3話 依頼詳細
「さて、先程はすまなかったな。」
シルファの一言で始まる。
「いや、大丈夫だ。」
俺は答える。
理由は聞かなくても話してくれる。
そういう信頼だ。
「ランスルだが、諜報部隊からの報告によると何か裏でやっているという話があった。その一部にヴェアリストとの繋がりの可能性も報告されている。だから、あいつの話を聞き、あいつを何らかの形で調査する必要があった。今回の件はあらぬ疑いをかけられた冒険者アシナに対しの非礼を詫びさせてアシナを家に招待させる。その際にアシナに家の中を調査してもらうというのがメインだった。」
俺は諜報には向いていないがわかっているだろうか。
「だが、息子のレンザのおかげでそれも不要になった。国の転覆を願うような発言をしてくれたからな。国家反逆罪でこれから調査に入る。助かったよ。」
俺は無言で手を差し出す。
「ん?なんだ?」
「迷惑料」
「んー。お前はもうお金もいらんだろう?何が欲しい?」
特に何も欲しいものはない。
困った。
「んーそうだな。まぁお前が娘達の誰かを選んだら私は喜んで送り出そう。それを褒美とする。」
ずるい大人だ。俺が誰とも恋仲にならなかったら、褒美がないのと一緒だ。だが話を引っ張っても仕方ない。
「んじゃ、それで。」
俺はそう言う。
一瞬シルファが驚いた顔をしたが、気にしない。
「次にだ。ランスルとの賭けだがどうする?何が欲しい?ランスルの娘でももらうか?」
念のために聞いてみる。
「どんな子なんだ?」
「体は父親に似て大きいな。よく食べ、よく寝るらしい。家事とかはやっているところを見たことがないとの噂もあるな。」
「却下だ。」
何が嬉しくてそんな子をもらわなければならないのか。
「まぁそう言うと思ったよ。では爵位はどうだ?」
「俺は貴族になる気はあんまりないな。」
「うーむ。」
お互いに良い案がなく、困ってしまう。
するとカシアが横から声を出した。
「ミゼリ。馬車欲しがってる。」
確かにそうだ。ミゼリ達のグループは冒険者活動があるため、馬車を欲しがっていた。
御者はロゼができると聞いている。
「んじゃ、馬車をもらえるか?」
俺が聞くと、シルファは二つ返事で了承してくれた。
「構わんよ。好きなものを持って行くが良い。ランスルの家にある馬車を何個か家に届けさせておこう。」
「助かる。」
「さて、本題に入る。先ほども言った通りだが、アシナには、カシアとカルフォアに行ってもらいたい。カルフォアの唯一の姫であるレイナが、15歳になる。ちょうど1ヶ月後くらいだな。」
「俺のメインは護衛でいいのか?」
「構わんよ。ただ、国の代表として行くことになる。そこは十分に認識しておいてくれ。」
「俺は礼儀作法に詳しくないぞ。」
「まぁその辺はなんとかなるだろう。カルフォアは武の国とも言われる。最悪拳で語れば大丈夫だろう。」
「そんなんで本当にいいのか?」
今回の旅がすでに不安になってくる。
「まぁ大丈夫だ。」
シルファが続ける。
「次に連れて行く人間だが、お前もある程度メイドを従えてるし、身の回りを世話する人間も連れて行ったほうがいいんじゃないかと思っている。」
「ほう?」
「お前のところのメイド冒険者パーティがいただろう。そいつらについていってもらえ。」
「まじか。」
「ついでに言うと、うちの騎士団は基本は出さない。といっても、もちろん理由はある。理由の1つはお前がいれば安全ということ。2つ目は周りに人がいたらお前が全力を出せない可能性があること。」
「まぁ確かにそうだな。」
「そのため、今回の旅だが、カシアと身の回りのことをやるメイド2人、あとはレティナを連れていってもらう。」
「まて、もう一人いいか?」
「ん?誰を連れて行きたいんだ?」
「ライという少年だ。」
「ん?ライは女だぞ?」
「へ?」
「お前まさか間違ったとは言わんよな。」
冷や汗が流れる。
「お前はとことん問題を起こすのが得意だな。」
シルファが呆れたように言う。
あとでライに謝ろう。
「では、城からはライも含めて5人だな。」
「わかった。うちからは新しくもらう馬車でうちの冒険者グループと俺が行く。」
「では、出発だが3日後だ。準備を頼む。」
こうして、俺の初の国外遠征が決まった。
日次20時に更新予定です。