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魔獣襲来

 私たちがようやくウィンディア王国に帰国を果たすころには、氷の王国の対応という緊急の仕事もなくなりましたから、アイオロス王たちも、忙しいながらも落ち着いて仕事ができるようになってきました。


 できれば私はノリスと一緒にいたかったのですが、ノリスも砂漠の国の王族ですからいつまでも砂漠の国を留守にするわけにもいかずに帰ってしまいました。


 砂漠の国では、砂漠の長がいわば王様みたいなものなのですが、どちらかといえば各部族の合議制の体制なので、立憲君主制に近いものがあります。


 身分はきっちりと分かれてるのですが、公侯伯子男「こう・こう・はく・し・だん」という爵位もありません。

 ノリスの身分は公爵とかではなくて、青の守護者となっています。


 私も最初は砂漠の国の位階がまったくわからなかったのですが、しばらく砂漠の国でくらすと段々わかってきました。


 砂漠の国では、紫紅白緑黄という色によって位階が分かれるのです。


 これは「し・こう・はく・りょく・おう」と言われるもので、どの色を纏うことがゆるされるかで、その身分がわかります。


 逆にいえばこの5色とそれに青色はその身分の者しか身に付けられない禁色となっています。

 青は王の纏う色なので、青の守護者とノリスが名乗れば王族と契約をしてる霊獣だと誰もが理解できるんです。


 青を纏うことが許されている時点で、ノリスは王族の一員とされるんですね。

 王太子なら青の継承者と名乗りますし、王女なら青の娘と言います。


 だから私の名乗りは、「青の守護者の妃、レティシア・アイオロス・ネビュラス」になるんです。


 砂漠の国は、徹底した男尊女卑の国なので、女性は自分の名前のうしろに未婚なら父親の、既婚なら夫の名前を付けくわえなければなりません。


 結婚したら「レティシア・ノヴァーリス・ネビュラス」になるので、婚約段階なのか、結婚しているのかも名乗りでわかるようになっています。


 婚約した段階で身柄は婚家に引き渡されるのが普通なので、私は思いっきり特別扱いされているようです。



 私が自分の正式な名乗りをどうすべきか頭をひねっているのは、レイが新居のお披露目を兼ねたパーティを開くことになったからです。


 レイから届いた招待状には、ご丁寧にも「プリンセス・レティシア・ウィンディア」という名前と「レティシア・アイオロス・ネビュラス」の名前が並記されていたのです。


 レイの名前は「レイモンド・ギルモア侯爵」となっています。

 とうとうレイもすっかり天球に根を下ろしたんだなぁと思うと、感慨深いものがありますね。


 さすがにレイも侯爵にもなってレイという略称だけではまずいと思ったのか、レイモンドという名前にしたようです。



 いつもなら私は当たり前みたいに、プリンセスの称号を署名します。

 わざわざレイが並記してきたのには訳がある筈ですよね。


 私はしばらく考えてから「レティシア・アイオロス・ネビュラス」と署名して出席の返事を送りました。


 きっとこのパーティではノリスがエスコートしてくれるんでしょう。

 レイはこんな形で、それを私に教えてくれたんです。


 ノリスの婚約者としてパーティに出席するのは、あの婚約パーティ以来ですよ。

 私はさっそくお母さまのところに、衣装の相談にいくことにしました。


 王妃の間では可哀そうにアンジェリカが、お母さまの餌食になっていました。

 アンジェリカ王女の結婚披露も兼ねているのですから仕方がありませんよね。


「お母さま、アンジェ。ごきげんよう。すっかり準備が出来ているみたいですね。」


 私が2人に挨拶をするとアンジェが恨めしそうに私を見てこぼしました。


「まったく、こんな思いをもう一度することになるとわな。こんなことは一度で十分だ。」


 お母さまはにこやかにそんなアンジェの愚痴をスルーすると、侍女に言いつけて速やかにアンジェを地獄のエステコースに送り出しました。


 あの地獄のエステコースは贅肉を徹底的につまみだすので、施術されている女性の悲鳴が響き渡ることで有名なんです。


 そのかわりきっちりとサイズダウンするんですけれどもね。


 ドナドナされていくアンジェを見送ってから、私はアンジェのパーティで着る衣装について相談しました。


 お母さまはにっこりと嬉しそうに笑うと


「レティも、衣装に気を配ることができるようになったのね。」


 と、おっしゃいましたが、私だって綺麗な服は好きなんですよ。

 あんなに長時間拘束されなければね。



 夜会当日、きっちりとめかしこんでノリスがエスコートに現れました。


 そして私をみると、びっくりして固まってしまいました。

 だって私は、まるで砂漠のお姫さまのような民族衣装を着ていたのですから。


 薄いベールを幾重にも纏ったような、ナナの姿は夜の灯りの中でとても幻想的でした。


 ようやく自分を取り戻したノリスはうれしそうにナナをエスコートしていきます。


「ねぇ、さあや。オレが今夜エスコートしているのは月の精霊じゃないだろうか?」



 ノリスの驚きは、まだまだ続きます。


 呼び込みがこの2人を


「ノヴァーリス・ネビュラス殿下、並びにレティシア・アイオロス・ネビュラス殿下」


 と紹介したからです。


 その瞬間ノリスの顔は、ぱぁと輝きました。

 私はノリスを驚かせることが出来て大満足です。


 私達は、まずはレイたちに挨拶することにしました。


 レイはとても成り上がりの侯爵にはみえません。

 堂々とした立ち居振る舞いは、生まれついての貴族のようです。


 やっぱりレイってきっとかなり偉い人だったんだわ。

 私はそう確信しました。


 今度はアンジェリカも余裕を持って、来場者たちの挨拶を受けています。


 今日だけでアンジェは何回ギルモア侯爵夫人と呼びかけられたことでしょう。

 私は挨拶を受けるアンジェの姿を微笑ましく見ていました。



 その時、大きなざわめきが聞こえてきました。


「魔獣だって!」


「馬鹿な、ここは外れとはいえ王都の結界の中だぞ!」


「守護隊はどうした!」


「複数だと? 魔獣は個体でしか行動しないはずじゃないか!」




 その騒ぎにノリスは、私をレイに預けて飛び出して行きます。


「こっちだ、レティ。」


 アンジェはどんどんと階段を駆け上がっていきます。

 どうやら王都が見える場所に案内してくれるようです。


 それをみてレイはゴードンたち守護隊の精鋭を私たちの警護につけると、自分もノリスを追って飛び出していきます。



 夜会が始まったばかりで助かりました。

 実はアイオロス王ご夫妻もあとからお忍びでこの夜会に参加する予定だったのです。


 離宮の一番上は、星見が出来るようになっていました。

 そこから王都の方向をみると、すでに火がでているところもあります。


 暗くてよく見えませんが、魔獣が放つ瘴気が漂っています。

 この瘴気の量だと、魔物は20~30体以上いそうです。



「何なんだこれは!」


 アンジェが叫びましたが、ゴードンは血の気が引いています。

 戦う騎士だけに、私たちよりよほどこの事態の異常性がわかるのでしょう。


「アンジェ、お客様を退避させることのできる場所はありますか?」


 私が尋ねるとさすがにアイオロス王精鋭部隊の一員です。


「ここは元は王族の離宮だ。地下に避難シェルターがある。ゴードン、客人を避難させてくれ。そこならいくら魔獣でも簡単に壊すことはできない筈だ。」


 ゴードンは素早く守護隊の他、この場にいた騎士や兵士をまとめあげると客人の避難を始めた。



「それで?抜け道だってあるんでしょう?」


 私がそう聞くとアンジェは苦笑した。


「まったく、お前って奴は! どうする気なんだ。」


「多分大勢の人がケガをしている筈よ。私が行けば命を救えるわ。」


「なりません!」


 ゴードンが戻って来たのだ。



「おい、ゴードン。避難は済んだのか?」


「はい、アンジェリカさま。あとはお二方だけなので、お迎えにきたのです。」


「なら、こいつを王都まで連れていってやってくれ。隠し通路を通れば魔獣に遭遇することなく王宮に辿りつけるだろう。」


 ゴードンは一瞬だけ迷いをみせたが、すぐに私を抱えあげた。


「失礼します。だがこの方が早い。何人かオレについてこい。アンジェ。道案内を頼みますぞ。」


 アンジェはにやりと笑うとピンヒールを脱ぎ捨て靴を履き替えると、足さばきの邪魔になる裾は潔く切り裂いてしまった。



 そしてゴードンはあまりきれいだとは思えないハンカチを私の口に押し込んだ。


「失礼、姫。全力疾走しますので、舌をかまない用心です。」


 その次の瞬間にはもうナナの身体は遠慮会釈なくゆすぶられています。

 私は目がぐるぐると回ってとうとう気を失ってしまいました。


 ゴードンは、それこそ疾風のように走り抜けたが、アンジェも決して後れを取らなかったのでした。



「まったく、お転婆は治らないようだなぁ。」


 ツンとした匂いに私が目をあけると、アイオロス王の顔が目の前にありました。


「お父さま!」


「あぁ、王都は大丈夫だ。ノリスのやつがいてくれて助かった。後少しで魔獣を駆逐できるだろう。」


 私はそれを聞くと、すぐさま窓を大きく開け放ち、フルートを吹きならしました。


 瘴気が王都中を包んでいたので、ケガをしなかった人でも身心をむしばまれている筈なのです。



 この王都全体を私の霊力で覆いつくしてみせる。

 私はいまだかってないほど、霊力を放出していきました。


 黄金の光が、眩い光となって王都に広がっていき、瘴気を瞬くまに消してしまいます。


 民の歓声が、まるで地鳴りのように聞こえてきたとき、とうとう私はフルートを取り落としてしまいました。


「おい、ナナ。大丈夫か。」


 アイオロス王がナナの身体に手を触れると、ナナはそのままぐったりと崩れ落ちたのです。



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