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哀しき秘密

 さぁ、いよいよ迷宮の探検です。

 私は強制的にノリスの倉庫に格納されてしまいましたから、冒険者がみつけたという地底のドームにつくまでは、全く出番がありません。


 その上もはや迷宮を知り尽くしているノリスたち砂漠の民と、毎日迷宮に潜っている3人の冒険者たちが一緒なので、正直まるで気楽な散歩のようにたやすく透明ドームについてしまったのです。


 これが私を守りながらとなると、それなりに苦労したでしょうから次元倉庫に人間を収納のきることを発見したノリスはグッジョブですよね。


 透明のドームからおよそ10メートル以内には近づくことができないことがわかっていましたので、ノリス達はドームから15メートル上にあいていた横穴に集合しました。


 やっと倉庫から出して貰えたと思ったら、皆が私を見つめています。

 お仕事しろってことですよね。

 私はそうっと横穴から首を突き出して下を眺めてみました。


 確かに透明の膜のようなものの中に、広い部屋のようなものが見えています。

 私はゆっくりとフルートを奏でました。


 扉を開く術式なんて知りませんから、解呪の術式を広げてみます。

 金色のキラキラした光の粒が次々にドームに向かって舞い落ちるさまは、スノウドームをひっくり返した時のようです。


「見ろ!」

 ノブが大きな叫び声をあげました。


 金色の光の粒はいつの間にか、ドームのへやの中に落ち込んでいます。

 つまり、もうドームは解除されているのです。


「さあや、ご苦労様」

 ノリスはそういうと私を抱きかかえて飛びおりました。

 ノリスに続い、次々に全員があとを追います。



「いったいここは何なんだ」


 地下にある筈なのにいくらドームがあったとはいえ、埃ひとつ積もっていません。

 しかも照明もないのに部屋全体が明るいのです。


「しまった! 上を見ろ」

 消えた筈のドーム状の膜が頭上を覆っています。


「大丈夫だろう、ナナがいますからね。それよりも早くここを調べましょう」


 レイはなんだか焦ったようにそう指示をだします。

 その様子を見て、他のメンバーも嫌な予感がしてきました。


 背中がぞくぞくとして、じっとりと冷や汗がながれます。

 霊獣たちをここまでおびえさせるなんて、この場所に何が眠っているというのでしょうか。


 部屋の中央部分には円形のマークのようなものがあり、そこに青い光が円柱のように真っすぐに立ち上がっています。


 他には何もありません。

 上から見て何かあるようにみえたのは、この立ち上る青い光のせいでしょう。


 レイがそっと青い光に触れますがなにも起こりません。


「みんな少し離れていろ」


 そういうとレイはその青い光の中に入って行きました。

 ちょうど円柱の真ん中まで来た時、レイの姿はふっと消えてしまいました。


「レイ!」

 私が思わず悲鳴をあげるとノリス抱きしめて言いました。


「落ち着け! ただの転移だ。たぶんな」


「どうする?」

「行くしかないだろう」


 ひとりづつ円柱に入っては消えていきます。

 同じところに出たのかすらわかりません。


 ノリスは私を抱きかかえて円柱に入りました。

 上の部屋と違って少し薄暗いですが、ほぼ同じ大きさの部屋があり、通路が1本あります。


 私たちしかいませんから、他のメンバーはその先に進んだのでしょう。

 カツン、カツンという音を響かせながら2人はその廊下を歩いていきました。


 他のメンバーも全員が揃ってひとつのものを見つめていました。

 私達も急いでそこに向かいます。


「あれはいったい何なんだ?」

 ノリスの質問に、部下であるフレドが答えました。


「多分ですが、地球でいうところのコンピューターといわれる計算解析マシンのようですねぇ。こういったものは地球では個人でも利用していたようですが」


「個人で使うのはパソコンと言うのですが、ここにあるあの巨大な機械は多分スーパーコンピューターと言われるものでしょうね」

 とミカが説明しています。


「問題は、こいつが何をやっているかなんだが」

 レイが唸るように言葉を吐き出しました。


 そっかぁ。レイは地球ではかなりのおじちゃんだったから、きっとこういうのは苦手なんでしょう。

 こんなのが得意そうなモリがいないのは残念ですね。


「誰か、これを調べられそう?」


「アー、俺一応情報分析官なんだわ。シンみたいに有能じゃないから雑用みたいなことしかしていないけれど。ケイもミカも手伝ってくれるだろう?」


「オレは、どっちかっていうと暗号解析が任務だったんだけどな」

 とケイが言い、ミカも頷いたのでここは若者たちに任せることになりました。


 残りのメンバーで、このスーパーコンピューターを中心に8つの通路があったので、ひとつひとつ調べることにします。


 そのうちのひとつは私たちが使った出口に向かう通路だから、調べるのはあと7つの通路ですね。


 全員がレイから渡された通信機を耳に仕込みましたから、会話は全員に筒抜けになります。


 私とレイはさっき使った通路の右側の通路を調べることになりました。

 正直戦力外でしかない私をノリスが格納するって言うので、絶対に嫌だ! 危なくなったら自分の次元倉庫に逃げ込める! と主張して渋々だけどノリスに認めてもらったんです。

  

 だってこんな冒険、指をくわえて見ていろなんてあんまりですよね

 

 さっきの通路もそうですが、この建物らしき物体は自動的に清掃や空調を管理しているようです。

 あのスーパーコンピューターの仕事でしょうか。

 さっきまで暗かった通路が明るくなっているのです。


「ねぇ、ノリス。これを作った人たちはどこにいるのかしら?」

 そう質問した私は、さっきから感じている得体の知れない恐怖の原因がわかりました。


 あきらかに生きているシステムに対して、それを利用する筈の生物がいないのです。

 カァン、カァンと響く靴音がだれもいない通路に響いていきます。


 やがてひとつの大きな部屋にでました。


「何だ、これは」


「いったいどういうことだ」


「誰がこんなことを」


 耳元でそんな声が次々に聞こえてきますから、全員が同じものを見たに違いありません。


「落ち着け、全員多分同じようなものを発見したとは思うが順番に説明しろ」

 レイの声が響きました。


「フレドです。私が見ているのは大量のカプセルに入った人間です」


「コハクだ。こっちもおんなじだ。何か液体のようなものが循環しているからシステムは正常に作動しているのだと思われる」


「ノリスだが、しかしこいつら生きているようには思えねがなぁ。しわくちゃの爺さんとばあさんばかりだ」


「ナナよ。多分システムは作動していても年月が経ちすぎて人間の劣化は止められなかったんじゃないかしら。皮膚の剥離が始まっているわ。機械が除去しているようだけど」


「レイだ。全員ホストコンピューターの場所まで戻ってくれ。原因をノブたちが突き止めているかも知れないからな」



 私たちが全員集まると、ノブたちも衝撃を受けたような顔をしています。

 3人で顔を見合わせていましたが、結局ミカが説明をかって出ました。


「まずですね。これは船です。宇宙船ですね」


 ミカの言葉に全員が頷いた。

 もうそれしか考えられないだろう。


「ここに不時着した時、下界はこの人たちが暮らす環境じゃなかったみたいなんですね。でも船が壊れてて脱出できないので、コールドスリープに入ったわけです」


 それがあの大量に老化して肉体的には死んでいるとしか思えない人々だろうねぇ。


「えっとですね。ここでホストコンピューターが命令されたのは、この船の維持管理といずれ人類が生存できるようになった時に彼等を起こすことだったんです」


 でもそれ無理ゲーすぎるでしょ。

 コールドスリープしていても劣化はするし、星の環境が変わるまで寝ていられる訳ないもの。


「えっとホストコンピューターは最初は人工受精で赤ん坊を作って、劣化した遺体を入れ替えることでその均衡を保っていたんですけれど、このホストコンピューターにはもうひとつ命令が加えられいたんです」


「この星にもしも知性をもつ生き物が現れ、その属性がここに眠る人々よりもさらに進化できる可能性がある時には、人工授精での赤ん坊作りは中止すること。そしてここに眠る人々の力を、この星の人々に分け与えること。」


「つまりさぁ。それが霊山と霊獣というシステムなんだよ。このマスターコンピューターが霊獣の霊力の源なんだよ。だからレティの解呪はここの扉を開くことができたのさ」

 ノブが堪りかねたように口を挟みました。


 そうです。エネルギーというのは無から有を生み出すことができませんから。この船がその力の源なのはわかりますが……


「エネルギーはどっからもってきているの? ホストコンピューターだって無から何かを生み出せないでしょ」

 私の質問にケイが答えました。


「どうやらこの星の地熱エネルギーを吸い上げているみたいだね」


「じゃぁ、ホストコンピューターはなぜあの哀れな異星人をいつまでもカプセルに閉じ込めておくの?」


「それはプログラムのミスだね。受精卵製造を禁止した時、カプセルの廃棄を命令していないからね。命令されなっきゃ勝手には動かないさ。大丈夫だよ。カプセル廃棄とコールドスリープの停止コマンドは打ち込んだから」

 とノブはい言います。


 プログラム言語って宇宙でも統一されているんですかねぇ。


「そこでなんだけど、霊獣システムを停止することもできる」


 青い顔をしながらケイは言いました。

 霊獣システムを停止すれば、人類は科学力を発展させることで星がもつエネルギーを利用するようになるだろう。


 シーンとして誰も何も言いませんでした。

 科学知識をきわめていくシステムとこの霊獣システム。どっちがより人類の為になるんだろう?


「帰ろう」

 ぽつんとレイが言った。


 コハクはこの場所にきたのだから、いつだってここを停止できる。

 急ぐことはない。


 コハクの転移で私達はアイオロス王の執務室に戻ります。


 私たちは結局誰もあの宇宙船について語らなかったし、レイはアイオロス王にだけ真実を打ち明けました。


 霊獣システムの廃止は、そのシステムを壊すことができるという情報を含めて、あまりにも危険すぎると判断されて秘匿されてしまいました。


 だから私のちからでもドームは開かず、結局穴を埋めたと公式には記録されています。


 けれども人間というのはいつだって真理を求め続けるものですから、いつかきっと真実が白日の下にさらされる日がくることを、誰も疑いませんでした。


 その日はきっとやってくるでしょう。

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