5話 新生活初日
翌日。
俺が3階の自室を起きていく1階に降りると、すでに全員目を覚ましていた。
この世界は時計がない。といっても俺はメニュー画面で見れるのだが。
どうやってアラームもないのに起きているのか。
特に俺は朝が弱いタイプだからな。
どうにもならない。
既に昨日の夜に確認したグループに分かれ、それぞれ1,2,3階の掃除を行っていたようだ。
頭があがらない。ダメな主ですみません。
ちょうど近くにいたアリーに声をかける。Aグループは1階だったようだ。
アリーに聞いたところ朝食も食べていないとのこと。
開幕からやらかしていた。
確かに財布を預けているわけではないので、料理をしようにも食材がないし、どうにもならないだろう。
俺は謝罪と共にダッシュで外に出る。
市場で直ぐに食べれるようにパンを購入する。
卵、砂糖、牛乳も購入しダッシュで家に帰る。
キッチンに入りフレンチトーストの準備をする。
子供が多いこともあり、子供が喜ぶものといえばこれだろう。
特に甘い物という観点でいくと女性が喜びやすいという点もある。
一気に焼ける数には限界があるので、先にBグループを呼び寄せる。
最初にBグループにした理由は、6歳のパラと9歳のカンナがいるので、完全に俺の独断と偏見だ。
Bグループの5人を受付台のところに座ってもらう。
そこにあつあつのフレンチトーストをBグループのメンバーに配っていく。
「さぁ食べてくれ。あと、食べるときについてだが、一般的なマナーではしゃべったりはあまりよくないかもしれないが、我が家では許可する。いろいろ話して相手のことを理解していってほしい。」
「フレンチトースト!」
カンナがうれしそうに声を上げる。
「フレンチトースト?」
パラが繰り返すように疑問形で言う。
「フレンチトーストっていうのはね。ふわふわな甘いパンよ!とてもおいしいわよ!」
カンナのうれしそうな声にパラが足をパタパタと動かしている。かわいい。
それを聞いていたアスタとメメリが会話に混ざってくる。
アスタくんは、奴隷になる前からメメリと知り合いの少年。丁寧な口調で敬語もできる。
メメリは、大人っぽい女の子。頭が良い。
「カンナ、君はこういった食事に詳しいんですね。」
アスタが聞く。
「えぇ。私も作ったことがあるわ。前に迷い人が書いたレシピを見たことがあるの。」
カンナが答える。
多分前世の記憶を話すときは、そういう風に言いまわすようにしているのだろう。
「確かにおいしいわね。」
メメリが1切れ目を食べながら言う。
好評でよかった。
その後俺は自称フレンチトースト職人として焼き続けた。
A,B,Cグループと鍛冶師の2人にフレンチトーストを食べてもらう。
1時間ほどたったころ。全員の食事が終わった。
時間は午前10時といったところだ。
全員を呼び集めて話を始めた。
「さて、今日の話をしようと思う。まずは、家の掃除で2グループ。買い出し及び昼、夜ご飯を作る1グループ。で、今日は過ごしてほしい。」
「では私たちAグループは掃除を担当いたします。」
「私たちCグループも同様に掃除を担当します。」
それぞれメイド長のアリーとゼミアが返答してくる。
「では私たちは買い物と食事の用意をいたします。」
ロメリアも問題ないようだ。
6歳のパラに料理をさせるのは若干心配だが、ロメリアがついているので大丈夫だろう。
一瞬で方針が決まり散会する。
ロメリアにお金を渡すことも忘れない。
料理なども好きに作っていいとお願いした。
「ところで、わしたちはどうしたらいいんじゃ?」
オーザーが俺に声をかけてきた。
ふっふっふ。度肝を抜かしてやる。
鍛冶師ギルド1階、入口のから見て左奥に鍛冶場がある。
俺とオーザーとオンリの3人はそこに集まっていた。
「オーザー。言っていたよな。どんなものでも加工してやると。」
「あぁ男に二言はない。この国で一番の鍛冶師だ。なんでも加工してやる。」
俺はにやにやしながらアイテムボックスから。
黒竜の素材を出す。
牙、鱗、尻尾に爪。一応何でも揃っている。
「はっ…?」
オーザーの目が点になっている。
「これは…なんじゃ…?」
「オーザーが求めていた黒竜の素材だ。」
「え…?」
さすがのオーザーも本当に黒竜の素材が出てくるとは思っていなかったのだろう。
反応が思っていた通りだった。
「契約するときに言っていたよな?黒竜でも何でも持って来いと。どうした?自信がなくなっちまったか?」
にやにやしながら話かける。
オンリが心配そうな顔でオーザーを見ている。
「えぇい。やってやるわい。職人を舐めるな。何が欲しいのか申してみい。」
良し。乗ってきた。
「これから話すことは他言無用だが、俺の職業は死神という。俺のことは、シルファ王たちも知っていて、俺が住むことに問題はない。敵同士でもない。職業死神は大鎌を使う。こんな風にな。」
手元に収穫用の鎌を出現させ、調鎌でサイズをいい感じにする。
軽く距離を取り素振りをすることでイメージをわきやすくする。
「なるほどのう。それでわしたちが作ればよいのは、その鎌に変わる武器か。確かに今使っているものはどこにでもありそうなものじゃしな。」
そりゃそうだろう。初期装備だし。。。
「あぁ、この武器に変わる新たな鎌を作ってもらいたい。」
「腕がなるのう。わかった。任せてもらおう。」
オーザーが返事を返してくる。
「そういえば見た目などに何かこだわりや希望はあるのかのう?」
「特にない。オーザーの感覚で一番いい装備を作ってもらいたい。」
装備のことは装備職人が1番わかっているだろう。
俺はそう言い、作業を任せた。
鍛冶部屋を出るときにちらっと振り返ったが、
オーザーが目を輝かせながら嬉しそうに素材を見ている。
確かに黒竜の素材なんて一度もさわったことはないだろうからな。
職人としては、未知への探求。とても名誉あることだろう。
あとのことはオーザーに任せ部屋をでる。
次に家の食事事情をよくするために俺は、建築屋に来ていた。
1階にある受付台を撤去し、部屋を追加する。
それにより皆で食事をとれる場所を作ろうと考えている。
建築屋に要件を言い、さっと家に同行。
ぱぱぱっとプロたちが受付台を撤去し、パーティションのようなもので部屋を追加する。
さすがの職人技だった。
こうして1日で我が家のリフォームが終わり生活の基盤が整った。
夜。
ある程度の掃除も終わり、
食事なども準備ができていたので、食事をとりながら1日の反省会と明日に向けての話をする。
皆楽しそうに談笑していたが、俺の一言で凍り付いてしまった。
「明日なんだが、王城に行こうと思う。シルファ王たちに家を買ったことを伝えようと思う。」
俺にとってはもうシルファたちは知り合いだが、よく考えれば王様だ。
皆が驚くのも無理はない。
「もしかしたらセシアとかが来たいと言い出すかもしれない。」
皆青い顔をしてしまった。
オーザーとオンリは明日鍛冶場からでないことを決めたようだった。