閑話2 Dランク冒険者
ミゼリ視点です。
振りぬいてくる鋭い拳。
それを私は、紙一重でかわす。
「ミゼリ姉。相変わらずやるな。」
戦っている相手であるコアが話しかけてくる。
だが、私には会話する余裕がない。
手に持っている錫杖を振るが、コアも紙一重で交わし、再度鋭い拳が飛んでくる。
「みーちゃん!」
私が言うと私の職業『巫女』で召喚した聖犬(名前はみーちゃん)が拳を横からそらしてくれる。
その間に体制を立て直し、錫杖の先をコアの首元にあてる。
「あー。また負けた~。」
コアが悔しがる。
「そこまで。」
オーザーさんからの終了宣言。また私は、勝つことができた。
コアの首元にあてた錫杖を引き、日陰に向かう。
私達が冒険者ギルドで登録してからだいぶたった。
ご主人様が帰ってこなく、捜索のために急遽立ち上げた私達の冒険者パーティ。
私とロゼ、コア、ランセの4人パーティだ。
私の職業は『巫女』。主な役割はみんなの回復だ。
だが私は、皆をまとめるリーダーをやらせてもらっている。
喧嘩っ早い性格でどんどん飛び込んでしまう拳闘師のコア。
コアの後ろから相手を刺し、敵を凍らせることで援護してくれるフェンサーのランセ。
周りを見て、指示を出しながら回復などを行う私。
私の後ろから弓で相手に攻撃をしてくれるロゼ。
先日私達のパーティはDランクに上がった。
王都の冒険者ギルド内では、ご主人様の飛び級を除くと最速のランクアップらしい。
私達を育ててくれているゼミアさんとオーザーさんの力は大きい。
ゼミアさんは何でもできる。弓も使えるし、レイピアでも、拳でも戦える。
私達は、戦い方をゼミアさんに習った。
ご主人様を探したい一心で本気で学んだ。
その甲斐あってか、
すぐに私達4人はゼミアさんといい勝負ができるようになった。
もちろん、私達一人ひとりでは足元にも及ばないだろう。
訓練には、オーザーさんも参加し、
より実践的な戦ができた。
オーザーさんはSランク冒険者。
この王都でも10本指に入る強さを誇ると本人が言っていた。
私達4人がオーザーさんと対峙したときの恐怖は今でも忘れない。
それほどまでに実力者の放つ気というんだろうか。雰囲気は別物だ。
「ミゼリ。いい判断だ。これからも周りを見て今みたいな風に最善の判断をできるように心がけるようにな。」
オーザーさんからのコメント。
いつもは厳しいコメントばかりだったけど、今日は褒められた。
オーザーさんはめったなことではほめてくれない。
でも、これは冒険者の厳しさを知っているからだろう。
時には、魔物だけではなく、盗賊のような「人」を相手にするようなこともある冒険者。
冒険者として活動するなら、色々な覚悟を持つようにと毎日言われる。
「コア、お前は相変わらずだのう。まずは突っ込みすぎだ。突っ込みすぎるのであれば、相手の行動パターンを予測しろ。」
「んなこといってもよぉ。相手だって人間だ。完璧に予測なんてできねぇよ。」
「そんなもんわかっとる。相手がどんな行動をしてきても冷静に対処できるように考えて戦うんじゃよ。頭を使わずに戦うのなんて、魔物でもできる。」
「難しいなぁ。」
コアもわかってはいるみたいだが、どうしたらいいのかいまいち掴めていない様子。
これからの課題だろう。
「次は、ロゼとランセじゃな。」
私の横にいたロゼとランセが立ち上がり、日向に向かう。
ここは、ご主人様の持っている家の前だ。
最近名前は売れてきている私達。
道行く人が私達を見ているが、私達は気にしない。
「それでは、はじめい。」
オーザーさんが叫ぶ。
開幕バックステップするロゼ。弓術師は近接に弱い。
それを読んでいたランセ。開幕からのダッシュ。
「読んでたよ!ロゼ!」
「でしょうね!」
2歩ほどバックステップしたロゼが急に前に走り出した。
「えぇ!?」
ロゼとランセの距離が縮まる。
驚いたランセが急ブレーキをかける。
「引っかかったわね。」
前に出たロゼが弓を射ながら横にステップする。
皆怪我をしても私が治すから、全力だ。
ただし、家にだけは被害を出さないように気を付けないと。
午後の仕事の量が3倍に増える。
「くっ」
ランセがレイピアで弓をはじく。
どんな動体視力だろうか。
ランセが距離を詰めようとするが、弓の雨が止まることはない。
しかもロゼは動きながらでもかなりの命中率で弓を射ることができるので、
一度足を止められてしまうとじり貧だ。
「こまったなぁ。なーんてね。行くよ!ロゼ!『氷突壁』」
ランセがレイピアを地面にさすと目の前に大きな氷の壁ができた。
弓がすべて氷の壁に刺さる。
ロゼも弓を無駄にする気はないし、射るのをやめた。
「『氷突弾』」
氷壁の後ろにいたランセがそう叫びながら氷の壁をレイピアでつくと、
氷の壁が砕け、ロゼに飛んでいく。
「どうだぁ!」
ランセの笑顔に対し、クールなロゼ。
全ての氷の塊を避けていく。
まさかと思ったのも一瞬。全てよけきってしまった。
「これで終わり?」
勝ち誇ったロゼ。
ランセも驚いている。
「あれを全部避けるなんて…。でも負けない。」
走り始めるランセ。
だが次の瞬間。
「そこまで!」
オーザーさんが言う。
ランセとロゼはわかっていないようだが、
私はすぐに理解し立ち上がる。
家のドアが開いた。
ご主人様だ。横にはカンナに料理を習いにきたリシア様。
リシア様を引きはがそうとするセシア様がいる。
ランセとロゼもすぐに横に移動し、道を開ける。
「それじゃ、ちょっとシルファに呼ばれたから王城に行ってくるよ」
ご主人様がオーザーさんに声をかける。
「了解した。」
オーザーさんが答える。
「そういえば、ミゼリ。」
「はい、なんでしょう。ご主人様。」
「先日Dランクに上がったんだって?がんばったね。近いうちに手合わせしよう俺と4人で。」
ご主人様はSランク冒険者。この国の姫様と仲良しで、王様を呼び捨てにできるような人間だ。
そんなご主人様が、私のような人間と話してくれるだけでもうれしい出来事なのに、
時間を割いてくれるなんて、私はうれしい気持ちになった。
「はい。喜んで。よろしくお願いいたします。」
「うん。それじゃ行ってくるよ。」
私達はご主人様の背中を見送る。
私達は、このご主人様のためにもがんばろうとそう心に誓った。




