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8話 強者


背の高いローブの男が動き出す。

判断が早い。



「爺さん、魔物暴走(スタンピード)を起こしちまえ。余興とかいってるからこうなんだよぉ!」


爺さんが手をのばし、ダンジョンに床に向かって手の平を向ける。すると何か水晶のようなものがダンジョンからでてきた。あれがダンジョンコアだろう。


「さて、小僧。俺が相手だ。」

背の高いローブが殴りかかってくる。


俺は、真後ろに飛び距離を取る。


「要はお前の鎌には触れちゃならねぇ。俺は鎌に触れることなくお前を殺せばいいわけだ。」

背の高い方がローブを脱ぎ捨てる。


「俺の名前はロスト。ヴェリアストのレティナの国を担当している。組織での番号は『6』だ。」


赤い短髪。イケメンな顔立ち、顔に入れ墨のようなものが入っている。

手にはメリケンサックを装備している。


「6?お前たちは何人いるんだ。」

「普通に考えて、教えるわけないよな。」


確かにそうだ。


「だーがー、特別に教えてやろう。教えたところで意味はないからな。誰かに伝わっても何も起きないしなぁ。」


教えてくれるのかよ。

俺の心の中での突っ込みは声には出さなかった。


「この世界には大きく7つの国がある。知っているよな?俺たちのような番号付きは10番まで番号を与えられる。基本的には各国に1人ずつ入る。残った3人は、それぞれ特殊なやつらだ。特殊というのは、俺らみたいに国に対する裏工作でつぶすってタイプとは違って、お前もよく知ってるだろ。死神様を召喚しようとしたタイプのやつらだ。」


俺は知らなかったが、この世界には大きな国が7つあるらしい。

そこに番号はわからないが1~7までが散らばっている。

ほかの3人は死神召喚など一発屋に近く、定住して裏工作するようなタイプではないと理解した。


「番号に意味はあるのか?」

「番号に意味なんかねぇよ。これはそういう組み分けなだけだ。まぁもっとも番号を振ったボスには意味があるのかもしれないがなぁ。」


親玉もいるらしい。

うーん。悪の組織っぽい。


「さてと、無駄話もここまでだな。」


ロストがメリケンサックを握りなおしてこちらを向き直る。


「んじゃ、爺さん。こいつを最低何分止めときゃいいんだ?」

「んー30分といったところじゃな。これから69層に強力な魔物を召喚する。その後、上の階に魔物達をおしていかなきゃならないからのう。」

「へいへい。んじゃまずは、その時間から稼ごうか。大丈夫だ。すぐには殺さねぇよ。ここまで邪魔されたのは初めてだからな。…俺はうれしいんだ。」



ロストがダッシュで距離を詰めてくる。

速い!


「オラァ!」

ロストの拳が俺のほほをかすめる。


「どうしたどうした。オラオラオラオラァ!」

鋭く繰り出される拳を紙一重で躱す。

本当にぎりぎりだ。


鎌を大きく振ってみる。

が、上半身を軽く引いただけで、鎌を避けてしまった。

素晴らしいスウェーだ。


俺の鎌を躱したロストが再度殴りかかってくる。

ここはひとつ、拳にカウンターで鎌の刃を合わせることにする。


ロストの攻撃をよく見る。これはストレートの構え。

『ここだ…!』

鎌を立てに構える。


「はっ。やっと気づいたか。『幻狼拳(げんろうけん)』」

ストレートのパンチが煙のように消えた。


「んなっ!?」


呆けたところを横から殴られる。

壁まで飛ばされ、壁に激突する。


物凄い音と共に壁に大きなクレーターを作った。

俺の身体が無事なのは高いレベルだからだろうか。


「はぁ。こんなもんかぁ?死神様よぉ!エルダーリッチのほうが強かったんじゃねぇのかぁ??」

煽りに煽られる。


だが距離を取れたのはラッキーだ。


「『常闇(とこやみ)』」


俺を中心に闇を展開する。

『闇夜の友』はパッシブでONになってるので、完全に俺を見失うだろう。


「ほほう。これが死神様の闇か。確かに全然見えねぇ。聞こえねぇ。匂いもねぇ。だが、触感はあるようだな。」


ロストが地面を爪先でがんがんっと蹴りながら言う。


俺は距離をゆっくり詰めていく。

鎌の先端が届くところで大きく鎌を振る。


「終わりだ。」

ボソッとつぶやく。


「そこか。」


ロストが大鎌の先端をぎりぎりで避け、カウンターの拳で鎌を殴った。

どうなってるんだ。


「チッ外したか。」

ロストが言う。


こいつは確かに見えていなかった。そして、聴こえていなかった。


だが、俺の攻撃を確かに感じ、よけていた。

これが強者だ。

この世界で出会った初めての本物。


背筋がゾクリとする。


ロストが見えていないのは間違いない。ということは反撃してきたのはスキルによるカウンター系だろう。

やっかいだ。


こう言うタイプは物理攻撃に対するカウンターと予測する。

『闇刃』や『衝鎌撃』などの特殊な攻撃なら通るだろう。


衝鎌撃(しょうれんげき)

鎌を横に振り。鎌から衝撃波を飛ばす。


衝撃波がロストに当たる瞬間、

ロストはちらりとこちらを見た気がした。


ゾクリと悪寒が走る。

「衝撃派か。そんなもんは俺に聞かねぇ。『反衝拳波(はんしょうけんぱ)』」

衝撃波をロストは殴り返してきた。


「そんなのありかよ。」

衝撃波を避ける。


近距離もダメ、遠距離もダメ。最強すぎでは?


はぁ。なんか、めんどくさくなってきた。

避けれられるのが嫌なら避けられない攻撃をするのみだ。死ねばいいんだよ。


調鎌(ちょうれん)

俺はそういうと鎌を大きくする。

大きく、大きく、大きく。


「死ね。」

俺はそういうと鎌を振る。

ロストが鎌を感じたようだ。ジャンプしてかわす。


しかし、鎌が急にロストを追うように曲がった。

俺は何もしていない。


だが白い世界にいた、もう一人の俺の声が頭の中をよぎった。


『お前が自分を見失うと一歩ずつ自分の深層に支配されていく。』


死ねという思いに対して、体が反応した。

そうとしかとられられなかった。


鎌がロストを真っ二つにする。

だが不思議と悪い気持ちはしなかった。

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