霊獣会議
緑のペガサスさまから三カ国和平会議にゴルトレス帝国に霊獣が集まるのを好機として、世界霊獣会議を開催したいという招待状を紫の鷹さまを通して頂いていましたが、いよいよ今日はその霊獣会議が開かれる日です。
三カ国和平会議を明後日に迎え、各国の軍勢や首脳たちが着々とゴルトレス帝国の広大な草原に集まりつつある今、なぜ霊獣会議を開催するのでしょうね。
もともと霊獣というのが自由気ままな生き物で人間に対してもどこか上から目線で対応するようなところがあり、まさか人間の問題に関与するとは思っていなかったので今回の招集にはちょっとびっくりしました。
守護を与えた国を守ってきた霊獣は、もしかしたらそれなりに人間が好きなのかもしれませんね。
だってよく考えればずっと国を守り人々を守ってきたんですものね。
サクラは多分センが無理やりにでも参加させるだろうし、レイはゴルトレス帝国の霊獣を見極める機会を逃すはずがない。
そしてノリスは、私のお願いならたいていのことなら叶えてくれるから、私とノリスは出席できまりです。
アカツキさまはこの霊獣会議の機会にレイと会うつもりみたいだとセンがどこかから聞きつけてきました。
その他にはどんな霊獣がいるんだろうなぁと、わたしはちょっぴりワクワクしていました。
結局霊獣会議に集まった霊獣は青の竜・黒の獅子・銀の狐・金の金糸雀・ピンクの兎・暁の火の鳥・そして紫の鷹・緑のペガサス・そして遠い東の島から灰色の狼の9霊獣でした。
その他のまだ私がお会いしたことのない霊獣様方は、そもそもそんな会議に興味を持ったこともないようで、欠礼の返事がくればよいほうだったということです。
ちょっぴり残念ですけれど、チャンスがあればお会いできますよね、きっと。
暁の火の鳥さまとレイは初めての対面となりますから、さすがのレイでも婚約者の父親に会うという事態がこのような重大な会議と重なるのは、さすがにかなり心労があるだろうとちょっぴり心配しています。
私だって例の事件以降初めてアカツキと会うことになるので、なんとなく気づまりではあるのです。
まさかノリスが今さら何かいうとは思えないのですがね。
プレスペル皇国に寄り道した時センを散々冷やかして遊んだんだけれど、その時に2人で話したことがあります
それは、私たち3人がこの天球に招かれて、霊獣の力を得た意味についてです。
あの日霊山で紺熊さまは、きっとなにか意味があって私たち3人がこの世界にとどまったんだろうって言ってくれました。
その時には運命の急変で動転していましたし、とにかく生き残る事ばかり考えていたから、自分達の存在意義を深く考えることはありませんでした。
けれど私たちはみんなそれぞれの形でこの世界を愛するようになって、そしてなによりもアイオロス王という人物の理想に触れて、平和な世界をつくるための力になることが私たちの存在する理由なのではないかと考えるようになりました。
レイはアイオロス王と腹を割って話し込んだその時、自分の使命を決めたんだと思います。
私たちは、そんなレイやアイオロス王の助けになろうって誓いあいました。
センはいずれプレスペル皇国の公爵になるし、レイはずっとアイオロス王の理想と共に歩むだろう。
私はノリスと砂漠の民を支えていく。
霊獣の寿命は千年だというなら、少なくとも私たちは千年の平和をこの地に約束する霊獣でありたい。
だからこそ紫の鷹や緑のペガサスにも、ゴルトレス帝国だけではなくこの世界の守護獣で会って欲しい。
霊獣会議でムラサキやミドリとも、そんな理想を分かち合えればいいなぁってそんな話をしたのです。
「よくこれたねカナリア。その勇気だけは褒めてやるよ。」
さすがムラサキさま、ブレませんね。
いきなりの先制攻撃がきましたよ。
「いい加減にしたらどうかな、ムラサキがそんな態度じゃ主催者側の品性を貶めてしまうよ。君は陛下に恥をかかせたいのかい?」
おやおや、ミドリさまがムラサキさまを諫めてくださいました。
今回のムラサキさまの攻撃はミドリさまの意図するところではなかったようですね。
「違う、そんなつもりは……ごめん、ミドリ。」
あれ?なんかムラサキさま、ミドリさまと話す時だけ妙に女性ぽくありませんか?
でも、ムラサキさまはずっとノリスが好きって言っていたはず。
ムムム、うーんこのパターンで王道の……。
よし、試してみよう。
「庇って下さってありがとうございます。ミドリさまですね。私は金のカナリアです。ムラサキさまとは、仲良くして頂いているので、お気遣いは無用ですわ。」
「な、なにを言い出すんだカナリア。いつ私がお前と仲良くした!」
フンフンなるほど。
やっぱりムラサキさまはツン属性ですわね。
しかもデレるのはミドリさま限定ね。
「参ったなぁ、ムラサキは私を好きだと聞いていたんですけど、これはレティにお仕置きしなけりゃいけませんね。とんだ赤恥をかくところだったぞ!レティ」
凄いノリス。
このタイミングで、容赦なくムラサキさまを抉るつもりですわね。
「ごめんなさいノリス。私もまさかノリスが当て馬だなんて知らなくて。お許し下さいノリスさま。」
可哀そうなムラサキさまは、口をパクパクさせるだけで、言葉が出て来ません。
しかもミドリさまもいい性格をしてるらしく、さらっと話に乗って下さいました。
「ムラサキ、君ってアオみたいなまだお尻の青いガキが好きなの?僕は君に大人の男をちゃんと教えたあげないといけないみたいだね。」
「違う、違うってばミドリ、アオなんて興味ないって。ただそこの金色が霊力もたいしてないくせに聖女だなんて粋がるから、だから自分の分際を教えてやるつもりで!」
そこまで言ってようやくムラサキさまは、みんなの生暖かい視線に気づき、真っ赤になって押し黙ってしまいました。
「まだ未熟者ですが、どうぞ先達のご指導をよろしくお願いいたします緑のペガサス殿。私は青の竜と申します。ミドリさまが、我々の長老でいらっしゃいますね。」
「いいや、長老は日出ずる所の守護者、灰色の狼どのだ、すでに会場でお待ち頂いている。つまらぬ茶番で時間を取らせた。」
茶番と言われてムラサキさまが辛そうに顔を曇らせると、それを見たミドリさまはクスリと笑うと、話をつづけた。
「ちなみに言っておくが、ここにいるムラサキは、我が伴侶となるもの。手だしはご無用に願います。それではご案内しましょう。」
可哀そうにムラサキさまはとうとう撃沈してしまいました。
この会議の間に復活する見込みはなさそうです。
ミドリさま、恐ろしい人。
逆らっちゃ駄目な人リストにさっそく加えておきましょう。
この一連の出来事に楽しそうな様子をみせたのはレイですが、暁の火の鳥さまが近づいてくると、途端に居住まいを直しました。
「これはアカツキさま。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私は銀の狐でありウィンディア王国の執政官を務めますレイと申します。アンジェリカ王女殿下の聡明さは得難いものです。私はぜひともアンジェリカ姫と共に歩みたいと願っております。」
「ご丁寧な挨拶痛み入ります。私はマーシャル王国の国王を務めます暁の火の鳥です。世間では娘を切り裂き姫とよびますが心根の真っすぐな娘です。レイさまとならばその心根のままに、まっすぐに歩むこともかないましょう。どうぞ娘を導いてやってください。お願いしますぞ、レイ殿。」
「これは国王陛下。あまりにももったいないお言葉ではございますが、不詳このレイ。命にかえましてもアンジェリカ姫をお守りいたします。」
「ありがたいことですレイ殿。娘が一刻も早く貴君の花嫁になれるよう、お互いもうひと踏ん張りいたしましょう。」
こうしてレイとアンジェリカ王女の婚約は、父王も認めるものとなりました。
最初はどうなることかと思っていましたが、レイが無事にアカツキの許しを貰えてほっとしました。
よかったですね、レイ、アンジェ。
そう素直に思えるようになったことがとても嬉しく感じました。
さていよいよ霊獣会議が始まりました。
灰色の狼さまはとても柔和なお顔をした方で、日本の修験者のような服に、大きな杖をついています。
灰色の狼さまは、霊獣会議が始まるなり、その場を取り仕切ると宣言しました。
「面白いことじゃ、我が守護する東の国は、遠き離島にあるゆえにすでに二千年の長きにわたり戦乱とは無縁であった。こたびこの大陸において戦乱をおさめようとの試み、意気にかんずるものがある。」
「灰色の狼は和平会議に賛同し、ここにすべての霊獣の名のもとに恒久平和を宣言するものとする。」
おー、霊獣の大長老さまからもお墨付きをいただきましたよ。
ピンクはセンにしっかりと躾けられているのか神妙にしていますし、私たちは地球からのトリップ組にとってはありがたい話です。
帝国の2人も依存はないというよりは、この話、大長老を引っ張りだすことで、水面下で和平実現に動いてきたウィンディア王国の名前が表にでることを避ける狙いがありそうです。
ゴルトレス帝国はよほどウィンディア王国というよりは、アイオロス王に対して警戒しているようですね。
しかしせっせと汗をかいて実りだけをかっさらわれて、いいものでしょうか?
ちらりとレイをみると、実に満足気な顔をしています。
その顔にはいささかの曇りもなくただ和平会議の成功の布石を喜んでいる姿がそこにあるだけでした。
そーですね。
和平が実現するなら、名誉なんてくれてやる。そんな人たちでしたね。
アイオロス王もレイも。
私は自分の浅はかな考えが恥ずかしくなりました。
霊獣会議による世界恒久平和宣言採択は、瞬く間に世界中に流れました。
これでいよいよ本当に世界和平会議の成功の目算が高くなってきましたよ。
ここからはアイオロス王のやレイの出番です。
「どうか三ヵ国和平会議を成功に導いてくださいね。お父さま。」
いつの間にか祈りをささげるようにつぶやいていました。




