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僕が僕であるために-9

 千津子は学校に戻ると保健室に入り、早野先生の言葉にも応えずそのままベッドにもぐり込んで泣いた。早野先生は、しばらくベッドの端に腰掛けていたが、何も言わずそのまま放っておいた。いつのまにか千津子は寝てしまっていて、放課後になって優子が迎えにきてようやく起きた。


 ぼんやりとしたまま、公園の沿道を歩く千津子に、優子は何も訊こうともせず、自分から話してばかりいた。話題が尽きてきて、優子は今朝の話の続きを始めた。


 「あのね」と始めた優子の声は、急に色褪せていた。今までの会話が虚勢であったかのようにすら千津子には思え、はっと優子を見た。

「城山さんね、あの城西の連中と知り合いだったんだけど、恐喝してるとこ目撃してね、それで警察に言ったらしいの」

「えっ、それって、あたしたちと一緒じゃない」

「あたしたちは、警察には言ってないけど、でも…」

「そんな」

「それで、補導されたんだって。それを恨んで、復讐しに来たんだって」

「逆恨みじゃないの」

「そんなこと通じる連中じゃないのよ。それより、あたしたちも、狙われるかもしれない」

「そんな」

「ね、チーコ、やっぱり、あの人だったの?」

千津子は言葉を噤んだ。

「探しに行ったんでしょ。ね、どうだったの?」

千津子は何も言わなかった。

「そう、そうなのね。あたしたちも」

「そんなことないわ、だって大島さんは、そんな人じゃないの」

「じゃあ、どんな人なの」

千津子は少しずつ言葉を選んで話そうと思った。今この場で歩きながら話すと感情で話してしまい、優子に理解してもらえそうもなくて怖かった。

「ね、今日、ゆうこちゃんとこに寄ってもいい。そのとき話すから」

「いいわ。あたしも相談したいの。警察に行ったほうがいいかどうか」

「それは…」

千津子は意外な台詞に驚いて言葉が続かなかった。優子がこんなに恐怖を抱いているとは思わなかった。しかし、警察に行くということは、大島の名前も出る。もしかすると、警察のブラックリストに載っているかもしれない。そうすれば、捕まってしまう。


 急に優子が千津子の袖を引いた。はっとして前を見ると、沿道脇のベンチに城西の不良たちがたむろしていた。五六人。その中に例の連中もいた。煙草をふかしながら、千津子たちと認めると、この間追い掛けてきた一人が立ち上がって近づいてきた。優子は千津子の手を引いて、逃げよう、と言った。千津子は促されるままに走り出した。

 急に目の前の二人に逃げられた城西の不良は煙草を投げ捨てて、仲間に向かって言った。

「おい、あいつら、追い掛けろ」

「だりィよ。やめやめ」

「バカヤロウ。あいつら、オレらがカツアゲやってんの見てやがったんだ。シメとかなきゃ、どうなる」

「しゃーねえな。バカ。あっちこっちで、アゲやってるから見つかるんだよ」

「うるせえ。追い掛けろ、ゲームだ」


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