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10話 『花火師』カケル


『ご主人様、起きて~。』


カンナの声が聞こえる。


「昨日は大変だったんだ。もう少しだけ寝かせてくれ。」


『ご主人様、起きて~。』


「分かったよ…。」


目を開け周りを確認する。

そこには誰もいなかった。


あれ…?


そう思った瞬間に頭に大きな声が響く。


『ご主人様、起きて~!』


「うわっ。」


神薙の力か、頭に声が届いていただけだった。

パスを通してくれるので、目をつぶり集中してから言葉を思い浮かべる。


『おはよう。カンナ』


『あら、やっと目が覚めた?』


『まぁね。カンナに起こしてもらってると思って声で返事しちゃったよ。』


『だから私に返事が来なかったわけね!』


『あぁ。ところでどうしたんだ?そっちで何かあったか?』


『いえ!そろそろオウファに着いたかなって思って!』


『おしいな。一昨日着いたよ。』


常にこちらと連絡を取っているわけではないからな。

仕方ない。

だが、ある程度の情報で予測していたのはすごいな。


移動を始めてからの3週間でも2回くらいしか連絡を取っていなかったのだが。


『あら、残念。ちなみにこっちは皆驚くほどに何もなく、平和よ。というより、ご主人様がいない家で毎日10人以上が掃除やらしていたらきれいとかそんなレベルじゃないわ!何かやっておくこととかあるかしら?』


『いや、特にはないな。各自自由に休みの日を作りながら過ごしてくれ。やりたいことがあったらやってていいよ。』


『りょうかーい!』


カンナからの連絡が途絶える。


一息溜息をつきベッドから立ち上がる。


昨日は色々あった。

あの後、カシアとレイナの2人から告白に近い行動をされたが、


ケルザ王が解散と強く言ってくれたおかげで、特に二人から何かあることもなく、

館に戻ってくることができた。


カシアも俺の部屋に顔を出したりはしなかった。

また、昨日の一件からか、

レティナから今日は休みといわれた。


多分レティナ側も状況を整理する時間が欲しいのだろう。


ということで今日は、冒険者ギルドに行って仕事をしてみようと思う。


朝食を取り、皆が食べれる量を作り置きしておく。

起きていたミゼリに冒険者ギルドに行くというと、

彼女らもあとで向かうとのことだった。


オウファの街中を歩く。

晴れた良い天気だ。


街中を歩くと何か視線を感じた。

嫌な気配だ。


後ろを振り替える。

誰もいない。

こちらを見ている影もなく、

周りには行き交う人々。


「なんだ、気のせいか。」


そういいながら再度冒険者ギルドに向かった。



★★★★★★

冒険者ギルドについた。


「冒険者ギルドにようこそ。初めての方でしょうか?」


受付嬢が話しかけてくる。

どこの受付嬢もとてもきれいな女性だが、

採用基準は顔なのだろうか。


「ここは初めてですが、レビュナの王都で冒険者をしています。」


「冒険者のギルドカードを提示しただけますか?」


「はいどうぞ。」


首からぶら下げ、服の中にしまっていたカードを取り出し手渡した。


「お、すごいですね。Sランク!」


「ありがとうございます。ところで何か依頼とかありませんか?」


「そうですね。ちょうどいいところにいらっしゃいました。急ぎの依頼でSランク以上の冒険者向けの依頼がありますが、如何なさいますか?」


「まずは、内容を聞いてみてからですね。」


「失礼しました。依頼の内容は依頼主がとある草の採取を行いたいため、護衛となります。」


「護衛ですか。Sランク以上の冒険者向けな理由はなんですか?」


「目的地がここから3時間ほどの場所にある平原なんですが、別名『死の平原』と呼ばれるほどに危険な平原となります。一番強い魔物でベヒーモスという巨大な化け物がいます。」


「そいつを倒せばいいのか?」


「倒すなんてとんでもない。最近倒されたという噂は聞きましたが、レビュナでいう黒竜くらい強いと噂ですよ。依頼人が逃げる時間稼ぎをしてもらえれば大丈夫です。ベヒーモス自体はある程度の強さのものが逃げようとすると見逃すらしいのですが、弱いものが逃げようとすると後ろから攻撃する習性があります。」


つまり、Sランク以上だった場合は、どうどうと逃げても問題ないらしいな。

いつか倒してくれる相手を探しているのかもしれない。


「なるほど。分かった。依頼を受けよう。依頼主に会わせてくれるか?」


「はい。かしこまりました。」


俺と受付嬢が話していると後ろから声が聞こえた。


「その必要はないよ。」


振り返ると糸目の優しそうなお兄さんが立っていた。


「やぁ。僕が依頼主のカケルだ。」


「カケル?」


「あぁ。よろしく頼むよ。」


「あぁ。よろしく。一つ聞いてもいいか?」


「なんだろう?」


「花火師のカケルってのはあんたか?」


「お、俺のこと知ってるのかい?うれしいねぇ。」


受付嬢に軽く会釈をして、空いているテーブルに向かう。


「あぁ。先日聞かせてもらったよ。レビュナからの関所では大変だったらしいな。」


「あぁ…あれな。俺のせいで1人犠牲になったのは申し訳ねぇ。」


しんみりした空気になってしまったので聞く。


「すまない。今回の依頼について教えてもらえるか?」


「今回は死の平原にある、火薬草という草を取りに行きたい。まぁ要は火薬だ。花火のために持っていた火薬は関所で爆発して減っちまったからな。俺は依頼主に直接合ってから花火を作るんだ。だから今日中に火薬を取ってきて、明日にはレイナ様に会ってみてから花火をイメージしたいんだ。」


「なるほど。分かった。それなら俺にも関係がある話だからな。受けよう。すぐに行けるか?」


「思い立ったが吉日ってね。ぜひこれから頼むよ。」



こうして俺はカケルと一緒に向かうことになった。


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