、サナアヤとクラスから呼ばれている彼女である。
同時に、杉田が好きであり、山崎が狙っていた彼女。
雑魚でさらに杉田に好いている状態だったこの状況を、彼女の好意を自分に向かせるいいタイミングだと思ったのだろう。
彼は杉田を公開処刑した。自分に逆らう者への見せしめとして。
杉田を崖底へと突き落とし、処刑を完了させる。
これで邪魔者はいなくなった。そしてようやく無能を好いていたとわかった紗南は自分に尻尾を振って向かうだろう...そう思っていた。
しかし現実は違った。
紗南は杉田を追って崖底へと落ちていったのだ。
自分が予想していた現実と違う。
山崎は杉田を呪った。
だがその辺の線引きはしっかりとできているのがこれまたうざたらしい。
振り返って「役立たずはこうしてやる!いいな!」と言い放ち、一部クラスメイトは沸き立っていた。
これが彼らの過去である。
山崎は正面のカイアスとサナアヤと対峙する。
カイアスとサナアヤは処刑以前と比べると見た目が別人のように変わっていた。
内面も外面も別人のように変わっているのである。
二人とももはや元クラスメイトだった肉片に興味も慈悲もよせてない。
単にざまあみろ、あるいは死ねとしか思っていなかった。
所詮はその程度の認識だったのだ。
そして目の前の山崎も、しゃべるただの肉片としか思っていない。
復讐対象をその程度としか思っていなかったのだ。
それほど、彼らは成長したのである。
「まあ長話はする気はないよ。それじゃあね」
「ま、まて!な、なぁ!綾音!なんとか杉田を止めてくれよ?な?俺ら、仲間だろ?」
「....」
カイアスは黙って見ている。
「な?欲しいものとかあれば買うし...なんでもしてやるからさ!だからよ...」
「なんでもって...言ったよね?」
「あ、ああ!なんでもやってやるよ!」
活路が見え出したのだろう。山崎の目が一瞬だけキラキラし、その山崎は神を見るような目で絢音を見た。それが彼の最後の光景だった。
「じゃあ,死んで?気持ち悪い...」
こうして彼らの復讐劇は終わった。
「終わったね...」
「そうだね」
「安らかに眠ってくれ...」
こうして彼らは祈った。向こうの世界で彼(山崎)らによって殺された、もう一人の幼馴染を。
そして彼らは目的を失った。そして彼らは決めた。
「「この世界を滅ぼそう」」
彼らが理不尽な目にあっても救いの手を述べず、逆に迫害したこの世界の人々を。
こうして彼らはこの世界を滅ぼすことを決めたのだ。
第一目標は冒険都市フレオに決めた。
屈強な冒険者でも僕たちには歯が立たないことを示すために。
しかし、不運なのは、フレオでリーズにて大規模な魔物集団を退けた、レンジス達一行が滞在していることだろう。
そしてさらに不幸なことに、彼らがギルドにいる時間帯でギルドを襲撃したことだろう。
周りは殺せたものの、十数人ほど殺せていなかった。
カイアスとサナアヤは立ち直る。レンジスという彼らにとっての大ボスに。
***
こいつら、なんか見覚えがあるようなないような...思い出せない。
まあいい。この二人は一般人を大量に殺した。
その事実は一般人にはでき難いことだが、今はそれに驚いている場合ではない。
この二人を拘束し、更生させる。
「ギルドマスターさん、この子らの身柄、僕が倒したらもらってもいいですか?」
「ふざけんじゃないよ!そいつらにはうちの働き手を殺したツケを払ってもらわないと困るんだよ!」
「それなら僕らが働くので!お願いしますねー」
「あ、おい!待ちな!」
その先からはギルマスの話など耳に入れなかった。さて、こちらからのご挨拶だ。
『無一刀』
彼らに向けて闇魔法を放つが、すぐに避けられてしまった。まあ想定内だ。
「リーフェとリエル、レイアとサクラは彼らの護衛を。残りは結界外に出て生存者の捜索だ」
「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」
よし。これで思う存分に戦える。だが、その前に...
「おい、お前ら。言われなくても分かると思うが、これは重大な犯罪だぞ?なぜした?」
「てめーにはわかんねぇよ」
「あっそ。まあ答えはわかるが、一応聞いておく。武器を捨てて、投降するなら無下には扱わない。どうだ?」
うぉ、斬りかかってきた。それが答えか。
「そうか。それじゃ、ちょいと本気を出すか」
本日は2話同時掲載。




