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ナナ学園にいく

「だからねぇ、地面を地雷にしちゃえばいいよ。それで動くと爆発するぞっていえば、戦争も終わるって」


「なに酷いこといってんだよ。いいか地雷ってのは死なないで、足とかが吹っ飛ぶんだぞ。お前片足人間を大量生産する気かよ」


「だって死ななければ、私が治療できるもん。ねぇこのアイデア良くない?」


「凄い武器があるんだぞ、バズーカ砲ってしってるか……」


 ダンが天幕を出てからそんなたわいもないことを語り合う2人は知っていた。


 自分達が人間では得られないチートな力を持ってしまったことも、けれどもけっして獣になるつもりはないことも。


 またどれだけチートな力であっても、この世を統べるのは霊獣ではなく人間であるという事実が持つ意味も。

 いるべくして此処にいるなら、その果たすべき役割を模索しつづけるしかないのだと、私たちは思っている。


 それ以降、襲撃に会うこともなく、私たちはプレスペル皇国の皇宮に到着した。

 皇国は、地球でいうところの中東のようなイメージの国だった。


 周りは砂漠に覆われていて、豊かなオアシスがある国。

 プレスペル皇国では複数の妻を持つことができるんですって。

 文化も中東よりなんですね。


 砂漠のような環境の厳しい場所では、夫を亡くした女性はひとりで生きることができない。

 未亡人の救済のために男性が複数の妻を持つようになったそうです。

 

 歓迎のレセプションや答礼のパーティなどのあと、護衛団は王国に帰っていった。

 護衛団の出発を窓から見送っているとき、不安がもたげてきて泣きそうになってしまった。

 

 王国では、たった10歳の皇子が私と同じ立場で頑張ってるんだから、くじけちゃいけないよね。


 しかし、なんとか公式行事を乗り越えたナナとセンを待っていたのは、プレスペル学園に編入するための試験でした。


「あんたはいいわよセン、現役の高校生だったんですもの。テストなんてお手の物でしょう。それに引き換え私なんて、テスト勉強なんてずっとやってないのよ」


「馬鹿言うなよ、テストが好きな奴なんかいるのかよ。俺だって憂鬱だよ。けど試験監が来るまで、とりあえず問題集をかたっぱしからやっつけようぜ」


「う~ん、いるんだけどね、テストが好きって変わり者。いや、それよかあたしの勘がセンってかなり成績が良いって告げてるよ」


「まぁな、一応進学校だしさ。学年トップをキープしてたんだぜ、オレ」


 わたしは素早くセンに、近くにあった、クッションを投げつけました。

 ちゃんとセンの顔にヒットしましたが、センは気に留めた様子もなく、クッションを投げ返すと、勉強を続けます。


 「姫さま、もうすぐ試験管が到着なさいます。学園の制服にお着換えください」

 皇国で付けられた侍女が笑顔で呼びにきた。


 制服は暑い国にふさわしく、ゆったりと身体全体を覆うワンピーススタイルだった、

 大きくて身体が中で泳ぎそうだけど、そのおかげで風が通って、とても楽で涼しい。


 身体を締め付ける服から解放されるのは嬉しいかも。

 センもゆったりとした上着とパンツスタイルだ。


 今からセンと一緒に試験を受けます。

 さすがに王族特権らしく、試験監の先生がお見えになって私室で試験を受けるんです。

 

  


 翌日、朝からドキドキして落ち着かない。

 学校生活は久しぶりだし、貴族社会の子供たちとどんな話をしていいかもわからないし、昨日のテスト結果も教えて貰ってないし……。


「姫さま、お食事が進みませんか?」

「メリーベル、なんかすごく緊張して食事が喉を通らないの」

 

「いったいどうしたんだよ。正式なレセプションだって、見事な猫かぶりを披露していたじゃないか?」


 横合いからセンが口を挟んでくる。

 失礼な奴め!ほらみろ、さっそくメリーベルに叱られてる。


「それでは姫さま、こちらのジュースだけでもお召し上がりください」

 メリーベルはセンを無視してジュースを、渡してくれた。


「おいしい」


 王国の果物よりも皇国の果物は、味がギュッと濃縮されている感じがする。好みの問題だけど、どちらもおいしい。


 私は朝食はフルーツとお茶だけで十分なんだけど、そうするとセンがそれっぽっちじゃ大きくなれないと、うるさいんだよね。


 学校は苦手。

 特に女子の、トイレも一緒にいくとか、お揃いの物を身に着けるとか、そういうのがよくわからない。


 私の学校生活は、「だってナナちゃんだから」という良く判らない理由によってなんとかクリアできた。

 

 不思議ちゃん認定されていたんじゃないかと、今では思っている。


 けれど今は、一応王女だからね。

 不思議ちゃん認定される王女なんて、如何なものでしょうか?


 「姫さま、お迎えのイスト先生がいらしてますが」

 

 「こちらへお通ししてください」

  

 おひげがとても見事な長身の先生です。


 「今日から姫さまと、セントレア君は第4学年に転入することになりました。担任は引き続き、私が担当いたします。よろしいですかな?」


 セントレアって言うのは、センがゴードンさん家に養子に入る時、センだけではあんまりだろうって、付けられた名前なの。


 「それじゃ、私もセンと同級生になるのですね?」

 「姫さまは、かなり学業が進んでおいでのようですので、スキップして頂くことになりました」


 王様の側仕えをしている時、きっと無意識のうちに、多くのことを学んでたのが今回は役にたったみたい。


 それにしても初回だけとはいえ、わざわざ先生が迎えにきてくれるなんて、王族ってすごい!


 それでもドナドナ気分で、先生の後をついていくと、センが

「心配すんな。困ったら助けてやるから」

 って小さく耳元で呟いた。


 びっくりして、ちょっと顔が赤くなってしまったけど、あんなにドキドキしていたのが、急に落ち着いて楽に呼吸できるようになった。


 プレスペル学園は元々王族のための学校だから、皇宮の目の前に建っています。

 貴族の子弟も自分の館から通うんだけど、皇都に館がなくても寄り親である大貴族の館に寄宿することができます。


 1階は受付と事務室、警備室、購買部門で生徒以外でもここまでなら入れる


 2階からは2学年づつ教室、職員室、各人の個室、ティーサロン、食堂が完備しています。


 私たちは4学年だから3階になりますね。

 まずは先生が入室して、続いて私とセンが入る。

 先生が紹介してくださってから、


「レティシア・ウィンディアです。よろしくお願いします」

「セントレア・バルトです。よろしくお願いします」


 そう言って教室を見回してみると、興味津々の26の瞳が迎えてくれた。

 このクラスは私たちをいれて、全部で15人になる。


 そのうち要注意なのが、皇族のひとりであるアラムだ。

 彼は皇帝の甥にあたり王子の称号を持っている。


 皇国では皇帝の子どもは皇子、皇帝の兄妹の子どもは王子の称号を与えられる。


 王国では王の兄弟の子どもは、プリンス・プリンス。

 王子の子供という称号があたえられているのと、同じことだ。


 プレスベル皇国の動きは、きな臭いなんてレベルではない。

 王国と争っても、帝国に漁夫の利を与えることは知っているはずなのに、しきりに王国にちょっかいをかけてくる。


 アラム王子は位階でいえば、プリンセスの称号を持つ私よりも下、けれどひとりだけ私より上の位階をもつ人がいる。


 セーラ第1皇女、王国に遊学してきたあの皇子の姉姫だ。


 位階でいえば同等とはいえ、養女と実子の立場の違いは大きい。

 注意するのは、この2人だろう。


 授業は午前・午後それぞれ2時間行われる。

 2時間の授業がすむと、お昼休憩が3時間。そして午後の授業が2時間という時間割りとなる。


 お昼休憩が長いのは、この国にはシエスタの習慣があるからで、暑い昼間は仕事や勉強に向かないという理由がある。


 お昼休憩は、自宅に帰ってもよいし、個室でお昼寝してもいい。

 そのために個室が準備されている訳だしね。


 最初のお昼休憩に、真っ先にやってきたのは、セーラ皇女。

「レティシアさま、お昼、よろしければ私の部屋にいらっしゃらない?5階に私室がありますの。」


さすがは皇女殿下、学園に私室を持ってました。


そこへアラム王子が、口をだします。

「セーラ、レティシアさまの私室も用意されてるだろう、先にご案内した方がいいよ。初日で疲れているかもしれないだろ。僕はセントレア君を案内するよ」


「セントレア君、我々男性の私室は6階なんだ、案内するからついてきたまえ」

 そういうとセンを促して出ていきました。

 王族というのは、どこでも押しが強いんですかね。


 しかしどうやらセンは皇国では霊獣として扱われるようです。

 一介の侍従に私室が与えられる訳はありませんからね。


 だとすると皇国の情報収集能力は目を見張るものがあります。

 私たちを霊獣と知っているのは王国でもごくわずかの筈なんです。


 だからこそ私たちは、王様のお気に入りってだけででかい顔をするって風当りも強いし、一部のひとには激しく嫌われたりもしています。


「失礼しました。私レティシアさまと仲良くしたくて、気が利きませんでしたわ。お部屋にご案内させてくださいませ」


「ありがとうどざいます。セーラさま、どうぞレティとお呼び下さい」


「ありがとうレティ、私もセーラと呼んでね」


 女の子らしいウフフ、キャキャキャと話ながら私たちは5階を目指します。

 でも絶対わざと私室の事には触れませんでしたね、セーラさま。

 自室に連れ込む気満々でしたもの。


 やはり侮れないなぁと考えていると

「こちらのお部屋です。部屋付きの侍女がおりますから、何でもおっしゃってね。食事だけでもご一緒致しましょうよ」


 「喜んで伺いますわ。セーラ。ではいったん部屋で休みますから、食事の支度が出来たらお呼びくださいませ」

 

 ふぅ、お嬢様ブリッコは疲れます。

 部屋は皇宮の私室と全く同じ作りなので、自分の部屋と同じように違和感なくつかえます。


 侍女に、簡単に着替えさせてもらうと、準備が整ったのを見計らったかにようにお迎えがきました。


 皇女殿下とのランチとなると、着替えが必要になります。

 第一ちゃんと侍女が服を用意して待ち構えていましたからね。


 完全に手の平の上ですね。

 皇国はやはり気が抜けないようです。

 セーラさまのお部屋では、何が待っているのでしょうか?

 

 

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